社会問題化した住宅ローン焦げ付き
先月末に始まった世界同時株安という名の調整はまだ続いているようだ。このところの話題は、サブプライムローンの焦げ付きが実は根深い問題を孕んでおり米国経済に影を落としているという趣旨の報道を多く見かける。
サブプライムローンとは云わばサラ金のように信用力が低い低所得者層向けの高利の住宅ローンで、将来の資産価値を見込んで殆ど無審査で貸し付けられていた。頭金ナシとか最初の数年は低金利とか借り易い条件でバンバン貸し付けられていた。
住宅価格が上昇している間は低所得の黒人層にも住宅が手に入り、数年で転売することにより資産を増やせる住宅バブル饗宴に参加できた。しかし、バブルが萎んだ瞬間からローン返済が滞り、これらの人達の殆どが低所得の黒人達でなけなしの家を失ったから社会問題化したのだ。
1998年から2006年の間にローンが返済できないで失われたマイホームが260万軒、新築をあわせてトータルで持ち家の数が100万軒減少しているとCRL(Central for Responsible Rending)は報告したという。(CNNMoney3/27)
典型的なパターンは返済が焦げ付くと更に条件の悪いローンをし、これを繰り返して借金地獄に入る。元々初めて住宅を買う人の為といわれたサブプライムが実は初めて借りる人が10%にも満たないのだそうだ。これは正に日本で問題になったサラ金地獄と同じ構造だ。
サブプライムローンの構造
一方、何故こんな危険なローンが成立したのかといえば勿論日本で問題になった住専のような住宅ローン専門会社の節操もない貸付が問題だが、それを許したもっと構造的なものがある。前にも紹介したように、リスクがあると必ずそれを証券化した金融商品が出て来る仕組みだ。
最近話題のREITがその類だが、サブプライムローンは云わばハイリスク・ハイリターンの金融商品に証券化され、これをおなじみヘッジファンドが大量に買い込んだ。つまり元手の資金はヘッジファンドの投資で金融機関に返却され、高利の住宅ローンの返済は住専とヘッジファンドが山分けする。
貸付が焦げ付くとリスクが分散されていた為金融システムがそれほど痛手を被らず、当初大騒ぎにならなかった。しかし上記のようにヘッジファンドへの同情はないが、問題が黒人低所得者層のなけなしの家を奪う社会問題となるだけでなく、米国経済自体の先行き不透明感を強めている。
結局のところ住宅不況が米国GDPの70%以上を占める消費を0.5%から0.7%押し下げ、設備投資が弱含みに推移している為、GDP成長が2%半ばまで低下するという見通しから、アナリストの中には1%台に低落するという弱気の予測まで現れてきた。そこまで低下すると世界経済への影響は大きい。
火種は他にもある
実はこの構造は米国だけではない。不動産バブルは中国上海を筆頭に世界中にある。イギリス、アイルランド、スペイン、オーストラリアなど住宅価格が高騰している国は枚挙に暇がない。これらの国は同じ金融システムかどうか知らないが、共通しているのは過剰流動性つまり金余りだ。
一旦リスク回避に向かい始めたグローバルマネーの流れの変化(調整)は依然続いている。2月27日中国株式市場暴落のようなきっかけでその流れが突如速まる可能性は依然高い。そういう視点から米国住宅市場の波紋はまだ目が離せない。
世間での議論は1)世界同時株安は終わり今後上昇に向うのか、2)依然調整局面が続きその後上昇に向う、3)今後も調整が続き今年後半から来年にかけて谷を迎えると分かれている。当分この議論が続くのではないか、つまり2)か、3)という気がする。■
日本の場合、住宅ローンが焦げ付いた場合、物件を処分で賄いきれない残債まで返済しなければいけません。このため、住宅ローン破産は、日本の方が恐ろしいと思います。
底の浅い受け売りだったかもしれません。もう少し様子を見たほうが良いかもしれません。自ら「かぶれ」というだけあって毎日米国のニュース(しかも業界の)を見てて安直に書いたかもしれません。
ただ米国で問題が人種に係わるととても難しい問題になるのは何度も見てきていますから経済的視点だけでは語れないところがあるのです。