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ウポポイ開業半年、逆風でも健闘 コロナ下に19万人、「満足」7割 体験プログラム充実が課題

2021-01-13 | アイヌ民族関連
北海道新聞 01/12 05:00
 【白老】国が胆振管内白老町に整備したアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が12日で開業から半年を迎えた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で全国の博物館施設の来場者が大きく減る中、ウポポイ開業から昨年末までの来場者は19万6千人に達し、一定の集客力を見せた。来場者アンケートでは7割が「満足」と答えたが、体験プログラム充実を求める声もあり、感染対策との両立が課題だ。
 ウポポイは昨年4月24日に開業予定だったが、新型コロナの感染拡大を受け、開業は同7月12日までずれ込んだ。当初から入場に事前予約制を導入しており、現在も平日は1日2200人、土日祝日は同2700人程度に制限している。
 運営するアイヌ民族文化財団(札幌)によると、昨年7月に2万4千人だった月別の来場者数は、10月には5万2千人まで増加。10月は政府の観光支援事業「Go To トラベル」の東京発着分が追加されたことを受け、開業当初は全体の8%だった道外客は35%まで伸びた。ただ道内の新型コロナ患者急増などの影響で、11月は2万9千人まで減少。12月は8千人まで落ち込んだ。
 感染拡大前に設けた年間来場者100万人の目標達成は難しい状況だが、コロナ下でウポポイ以外の国立博物館施設も軒並み苦戦している。日本最大級の東京国立博物館でも昨年7~12月の来場者は前年同期比77・6%減の28万6千人に減少。京都国立博物館は同44・5%減の14万6千人、九州国立博物館は同87・3%減の6万2千人だった。立地や規模は異なるため、単純比較はできないが、ウポポイの来場者数19万6千人は健闘と言えそうだ。
 ウポポイが昨年7~12月に来場者計651人を対象に行ったアンケートでは、「非常に満足」と「まあまあ満足」の合計は73%で、「やや不満」「非常に不満」は計7%だった。来場目的では「アイヌ文化や歴史に興味があった」が34%で最も多く、「開業したばかりだったから」「(中核施設の)国立アイヌ民族博物館の見学」がそれぞれ15%だった。
 ただ「もっと体験がしたかった」などの声も目立った。国の規制緩和などを受け、10月からはムックリ(口琴)の演奏と製作の体験、11月からは刺しゅうや伝統料理などの体験プログラムを始めたが、展示品を触ったり、来場者がタッチパネルを操作して映像を見ることなどはできない状態が続いている。
 国立アイヌ民族博物館の佐々木史郎館長は9日、オンライン講演会で「逆風の中で善戦していると思う。五感で体験するというウポポイのコンセプトを早く実現したい」と強調。現在、冬の屋外でできる新たな体験を準備しており、象徴空間運営本部の藤田望本部長補佐は「工夫しながら、体験プログラムを充実させたい」と話している。(田鍋里奈)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/500049

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文化が失われつつあるアイヌ アメリカの先住民族と決定的に違う点とは

2021-01-13 | アイヌ民族関連
アエラ 2021/01/12 17:00
© AERA dot. 提供 アイヌ語が第一言語として最上部に配置されている。提供:(公財)アイヌ民族文化財団
 2020年7月、北海道白老町にアイヌ文化復興のための国立の施設「民族共生象徴空間(愛称・ウポポイ)」が開業した。ウポポイは同化により失われつつあるアイヌ文化を発信し、復興することが期待されているが、観光産業化との批判も聞かれる。昨年成立のアイヌ施策推進法で「先住民族」と認定されたアイヌと和人はいかに「共生」すべきか。アイヌの歴史や海外との制度比較、ウポポイ内の博物館展示から「共生」を考える。(東大新聞オンラインより転載)
■法制度から見るアイヌ施策
 アイヌの法的地位はどのような変遷をたどったのか。アイヌに関する法制度・政策を研究する落合研一准教授(北海道大学)は「アイヌ民族は1871年制定の戸籍に平民として組み込まれたことで近代日本の『国民』になりました」と語る。身分上、和人と区別はなくなったが、実際は「旧土人」として差別を受け、明治政府が設置した開拓使により同化を強制されたという。具体的にはアイヌの風俗の禁止と日本語習得の奨励、慣れない農業への転業などだ。北海道には和人も多く入植し、土地の没収や移住を強いられたアイヌの生活は窮乏した。
 そのようなアイヌの「救済」を名目に1899年に制定されたのが北海道旧土人保護法だ。農業用地をアイヌに提供することなどを定めたが「実際に与えられた土地は多くが農業に向かず、困窮の解決にはつながりませんでした」。むしろ、狩猟採集を主に営むアイヌに農業への転業を促したことで生活は変容し、同化は一層進んだという。戦後の日本国憲法で法の下の平等が保障されたが、アイヌへの差別はなくならず、格差は現在も残る。
 1980年代から国連でも先住民族の権利に関する議論が始まり、日本でも北海道ウタリ協会(現・北海道アイヌ協会)がアイヌ新法案を決議したことを受けて、97年にはアイヌ文化振興法が成立。旧土人保護法は廃止された。「振興法はアイヌ文化を消滅の危機にある少数文化の一つと位置付け、アイヌ文化の保護を通じて日本の多様な文化全体の発展を図るとしました」。そして昨年制定されたアイヌ施策推進法において、アイヌが先住民族であると明記された。
 先住民族とされたアイヌだが、他国の先住民族の法的地位とはどのように異なるのか。落合准教授は「アイヌの立場が憲法上、不明確である」点を指摘する。
 例えば米国は先住民を部族単位で扱い、自主性を持たせる。「憲法に連邦政府との通商の対象と記されており、国や州と同様に位置付けられています」。連邦政府が部族ごとに保留地を定め、域内では各部族がある程度の主権を持ち、自治を行っているという。
 対して原住民を個人で捉えているのが台湾だという。「日本統治時代の戸籍に原住民かどうかが記載されており、それを基に原住民を認定しています」。憲法には「原住民族」という身分が明記されており、政府は、原住民である個人を中心に支援を行っている。
 米国の先住民も同化が進んだのは事実だが、アイヌほどではない、と落合准教授は話す。「先住民は保留地への強制移住などに苦しみましたが、入植者とは集団として区別されたことで独自性やアイデンティティーを比較的維持できました」。一方、アイヌは明治政府により国民に統合され、生活領域も開拓の対象とされたため、集団としてのまとまりを喪失。和人と同化せざるを得なかった。
 集団としての把握が難しいならば、台湾のように個人への施策を行うことも考えられるが「戸籍にはアイヌであるかを記載する書式はなく、和風に改名されたアイヌもいるため、誰がアイヌかを判別するのは困難です」。さらに憲法の「法の下の平等」のため、対象をアイヌに限った支援が直ちには難しいと指摘する。
 では、アイヌ施策推進法の支援はどのようなものか。「市町村が、住民からの提案を受けて政府に交付金を申請し、アイヌ文化環境などの整備・向上施策を行います。支援対象はアイヌに限られませんが、アイヌからの提案が重要です」。その上で「アイヌの要望は世代や地域により多様。それらの具体的ニーズに応じた実効的な政策の実施が求められます」と話す。
 現在では、同化を強いられたアイヌのことを存在しないと誤解している国民も少なくない。「ウポポイは、アイヌに対する理解の深化と、持続的なアイヌ政策の確立に貢献すると思います」。現状、アイヌに対する国民の理解は高いとは言えないため、国民の適切な理解を得ることで、アイヌへの手厚い施策につながっていくという。「ウポポイでの啓発のみならず、義務教育でのアイヌに関する記述の充実化などの取り組みを通じて、和人の文化との違いやアイヌの歴史を知ってもらうことが共生の鍵になるでしょう」
■アイヌ主体の展示を
 失われつつあるアイヌ文化を次世代へ継承、発展させる啓発の拠点としての働きが期待されているウポポイ。その中心施設である、国立アイヌ民族博物館の佐々木史郎館長に展示の特徴や狙いを聞いた。
「まず重視したのは、アイヌ目線での展示です」と佐々木館長。「館内の第一言語をアイヌ語にし、アイヌ語の解説文を日本語よりも上に配置しました」。アイヌ語には統一的な書き言葉がなく、方言によって表現が多様だ。これをあえて統一せず、解説文ごとに異なる地域の方言を用いたという。またアイヌ語のネイティブ話者はほぼいないため、現代的な事物に対応した語彙はアイヌ語学習者と言語学者の協力で作った。
 また、解説文の主語は「私たち」と、アイヌの目線で記述されており、和人からの目線ではない。自分たちの文化を自ら語る「主体性」を強調したという。
 解説文の展示にはアイヌの学芸員も多く参画し、多様な意見が反映されている。例えば、若い学芸員からの「アイヌの古い伝統だけでなく、アイヌの今を知ってほしい」という意見を受けて、チセ(アイヌ語で家)の解説文には現在のアイヌが近代的な住宅に住んでいることを付記した。佐々木館長は「博物館でアイヌの伝統的な文化のみに触れるとアイヌが今でも展示のような生活を送っていると誤解されることがあります。アイヌが身近にいないからこそ生じる誤解です」と指摘。現在のアイヌの多くは近代的で、和人とあまり変わらない暮らしぶりで、同じ今を生きていることを知ってほしいと話す。
 アイヌ目線の語りが難しいところもあった。それはアイヌの歴史に関する語り。「抑圧を物語る歴史的資料を展示するなどにとどまり、淡々としたものになっています」。アイヌ出身の歴史研究者が不足し、アイヌ目線の語りが難しい側面があるからだという。代わりに映像でアイヌの人たちが受けてきた差別・偏見を自ら語る展示を設けた。
 開業に際して、ウポポイはアイヌ文化の観光産業化との批判もあった。これに対し、佐々木館長は「観光としてアイヌ舞踊や工芸品を見てもらうことで、アイヌの伝統技術の向上・継承につなげることを目指しています」と語る。
 今後は、日本のみならず、世界の人にもアイヌ文化に触れてもらう拠点としたいと話す。「アイヌ文化を接点にして、世界中からさまざまな人が白老の地に集まり、人類の多様性を考えることで民族共生へのヒントが得られると考えています」
落合 研一(おちあい けんいち)准教授(北海道大学アイヌ・先住民研究センター) 
2007年北海道大学大学院修士課程修了。修士(法学)。同大学助教を経て、14年より現職。
佐々木 史郎(ささき しろう)館長(国立アイヌ民族博物館) 
1985年東京大学社会学研究科(当時)博士課程中退。国立民族学博物館教授を経て、2020年より現職。
(文/桑原秀彰)
https://news.goo.ne.jp/article/dot/nation/dot-2021010700069.html

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大泉洋ら「ウポポイ」探求 アイヌ文化学ぶエンタメ特番

2021-01-13 | アイヌ民族関連
中日新聞 2021年1月12日 16時00分
 大泉洋らが所属する演劇ユニット「TEAM NACS」が出演する北海道のローカル深夜バラエティー番組「ハナタレナックス」の特番「ウポポイに隠された美しき宝を探せ!」が十七日午後一時、BS朝日で全国放送される。
 二〇二〇年七月に北海道白老町にオープンした国立のアイヌ文化施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」を舞台に、その公式サポーターを務めるチームナックスの五人が謎解きゲームに挑みながら施設の魅力を紹介する番組。昨年十二月に北海道で放送され、好評を博したという。
 「イランカラプテ(こんにちは)」や「イヤイライケレ(ありがとう)」といった基本的なアイヌ語から伝統舞踊、楽器や工芸、料理などを体験しながら、アイヌ民族の基礎知識を楽しく学ぶ知的エンターテインメントに仕上がっている。
 大泉は「ウポポイはなかなかすてきな建物ですね。アイヌの皆さんの踊りを見て感動しました」とコメントしている。
https://www.chunichi.co.jp/article/184127

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<訪問>「レイシズムとは何か」を書いた 梁英聖(りゃんよんそん)さん

2021-01-13 | アイヌ民族関連
北海道新聞 01/10 05:00
人種差別 闘うための規範とは
 「もうこれ以上、マイノリティの被害と歴史を消費してほしくない」。38歳の在日コリアン3世。本書に書かれた言葉は重い。反差別運動を始めた東京都立大生時代から差別体験を尋ねられ続けた。「被害者に苦痛を語らせることに偏り、加害者を止めることに尻込みしているのが日本社会の特徴。『一人一人の心の問題だから』とか『被害者に寄り添う』と言うだけなのはずるいですよ」
 本書は、レイシズム(人種差別)の近代史や暴力と結びつく構造を説明し、朝鮮人、アイヌ民族、沖縄への「人種差別」が存在する日本のレイシズムと闘う社会規範のあり方について考える300ページ超の新書。「日本に人種差別は無い」と思う人や「差別する自由がある」という言葉に反論できない人にも入門書として読んでほしいという。
 著者はレイシズムを「遺伝学で否定されるにもかかわらず『人種』を作りあげ、最後は『殺そうとする権力』」と定義する。本書を執筆中の昨年3月、さいたま市はコロナ感染防止のためのマスクを朝鮮学校の幼稚部に配布しなかった。「行政が朝鮮人差別にお墨付きを与えた。死んでいい人間をつくる行為を止める言葉を届けたかった」
 現在は一橋大学大学院博士後期課程で在日コリアンへの差別を研究中。2015年3月、差別についての調査、相談、教育を担う日本初のNGO「反レイシズム情報センター」を若手研究者らと立ち上げた。「同じ人間として共に生きる時、立場を問わず、加害行為を止めることは誰にでもできる」
 権利の平等を掲げつつも反差別の意識が浸透している欧米に比べ、日本は「不平等というより無平等」と考える。「たとえマイノリティーでなくても、『社会の敵』となればレイシズムに巻き込まれて殺される可能性が十分にあります」。コロナ禍で、感染者や医療従事者への差別が起きている。「反差別の規範が無い社会がいかに脆弱(ぜいじゃく)か。差別は止められる。反レイシズムが、日本社会が生き延びる道だということを考えてほしい」
東京報道 大沢祥子
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/500172

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