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租税事件

2007年05月26日 | Weblog
5月23日に、追徴課税1330億円の取消しの判決のことが、マスコミを賑わせました。その額の大きさに驚きますが、一方で、海外移住との絡みの事件というところが興味を引きました。このところ、最高裁の判例で、何件かの租税関係事件が記憶に残っていますが、上記事件と似たところでは、海外の会社を介した場合の取引やスキームなど、海外が絡む場合が散見されるように思いました。以下は、朝日新聞からです。


 消費者金融大手「武富士」元会長の長男が元会長夫妻から贈与された海外法人株をめぐる税務訴訟で、東京地裁は23日、長男に対する約1330億円の追徴課税を取り消す判決を言い渡した。東京国税局は長男が税逃れのために香港に移住したとみて約1650億円の申告漏れを指摘していたが、鶴岡稔彦裁判長は長男の生活の本拠が実際に香港にあるため課税できないと判断した。

 税務訴訟で国側が敗訴したケースのうち、個人課税では史上最高額。

 訴えていたのは、武富士創業者の武井保雄元会長(故人)の長男で同社元顧問の俊樹氏(41)。

 俊樹氏は99年に元会長夫妻から武富士株約1569万株を保有するオランダ法人の株式の90%を贈与された。00年度の税制改正前は海外に住所があれば課税されないのがルール。97年に武富士の香港駐在役員として赴任した俊樹氏は、贈与された当時は香港が生活の拠点だったとして税務申告しなかった。

 鶴岡裁判長は、俊樹氏が制度改正前に財産贈与を受けるよう会計士からアドバイスを受けたことは認めたが、当時は国内よりも香港での滞在が長く、現地法人の代表として勤務していた点などに照らし、日本に住所地があったとはみなせないと判断。海外赴任が税逃れの目的だったとは言い切れないと述べた。

 俊樹氏は05年に提訴。国税局の指摘に応じて延滞税を含めた約1585億円を全額納付したうえで争ってきた。原告側代理人の試算では、現時点で判決が確定した場合、国は還付加算金を含め約1715億円を返還する必要があるという。

 東京国税局・新谷逸男国税広報広聴室長の話 国側の主張が認められなかったのは大変残念。関係機関と控訴するかどうか判決文を検討中だ。