ほぼ週刊イケヤ新聞ブログ版

コピーライター・ミュージシャン池谷恵司の公式ブログです。
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CDレビュー『シップビルディング』/冨田ラボ

2007年07月09日 12時29分14秒 | CD&コンサートレビュー
シップビルディング
冨田ラボ, 松任谷由実, ハナレグミ, 畠山美由紀, キリンジ
フェイスレコーズ

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CDレビュー『シップビルディング』/冨田ラボ
EMIミュージックジャパン
BFCA-84002

冨田恵一。勉強不足で僕は知らなかったのですが、キリンジ、MISIA、松任谷由実など錚々たる面々のプロデュースをしている人で日本のポップスを支えている仕事人のような人らしいです。一説によると日本のバート・バカラックとも称されているとか。僕がこのアルバムが気になったのは、曲ごとにいろんなボーカリストを贅沢に起用しているところで、これは何だ? と思ったわけです。松任谷由実、ハナレグミ、キリンジ、birdですからね。これは、ただごとではないなと。

で、アルバムを聴いてみたわけですが、これがまた素晴らしい。とても聞きやすく、しかも音楽的にもクオリティの高いポップスで、細かいところまで神経が行き届いた演奏でした。スティーリー・ダンのようでもあり、また日本のポップスの黎明期に活躍した細野晴臣率いるキャラメル・ママのようでもある。アレンジや音のセンスの良さは抜群です。ライナーノーツを見ると、どうやらギター、ベース、キーボードは自分自身で演奏しているようで、演奏も相当に上手いですね。

このアルバムは作詞と歌を曲ごとにボーカリストにお願いしているようですが、曲とアレンジは冨田恵一が作っているので、ボーカリストが変わってもアルバムに通底する統一感があります。1曲目の松任谷由実は、さすが。堂々たる貫禄がある。2曲目のハナレグミはオーガニックで温かで気持ちがいい。ちょっと後に出てくるキリンジの歌の曲も甘美で、少しひねくれていていい感じです。が、特に気に入ったのが「耐え難くも甘い季節」という曲。これまた知らなかったのですが畠山美由紀という方のボーカルと歌詞。まずタイトルがいいじゃないですか。メロディも歌もちょっと気怠い感じのポップスで、これから夏に向かう、今の季節にピッタリです(歌詞を読むと秋のことかもしれないですが)。ここのところ、家で最もヘビーローテーションしている曲です。

ただ一つ苦言を呈するなら、8曲目あたりで、ジャズベースの天才児ジャコ・パストリアスそっくりのベースが入っていて、これは確かに凄まじく上手で見事ではあるのですが、これだけそっくりなベースを入れてしまうところが、底の浅さを感じさせます。いや、志の問題か?実はこの曲だけでなく、全体にも言えるのですが、このアルバムには現在のJ-POPの良いところと悪いところが非常に象徴的に表出していると思うのです。それは一言で言えば「上質と剽窃」。現在のJ-POPの大部分は、音楽的に非常に質が高い。それは間違いないのですが、本当のオリジナリティという意味ではちょっと弱く、いろんな音楽の美味しいところをいろいろ集めてきてアッセンブルしている、組みあわせている、という印象が拭えません。もちろん消費財としての音楽でしたら、質が高ければそれで何の問題もないのですが、表現者としてのアーティストが魂を削って命を懸けて表現している「何か」がそこにあるか、と問うならば、答えはどうでしょうか……。ちょっと、そんな複雑な思いも感じつつ、「耐え難くも甘い季節」に突入していきたい、そんな頑固な中年音楽ファンであります。

でも、このアルバムは本当にいいですよ。
ちなみに、こんな感じで曲が入っています。
1.Welcome
2.God bless you!/松任谷由実
3.眠りの森/ハナレグミ
4.耐え難くも甘い季節/畠山美由紀
5.Shipbuilding
6.香りと影/キリンジ
7.Shipyard(edition 1)
8.太陽の顔/saigenji
9.道/bird
10.mizzenmast(edition 1)
11.海を渡る橋/冨田恵一

『シップビルディング』は
ヤマハが提供している音楽配信サイト「マイサウンド」で
試聴とダウンロードが行えますので、ぜひアクセスしてみてください。


「おとなを、休む日」の「おとなのこだわりCD」のコーナーでは
「転調が多い、ユニークな作品たち」というタイトルで、
面白いCDを集めてご紹介しています。今回の『シップビルディング』でも
一曲参加しているキリンジのアルバムもご紹介していますので、
そちらもぜひご覧ください。



Shiplaunching
冨田ラボ, 冨田恵一, 高橋幸宏, 大貫妙子, 堀込高樹, SOULHEAD, 吉田美奈子, 田中拡邦, CHEMISTRY, 糸井重里
ソニーミュージックエンタテインメント

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眠りの森feat.ハナレグミ
冨田ラボ, ハナレグミ, 松本隆, 冨田恵一
フェイスレコーズ

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Like A Queen feat.SOULHEAD
冨田ラボ, 冨田ラボ feat.SOULHEAD, 吉田美奈子, 冨田恵一
ソニーミュージックエンタテインメント

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JR阿佐ヶ谷のそばの蕎麦屋「すが原」は旨かったです。

2007年07月09日 09時41分42秒 | 一食入魂&つけ麺ジャンキーズ
江戸ソバリエ四百人が通っている、至福の蕎麦屋

ブックマン社

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ソバリエという言葉が面白いので、上記の本を読んでいたら、内の近所、JR阿佐ヶ谷駅のそばにひっそりと旨いそば屋があることを知った。何十回と通っている場所なのに気づかなかったな。というわけでよく晴れた暑い日、自転車で出かけてきました。

こちらです。
http://r.tabelog.com/tokyo/rstdtl/13000662/

隣に派手なステーキ屋があり、「すが原」はちょっと間口が狭く上品で、そば屋らしくない入り口。なるほど、これではなかなか気づかない。中に入ってみるとモダンなカフェのような感じ。しかし嫌みな感じではない。出てきた蕎麦は、これは良くできている、丁寧に作られた美味しい蕎麦でした。絶品です。

そういえば以前豊島区南長崎に在住の頃、もう十年以上も前ですが、家の近くに「休み屋」という美味しいそば屋があった。伝説のそば屋「翁」の流れをくむ名店とか言われていた。その店にも何度か行ったのだが、それは旨い蕎麦だった。しかし旨い蕎麦を追求するあまり自分にも客にも厳しいそば屋で、まるで私語もなければ蕎麦二枚という上限もあり、まるで蕎麦の道場のような佇まいだった、いまでもあるのだろうか。

いっぽう、すが原は、もっと気さくで入りやすいし、なにしろ夜もやっている(休み屋は2:00で終わりだった)ので、旨い日本酒を飲みつつ、蕎麦のたねでいっぱい、仕上げに蕎麦をたぐるなっていう飲み方もいける。暑い夏の日の夕暮れ、少し涼しい風が出てきた頃に出かけてみたいなと思うわけです。


下はちょっとお腹が空いたお昼にぴったりの「ぶっかけ蕎麦」です。

 


江戸ソバリエ―蕎麦を極めるソバのソムリエオフィシャル・ハンドブック

マキノ出版

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そば通―江戸ソバリエが選ぶ旨い蕎麦88

まどか出版

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