かぶれの世界(新)

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妄想・謝罪大国

2007-12-03 15:44:59 | 社会・経済

のニュースバライエティショーで毎週誰かが謝罪している絵が出てくる。最近では食物偽装、スポーツ、公務員の裏金等など謝罪材料には事欠かないが、いささかうんざりする。謝罪の仕方がどうのこうのと延々と語られ、終いには謝罪評論家なるものが出てきた。

不祥事を起こした人は後ろめたいところがある。連日攻め立てられ奥の院に隠れていた責任者が暴かれ、雁首そろえて謝罪会見に引き出され、記者と視聴者の鬱憤晴らしが進む。そのあと被害者が感想を述べ、多くの不祥事はそれを機会に汐が引くようにテレビから消えていく。

その過程でどんなに理不尽な質問や扱いを受けても、カッとなって使ってはいけない言葉や態度を示してはいけない。その数秒間がその後繰り返し再放送され、身勝手で無責任とか無反省、極悪非道というレッテルが人々の心に刻印される。ディジタル映像時代では簡単なテクなのだ。

先日とても後味の悪い謝罪会見を見た。人気女優の息子が麻薬をやり逮捕された事件だ。気の毒にも大の男の息子の不始末を母親が涙ながらに謝罪する羽目になった。謝罪の記者会見ではプライベートまで踏み込まれ、さながら市中引き回しの晒し者のようで見ていて気の毒だった。

どうしてここまでやるのか。それは視聴者が望んでいるからか、それともニュースメディアの使命感なのだろうか。ニュースバラエティにとって不祥事の謝罪はテレビ的に最高の材料であり、いわば餌食を求めて咆哮する怪獣のように私には見える。多分狙い通り視聴率も高かっただろう。

今年3月頃に「不寛容社会」のタイトルで日本社会が罪に対しより重い罰を求めるようになった、その中で日本人の価値観は謝罪を重要視し、謝罪や反省がきちんとされないとより厳罰を求めるようになったと書き込んだ。

情報技術の進歩でお茶の間に詳細な映像が繰り返し流れるようになり、やらせと見まがうような再現ドラマなど「情」に訴える放送技術の進歩(?)が、より過剰で相乗的な反応を生んだ。30年前のニュースが今再放送されると如何にも無表情で無機的な感じがするはずだ。良くも悪くもカバーするニュ-スの領域が広がり詳細に伝えるようになった。

罰を求める世論は裁判の場でも反映されかつてより厳しい判決になる傾向があるというから、単にメディアの先走りでは済ませられない場合がある。裁判とまでは行かなくても謝罪のやり方次第で個人や組織に降りかかる社会的制裁は余程変わってくるからだ。この「謝罪プロセス」は裁判に先立つ「私的な裁判」の性格になりつつある。リンチとまでは言わないにしても。

適切な謝罪と見做されないと、会社は何十億何百億の損害から存続の危機に関わるし、個人の名誉は著しく傷つけられ家族が路頭に迷う事態になりうる。最悪会社は潰れ、横綱は引退させられる。となると自ら守る必要があり謝罪ビジネスなるものが出てきておかしくない。

ここからは私の勝手な妄想・・・。

会見のタイミング・場所・同席者・服装・姿勢から言い回しまで最高のテレビ受けをセットアップする一流の謝罪コンサルタントを抱え、過去の成功例・失敗例の貴重なデータベースを元に謝罪を総合プロデュースし、損害推定額の数%を成功報酬として頂く。辛口の評論家には事前に手をまわして説明し了解を得ておく。

そのうちバックグランド・ミュージックを使うと謝罪効果が高いという研究成果が発表され、中でもシューベルトが効果的だといわれる。奇妙なことに演歌にも効果が認められ、五木ひろしの「つぐない」が最も効果的ということが判明する。

謝罪専用会場として白砂の裁きの場と専用中継装置を備えた謝罪大手会社が新ビジネスを立ち上げIPOを果たし急激に業績を伸ばすようになる。一部海外からも注目され日本謝罪文化のソフトを世界に広げる試みが出てくる。

大学に専門学科が新設され、義務教育においても幼い頃から皆に受け入れられる謝り方を教えるべきかの是非が問われるようになった。今や日本の謝罪文化は花開いた。謝罪は全員の心を開き、不祥事で停滞した生産性を高めるリセット効果があると。

日本の謝罪ビジネスは独自の成長を見せたがグローバルな広がりは見せず、中国や韓国からは何年経っても歴史問題の謝罪を求められ解決できず、そんな謝罪ビジネスなど信用できないと誰からも相手にされず、第二の携帯ビジネスと言われ、あっという間に色褪せる。

その中にあって何者にも影響されないユニークな存在が残った。謝罪大国になっても、不祥事だろうと何であろうと言い逃れし謝罪しない官僚の凛とした姿勢が際立ち見直されてくる。政治もメディアも誰もそれを正せず、気が付くと再度日本の心として脚光を浴びる日が来た。謝罪するけど表面だけで本質は何も変えないという。■

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