北海道新聞 01/12 05:00
【白老】国が胆振管内白老町に整備したアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が12日で開業から半年を迎えた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で全国の博物館施設の来場者が大きく減る中、ウポポイ開業から昨年末までの来場者は19万6千人に達し、一定の集客力を見せた。来場者アンケートでは7割が「満足」と答えたが、体験プログラム充実を求める声もあり、感染対策との両立が課題だ。
ウポポイは昨年4月24日に開業予定だったが、新型コロナの感染拡大を受け、開業は同7月12日までずれ込んだ。当初から入場に事前予約制を導入しており、現在も平日は1日2200人、土日祝日は同2700人程度に制限している。
運営するアイヌ民族文化財団(札幌)によると、昨年7月に2万4千人だった月別の来場者数は、10月には5万2千人まで増加。10月は政府の観光支援事業「Go To トラベル」の東京発着分が追加されたことを受け、開業当初は全体の8%だった道外客は35%まで伸びた。ただ道内の新型コロナ患者急増などの影響で、11月は2万9千人まで減少。12月は8千人まで落ち込んだ。
感染拡大前に設けた年間来場者100万人の目標達成は難しい状況だが、コロナ下でウポポイ以外の国立博物館施設も軒並み苦戦している。日本最大級の東京国立博物館でも昨年7~12月の来場者は前年同期比77・6%減の28万6千人に減少。京都国立博物館は同44・5%減の14万6千人、九州国立博物館は同87・3%減の6万2千人だった。立地や規模は異なるため、単純比較はできないが、ウポポイの来場者数19万6千人は健闘と言えそうだ。
ウポポイが昨年7~12月に来場者計651人を対象に行ったアンケートでは、「非常に満足」と「まあまあ満足」の合計は73%で、「やや不満」「非常に不満」は計7%だった。来場目的では「アイヌ文化や歴史に興味があった」が34%で最も多く、「開業したばかりだったから」「(中核施設の)国立アイヌ民族博物館の見学」がそれぞれ15%だった。
ただ「もっと体験がしたかった」などの声も目立った。国の規制緩和などを受け、10月からはムックリ(口琴)の演奏と製作の体験、11月からは刺しゅうや伝統料理などの体験プログラムを始めたが、展示品を触ったり、来場者がタッチパネルを操作して映像を見ることなどはできない状態が続いている。
国立アイヌ民族博物館の佐々木史郎館長は9日、オンライン講演会で「逆風の中で善戦していると思う。五感で体験するというウポポイのコンセプトを早く実現したい」と強調。現在、冬の屋外でできる新たな体験を準備しており、象徴空間運営本部の藤田望本部長補佐は「工夫しながら、体験プログラムを充実させたい」と話している。(田鍋里奈)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/500049
【白老】国が胆振管内白老町に整備したアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が12日で開業から半年を迎えた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で全国の博物館施設の来場者が大きく減る中、ウポポイ開業から昨年末までの来場者は19万6千人に達し、一定の集客力を見せた。来場者アンケートでは7割が「満足」と答えたが、体験プログラム充実を求める声もあり、感染対策との両立が課題だ。
ウポポイは昨年4月24日に開業予定だったが、新型コロナの感染拡大を受け、開業は同7月12日までずれ込んだ。当初から入場に事前予約制を導入しており、現在も平日は1日2200人、土日祝日は同2700人程度に制限している。
運営するアイヌ民族文化財団(札幌)によると、昨年7月に2万4千人だった月別の来場者数は、10月には5万2千人まで増加。10月は政府の観光支援事業「Go To トラベル」の東京発着分が追加されたことを受け、開業当初は全体の8%だった道外客は35%まで伸びた。ただ道内の新型コロナ患者急増などの影響で、11月は2万9千人まで減少。12月は8千人まで落ち込んだ。
感染拡大前に設けた年間来場者100万人の目標達成は難しい状況だが、コロナ下でウポポイ以外の国立博物館施設も軒並み苦戦している。日本最大級の東京国立博物館でも昨年7~12月の来場者は前年同期比77・6%減の28万6千人に減少。京都国立博物館は同44・5%減の14万6千人、九州国立博物館は同87・3%減の6万2千人だった。立地や規模は異なるため、単純比較はできないが、ウポポイの来場者数19万6千人は健闘と言えそうだ。
ウポポイが昨年7~12月に来場者計651人を対象に行ったアンケートでは、「非常に満足」と「まあまあ満足」の合計は73%で、「やや不満」「非常に不満」は計7%だった。来場目的では「アイヌ文化や歴史に興味があった」が34%で最も多く、「開業したばかりだったから」「(中核施設の)国立アイヌ民族博物館の見学」がそれぞれ15%だった。
ただ「もっと体験がしたかった」などの声も目立った。国の規制緩和などを受け、10月からはムックリ(口琴)の演奏と製作の体験、11月からは刺しゅうや伝統料理などの体験プログラムを始めたが、展示品を触ったり、来場者がタッチパネルを操作して映像を見ることなどはできない状態が続いている。
国立アイヌ民族博物館の佐々木史郎館長は9日、オンライン講演会で「逆風の中で善戦していると思う。五感で体験するというウポポイのコンセプトを早く実現したい」と強調。現在、冬の屋外でできる新たな体験を準備しており、象徴空間運営本部の藤田望本部長補佐は「工夫しながら、体験プログラムを充実させたい」と話している。(田鍋里奈)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/500049