ほぼ週刊イケヤ新聞ブログ版

コピーライター・ミュージシャン池谷恵司の公式ブログです。
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ジョニ・ミッチェルの『トリビュート・トゥ・ジョニ・ミッチェル』

2007年07月25日 23時59分46秒 | CD&コンサートレビュー
A Tribute to Joni Mitchell
Various Artists
Nonesuch

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『トリビュート・トゥ・ジョニ・ミッチェル』
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-12662

ジョニ・ミッチェルというシンガーソングライターをご存じでしょうか。
たぶん初期の作品「青春の光と影」などは、タイトルをご存じなくても
メロディと独特の声は聞き覚えがあるのではないでしょうか。

彼女は1968年にデビューして以来、フォークシンガーという枠を超えて
様々な素晴らしい音楽を生み出してきました。
たとえば僕がとてもインパクトを受けたのは
『ミンガス』('79)というアルバムで、これはジャズベースの巨匠、
チャーリー・ミンガスに捧げられたアルバムでした。
ジョニはこのアルバムでは、あのジャズベースの革命児ジャコ・パストリアスを
起用していますが、そのベースはあっけにとられるぐらい凄かったし、
そのジャコを軽々と自分の歌のバックで使いこなせるジョニは、
もっと凄いかもしれない、と思ったものです。
翌年にはそのライブ盤ともいうべき『シャドウズ・アンド・ライト』という
アルバムがリリースされましたが、これは、もっと凄かった。
そこにはジャコに加えて、ギターにはパット・メセニー、
サックスには先日亡くなったマイケル・ブレッカーが参加しており、
まさに史上最強のジャズ・フュージョンバンドと呼ぶにふさわしいものでした。
このとんでもないバンドを従えて、フロントで歌うジョニは実に楽しそうでした
(当時ジャズ喫茶にあったレーザーディスクで何度も見たものです)。

その後もジョニはコンピューターを先進的に使った作品なども発表していて、
新鮮なクリエイティビティを失わないアーティストだったのですが、
2002年になぜか「音楽界には失望した」というコメントを残して
引退宣言をしてしまいました。
その後新しいアルバムは作られていません。とても残念です。

さて、このアルバムはそのジョニ・ミッチェルの素晴らしい作品の数々を
これまた素晴らしいアーティスト達がカバーしたとても面白いアルバムです。
まるでみんながジョニに
「あなたの音楽は素晴らしい、ぜひまた音楽をやって下さい」
と熱くメッセージを送っているようにも思えます。
以下に収録曲と参加アーティストを記しておきますが、ちょっと驚きますよ。

01.パリの自由人/スフィアン・スティーヴンス
02.ボーホー・ダンス/ビョーク
03.夢の国/カエターノ・ヴェローゾ
04.悲しみはともだち/ブラッド・メルドー
05.バラにおくる/カサンドラ・ウィルソン
06.ア・ケイス・オブ・ユー/プリンス
07.ブルー/サラ・マクラクラン
08.レディズ・オブ・ザ・キャニオン/アニー・レノックス
09.マグダレーン・ランドリーズ/エミルー・ハリス
10.イーディスと親玉/エルヴィス・コステロ
11.ヘルプ・ミー/k.d.ラング
12.リヴァー/ジェイムス・テイラー

どれも素晴らしいですが、ビョークの歌声の心への食い込み方はさすが。
ジャズピアノの新生、ブラッド・メルドーはピアノソロで
ジョニの独特のメロディラインを美しく紡いでいます。
他にもコステロやアニー・レノックス(元ユーリズミックスですね)の作品も、
ジョニへのリスペクトを感じさせる素晴らしいカバーです。
意外にもジョニの大ファンだというプリンスは、
やはり天才としかいいようがなく、
ジョニとほぼ同世代、男性フォークシンガーの巨星ジェイムス・テイラーは、
実に優しい声と素晴らしいギターで、ジョニの曲を慈しむように歌っています。
彼らの音楽を聴いて、ぜひジョニ・ミッチェルに「やっぱり音楽はいい」と
思ってもらいたいですね。カム・バックのニュースを待ちたいと思います。

ヤマハが提供している音楽配信サービス「マイサウンド」では、
今回ご紹介した『トリビュート・トゥ・ジョニ・ミッチェル』の
試聴とダウンロードが行えます。ぜひアクセスしてみてください。
(難点は、カバーしているアーティスト名が記されていない点です。
ぜひこのメールの曲目リストをご覧になりつつ試聴してみてください)


文中ご紹介したジョニ・ミッチェルの『シャドウズ・アンド・ライト』は、
現在[完全版]としてDVDが出ています。
そちらもぜひご覧いただきたいと思います。
私もこれを機に購入しようと思っていま
す。


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