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ほぼ週刊イケヤ新聞ブログ版

コピーライター・ミュージシャン池谷恵司の公式ブログです。
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ブライアン・デパルマの映画『リダクテッド』を観た<★★★★☆>

2008年12月05日 21時17分18秒 | 映画レビュー
リダクテッド
原題: REDACTED 製作年度: 2007年
監督: ブライアン・デ・パルマ

妻に不評の映画評である。

渋谷の近く、富ヶ谷にメインで仕事をしている会社が移転したので、渋谷単館公開の気になっていた映画、ブライアン・デパルマ監督の『リダクテッド』を見に行ってきた。
リダクテッドとは「編集済み」の意。都合の悪い情報が削除された文書や映像を指す。

のだそうですが、イラクで実際に起きたアメリカ兵によるレイプ殺人事件を題材にしたもの。いろんな意味で考えさせられた秀作だといえるでしょう。
コンサルティングファームのように、言ってみましょう。この映画の面白い点は3つあります。

1. 戦争の真実の描き方のリアルさ
2. 映像の民主化、非芸術家による映像コミュニケーションの新しいあり方
3. ドキュメンタリーに似た、フィクションという方法論の面白さ。

以下、順番に述べていきます。

(1)
これは戦争映画が常に目指しているところで、フルメタルジャケットやプライベートライアンなど、どんどん進化してる点だと思うのですが、今回は3)で述べる手法と相まって、実にリアルです、彼らは検問所でイラク人をチェックするんですが、信じられない暑さの中、信じられない重さの装備(50キロぐらいですか)、言葉の通じないイラク人をチェックする、しかもいつゲリラがテロを起こすのかわからない、という状況をリアルに、重苦しく描いていて、本当に観ていても辛いぐらいです。特に最初の方は実に厳しい。ああ、暑い国の、しかもテロとの闘いっていうのは、こういう精神戦なんだなと思わされます。
あと、どういうメンタリティの人間たちが戦場にいて、どういう風に日々を過ごしているかも、とてもリアル。そうだろうな、と思わされる。

(2)
もうひつとこの映画で面白いと思ったのは、この映像の民主化ということ。動画を撮る→それを配信する(放送する、映画として上映する)といのは、以前はテレビだったり映画だったりと、ある種の権威のある組織の人たちがお金とインフラをかけてやるものだったんですが、今やyoutubeのようなWebベースのものがあり、実に簡単にできるようになった。さらに撮影自体も簡単なビデオでできるようになった、もっと言えばこの映画でも多用されていたけど、監視用のカメラなど、無人で撮られている動画もある、こういうものが草の根あるいは機械的にたくさん撮られているわけで、それが、ある種の特権を破壊しようとしているのではないか、ということを、この映画では思い知らされた。(1)の戦争のリアルさよりも、じつはその方が僕にはインパクトがあったかもしれない。20世紀が写真の世紀だったとしたら、21世紀は動画配信の世紀かもしれない。ここにある種の驚きと発見とこれから深めて考えると面白い点があるように思う、以前写真家のMさんとも話したことではありますが。

(3)
知らないで観ると、完全にドキュメンタリーだと思うような作りで、これは普通ストーリーのある映画で必要とされるドラマツルギーから逃れることができる。ただ本当のドキュメンタリーでは逆に伝えられないこともあるし「真実を伝えるべき」という建前も発生してしまう、ま、ドキュメンタリーに主観を排することはできないというのは「A」のドキュメンタリー監督森達也氏も主張しているところで全く同感だが、でも、真実を……というドグマからは脱しにくい。その点、このドキュメンタリーによくにたフィクションというのは、良くできた方法論だと思う。


というわけで
この映画、<★★★★☆>さしあげます。

映画はもう終わってしまっているかも知れませんが、DVDになったらぜひご覧いただきたいと思う作品です。


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