自転車を愛する諸氏へ。
自転車ツーキニスト。つまり自転車通勤の言葉の生みの親でもあり、リーダーでもある疋田さんのメルマガを転載します。
自転車は道交法上軽車両であり、車道を通るのが本分ですが自転車を車道から閉め出そうとする法案が通りつつあり、疋田さんはメルマガを通じてそれに対する反対運動をなさっています。私はそれに強く共感する者です。自転車を車道から閉め出す悪法、かなり進んでしまっているようです。
法案は最近比較的に話題となっていますが、まだまだ成立してしまう公算のほうが多いように思えます。悪法を敷設が目、ぜひ皆さんのご支援をよろしくお願いします。
以下、疋田さんのメルマガです。
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┏━┫ 週刊 自転車ツーキニスト "Weekly Bicycle Tourkinist" ┣━┓
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【例の法案】「警察側の弁明」の291号
■第2東京弁護士会シンポジウムにて
おお、我ながらうまいタイトルだ。警察側の弁明。アガサ・クリスティか、っつの。あれは「検察側」だって。
さて、前号の続きのような形だが、第2東京弁護士会の古川弁護士に対して、警察側からは次のような説明があったという。なんでも「今回の法案については、誤解されている」というのだ。
警察が言う大まかな要旨は次の通り。
「今回の改正法は、あくまで『自転車の原則車道通行』を徹底させるために行うもので、あらかじめ、幼児、児童などの車道通行できない人々を指定し、彼らにおいては、警察官が『車道に下りる』ことを注意しないために定めるもの」
なのだそうだ。(*脚注1)
いやまあ、言うに事欠いて……、というのが、私の率直な感想だが、それにしても、うまいもんだな。私はちょっと唸った。
自転車について知らない人は、容易に騙されてしまう。
例の「提言」が「試案」に変わる際、警察側の言いようが随分と変わったな、とは誰もが認めるところだろうが、その「試案」の中に隠された隠し球が、まさにこれだったのだ。
なるほど、巧みだ。官僚作文とはこれのことを言うのか。
だが、だ。
よくよく考えてみると、これまた、おかしなことだらけ。
誰もが最初に思うのが「だったら、まず警察官が車道に下りてからモノを言え」というツッコミだろう。歩道通行、併走、が当たり前の白チャリの実体については、誰もが重々ご承知の通りだ。私など、二段階右折をしない白チャリだって目撃したぞ。それもつい一昨日の話だ。六本木通りと駒沢通りが交差する三叉路。
その彼らがどのツラ下げて「自転車は交通法規を守りましょう、自転車は車道に下りましょう」だ?
……。
まあいい。
その辺りのことは、いわば枝葉末節(ホントは枝葉末節どころじゃないが)としよう。
警察の上記の弁明には、それどころではない、どうしようもない欺瞞があるのだ。
■車道通行を徹底させるためだって?
幼児や児童の自転車を、原則車道通行から除外するためならば、そうストレートに書けばいい。
だが、本試案はまったくそうなってはいない。
試案の当該部分をもう一度、よくよく見てみよう。
道路標識等により普通自転車歩道通行可の規制がなされている場合のほか、児童(6歳以上13歳未満の者)・幼児(6歳未満の者)が普通自転車を運転する場合、車道を通行することが危険である場合等と、普通自転車が例外的に歩道を通行することができる場合の要件を法律で明確に定めることとします。
児童、幼児はよろしい。
児童の「13歳未満」という括りに多少の議論の余地はあるだろうが(つまり10歳未満という程度にしてもいいのではないかという考え方)、そうは言っても、児童・幼児に関しては、欧米先進諸国でも、歩道通行が認められている。これは当たり前のことだ。彼らは保護されてしかるべきである。
だが、問題は次の部分だ。
車道を通行することが危険である場合等
なんなんだ、これは(怒)。
何が「場合等」なのだ?
試案のこの部分の不自然さは、そもそも日本語としておかしいことにもある。
カテゴリーの違うモノをあえて並列して並べてあるからだ。「児童・幼児」を取り除いてみると、このことは一層はっきりする。
いいだろうか。
「児童幼児の場合」と「危険である場合」は、歩道通行を許可する要件として、並列して並べてあるわけで、どちらかを取り除いても意味が通じなくてはならない。
では、取り除いてみよう。よく読んでいただきたい。
ちなみにこの場合の「規制」とは「許可」と同じ意味合いであります。
道路標識等により普通自転車歩道通行可の規制がなされている場合のほか、車道を通行することが危険である場合等と、普通自転車が例外的に歩道を通行することができる場合の要件を法律で明確に定めることとします。
??
「のほか」?
「道路標識等により普通自転車歩道通行可の規制がなされている場合」と「車道を通行することが危険である場合等」は、どう違うのだろうか。
要するに「車道を通行することが危険である場合」なのであれば「道路標識等により普通自転車歩道通行可の規制」つまり「自歩道指定」をすればいいというだけではないか。
もちろん現行法で十分対処可能である。
それなのに何故、法を改正して、改正法案に殊更に「車道を通行することが危険である場合等」を記してくるのかというと、そのココロは、もちろん例の「提言」の中にある。
要するに、この「車道を通行することが危険である場合等」こそが、<提言4-2-4>とセットなのである。
このメルマガで何度も何度も取り上げた、あの<提言4-2-4>。繰り返しておこう。
第4、2(4)「自転車が車道を通行することが特に危険な場合は、当該道路の自転車通行を禁止することなどの措置を講ずること」
ホントにもう、言うも言ったり、「児童と幼児を『原則、車道』から外すため」か。
旗色が悪くなってきたかと思って、そんな詭弁を弄するか。
この言い分は、何も知らない人にとっては、一見「ごもっとも」と聞こえがちだが、もうお分かりの通り、詭弁も詭弁、大詭弁である。
本当に「幼児・児童」という、ただそれだけが狙いならば、ストレートにそう書けばいいのだ。それならば私だってなんの異存もない。
だいたい児童と幼児を原則から外すためならば、なぜ<提言4-2-4>が必要なのか。まったく意味が分からない。
ホントにもう悪あがきもいい加減にしていただきたいものだ。
もう一つ言うなら、古川弁護士は、警察庁にこう聞いている。
「ならば、今後、原則車道を徹底させるためには、自転車で走れない歩道(全体の6割に及ぶ)には、そういう標識をつけるなどの措置を講ずるのですか?(国民がそれを知らない以上、知らしめるんでしょうね?)」
返事はこうだ。
「その予定はない」
語るに落ちたとは、まさにこのことだろう。
■シンポジウムでさらに判明したこと
やはりこういうシンポジウムはタメになる、と思ったのは、続々と新事実が判明してくることだ。
現行法上「自歩道については、あくまで歩行者優先であり、自転車は徐行すること」となっているのは、誰もがご承知の通りだと思うが、では、その「徐行」のスピードを、警察庁はどの程度と考えているか。
ご存じですか?
私は知らなかった。第2東京弁護士会が用意した資料によると、驚くなかれ、時速4、5kmである。自転車は歩道通行の際には、時速4、5kmで走ることを想定している、と、警察庁は、国会で答弁しているのである。
【参考資料】
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/084/1050/08405091050012c.html
時速4、5kmって、あなた、そりゃ歩行速度と同じでんがな。
徐行も何も、だいたいそのスピードでふらつかずに自転車に乗るってのは、かなりのハイテクニックですぜ。
答弁した鈴木交通企画課長(当時)は、ホントにそのスピードで自転車を運転できるとお考えだったのだろうか。
要は、何にも自転車のことを知りもしないし、自転車について、何にも考えちゃいない、そういう人々が、実に安易に「自転車なんてこの程度」として、勝手に推測し、勝手に決めているだけなのだよ。
そこにあるのは、果てしなく深い絶望あるのみだ……。
なんなんだ、この人たちは。
■頼むから、一度、真剣に考えてみてくれ
とにかくもう、一度でいいから、自転車について真面目に考えてみようよ。
メンツだの何だのがあるのかもしれないが、今回の提言やら試案やらをツギハギし、詭弁を重ね、体面を取り繕うんじゃなくて、一度、取り下げてから、一から考えてみようじゃないの。
たった6回、たった半年、それも門外漢の学者だらけの懇談会で出た「提言」なんかじゃなくて、きちんと「これからどうあるべきか」ということを、国家百年の大計として考えてみようではないか。
それをするために、あなた方は官僚になったんじゃないの。
私は知っている。官僚になる人々は、本来、みな理想が高いのだ。
少なくとも、私の同窓生はそうだった。コイツはすごいなー、理想が高いなー、かなわないなー、という連中が、国家公務員一種試験を通って、○○省庁の役人になった。皮肉でも何でもなく、これは確かなことだ。
マスメディアあたりが何を言おうと、アホな議員が何を言おうと、「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」の思いで、日々の批判に耐え、理想に邁進する、それこそが、あなた方のやりたかったことじゃないか。
その行き着く先は「理想」だったはずじゃないか。
だったら、頼むよ。
日本の道路行政の理想を考えてくれよ。
私は言わない。
「法案、取り下げたよ(または改変したよ)、ざまみろ」なんてことは口が裂けても言わない。心の底から、言わない。
むしろ、警察庁エラい! と言うだろう。やっぱり日本の警察は国民のための官庁だった! と言うだろう。これは本気で言っているのだ。
私だって、より良き日本の交通行政のために、と思っている。
それについては(たぶん)警察庁だって同じ筈じゃないか。
よりスムーズな交通のため、環境のため、弱者優先をどうするかを考え、事故を少なくするためにどうするかを熟慮し、交通教育を徹底し……、と、そういったことを、ひとつひとつ、真面目に考えようよ、と思うのだ。
現在の世界的潮流の中、交通行政のキーワードの一つは、間違いなく「自転車」である。
ならば、その自転車について、一発、真面目に考えてみようじゃないのよ。
担当者は、ちゃんと自転車に乗ってみて、その上で、日本の道路行政はいかにあるべきかを真摯に考えようよ。
本気の話、それだけが、私の思いなのだ。
警察庁は、そのあたりを汲み取っていただけないだろうか。
パブコメもたくさん届いたはずだ。みな、真面目に考え、真面目に公共の福祉のため、日本のため、と思って、わざわざパブコメを寄せているのだ。
今、これをリアルタイムで読んでる、警察官僚の方々、いるでしょ? いないとは言わせない。
私の考え方は間違っているだろうか。あなた方の今回の法案は正しいだろうか。
ちゃんと考えてみていただきたい。あなた方にはそれができるはずだ。それどころではない溢れる知力をお持ちの筈だ。
一度、ドイツやオランダやデンマークの状況を見てきてはいかがか。もっと遅れたフランスやイギリスでもいっこうに構わない。日本がいかに歪でおかしな道路行政をやっているかを、知っていただきたい。
というより、現在、既にして、本当はあなた方も知ってるはずだ。それが「日本という特殊事情」などでは誤魔化せないことなど、ホントはとうにご承知の筈だ。
ヒキタ、心よりのお願いであります。
是非、考え直していただきたい。
(*脚注1)
現在、警察庁は、これと同様のことを、新聞各紙の編集委員レベルに語っているという。こう言っちゃ何だが「火消し」に躍起だ。
話の内容を聞いてみると、まったく……、自転車を知らないと思って、好きに吹いてるもんだ、と私などは思う。
今回の「自転車通行禁止の措置」に関してだって、あくまで「例外的な措置」なんだと。
例外措置、例外措置、と言いながら、70年と78年の道交法改正以降、どうなったか。
いつぞやの号の繰り返しになるが、
【自転車の歩道走行認可は、あくまで例外措置】
↑これが、70年、78年。
【自転車の車道通行制限は、あくまで例外措置】
↑これが今回なのだ。
どう信じればいいというのか。
ゴマかしもいい加減にしていただきたい。
-----------------------
【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】
今回もお休み。
現在発売中の「BiCYCLE CLUB」誌(1/20発売)は、この法案に関して、10ページの大特集を組んでいます。是非ご覧下さい。
-----------------------
「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
*昨年12月発売の最新刊。今回はなぜか「奈良・暗峠」「秩父・八丁峠」「北海道・日高峠」と、峠モノが満載。
「疋田智の自転車生活スターティングブック」ロコモーションパブリッシング
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
「大人の自転車ライフ」光文社知恵の森文庫
「自転車ツーキニストの憂鬱」ロコモーション・パブリッシング
「日本史の旅は自転車に限る!」木世(えい)出版社
いずれも好評発売中。ネット内でのご注文はこちらにどうぞ。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url/index=books-jp&field-author=%E7%96%8B%E7%94%B0%20%E6%99%BA/249-6371737-5693951
【自転車通勤で行こう】
http://japgun.infoseek.ne.jp
バックナンバーはこちら。
http://www.melma.com/mag/03/m00016703/
自転車ツーキニスト。つまり自転車通勤の言葉の生みの親でもあり、リーダーでもある疋田さんのメルマガを転載します。
自転車は道交法上軽車両であり、車道を通るのが本分ですが自転車を車道から閉め出そうとする法案が通りつつあり、疋田さんはメルマガを通じてそれに対する反対運動をなさっています。私はそれに強く共感する者です。自転車を車道から閉め出す悪法、かなり進んでしまっているようです。
法案は最近比較的に話題となっていますが、まだまだ成立してしまう公算のほうが多いように思えます。悪法を敷設が目、ぜひ皆さんのご支援をよろしくお願いします。
以下、疋田さんのメルマガです。
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【例の法案】「警察側の弁明」の291号
■第2東京弁護士会シンポジウムにて
おお、我ながらうまいタイトルだ。警察側の弁明。アガサ・クリスティか、っつの。あれは「検察側」だって。
さて、前号の続きのような形だが、第2東京弁護士会の古川弁護士に対して、警察側からは次のような説明があったという。なんでも「今回の法案については、誤解されている」というのだ。
警察が言う大まかな要旨は次の通り。
「今回の改正法は、あくまで『自転車の原則車道通行』を徹底させるために行うもので、あらかじめ、幼児、児童などの車道通行できない人々を指定し、彼らにおいては、警察官が『車道に下りる』ことを注意しないために定めるもの」
なのだそうだ。(*脚注1)
いやまあ、言うに事欠いて……、というのが、私の率直な感想だが、それにしても、うまいもんだな。私はちょっと唸った。
自転車について知らない人は、容易に騙されてしまう。
例の「提言」が「試案」に変わる際、警察側の言いようが随分と変わったな、とは誰もが認めるところだろうが、その「試案」の中に隠された隠し球が、まさにこれだったのだ。
なるほど、巧みだ。官僚作文とはこれのことを言うのか。
だが、だ。
よくよく考えてみると、これまた、おかしなことだらけ。
誰もが最初に思うのが「だったら、まず警察官が車道に下りてからモノを言え」というツッコミだろう。歩道通行、併走、が当たり前の白チャリの実体については、誰もが重々ご承知の通りだ。私など、二段階右折をしない白チャリだって目撃したぞ。それもつい一昨日の話だ。六本木通りと駒沢通りが交差する三叉路。
その彼らがどのツラ下げて「自転車は交通法規を守りましょう、自転車は車道に下りましょう」だ?
……。
まあいい。
その辺りのことは、いわば枝葉末節(ホントは枝葉末節どころじゃないが)としよう。
警察の上記の弁明には、それどころではない、どうしようもない欺瞞があるのだ。
■車道通行を徹底させるためだって?
幼児や児童の自転車を、原則車道通行から除外するためならば、そうストレートに書けばいい。
だが、本試案はまったくそうなってはいない。
試案の当該部分をもう一度、よくよく見てみよう。
道路標識等により普通自転車歩道通行可の規制がなされている場合のほか、児童(6歳以上13歳未満の者)・幼児(6歳未満の者)が普通自転車を運転する場合、車道を通行することが危険である場合等と、普通自転車が例外的に歩道を通行することができる場合の要件を法律で明確に定めることとします。
児童、幼児はよろしい。
児童の「13歳未満」という括りに多少の議論の余地はあるだろうが(つまり10歳未満という程度にしてもいいのではないかという考え方)、そうは言っても、児童・幼児に関しては、欧米先進諸国でも、歩道通行が認められている。これは当たり前のことだ。彼らは保護されてしかるべきである。
だが、問題は次の部分だ。
車道を通行することが危険である場合等
なんなんだ、これは(怒)。
何が「場合等」なのだ?
試案のこの部分の不自然さは、そもそも日本語としておかしいことにもある。
カテゴリーの違うモノをあえて並列して並べてあるからだ。「児童・幼児」を取り除いてみると、このことは一層はっきりする。
いいだろうか。
「児童幼児の場合」と「危険である場合」は、歩道通行を許可する要件として、並列して並べてあるわけで、どちらかを取り除いても意味が通じなくてはならない。
では、取り除いてみよう。よく読んでいただきたい。
ちなみにこの場合の「規制」とは「許可」と同じ意味合いであります。
道路標識等により普通自転車歩道通行可の規制がなされている場合のほか、車道を通行することが危険である場合等と、普通自転車が例外的に歩道を通行することができる場合の要件を法律で明確に定めることとします。
??
「のほか」?
「道路標識等により普通自転車歩道通行可の規制がなされている場合」と「車道を通行することが危険である場合等」は、どう違うのだろうか。
要するに「車道を通行することが危険である場合」なのであれば「道路標識等により普通自転車歩道通行可の規制」つまり「自歩道指定」をすればいいというだけではないか。
もちろん現行法で十分対処可能である。
それなのに何故、法を改正して、改正法案に殊更に「車道を通行することが危険である場合等」を記してくるのかというと、そのココロは、もちろん例の「提言」の中にある。
要するに、この「車道を通行することが危険である場合等」こそが、<提言4-2-4>とセットなのである。
このメルマガで何度も何度も取り上げた、あの<提言4-2-4>。繰り返しておこう。
第4、2(4)「自転車が車道を通行することが特に危険な場合は、当該道路の自転車通行を禁止することなどの措置を講ずること」
ホントにもう、言うも言ったり、「児童と幼児を『原則、車道』から外すため」か。
旗色が悪くなってきたかと思って、そんな詭弁を弄するか。
この言い分は、何も知らない人にとっては、一見「ごもっとも」と聞こえがちだが、もうお分かりの通り、詭弁も詭弁、大詭弁である。
本当に「幼児・児童」という、ただそれだけが狙いならば、ストレートにそう書けばいいのだ。それならば私だってなんの異存もない。
だいたい児童と幼児を原則から外すためならば、なぜ<提言4-2-4>が必要なのか。まったく意味が分からない。
ホントにもう悪あがきもいい加減にしていただきたいものだ。
もう一つ言うなら、古川弁護士は、警察庁にこう聞いている。
「ならば、今後、原則車道を徹底させるためには、自転車で走れない歩道(全体の6割に及ぶ)には、そういう標識をつけるなどの措置を講ずるのですか?(国民がそれを知らない以上、知らしめるんでしょうね?)」
返事はこうだ。
「その予定はない」
語るに落ちたとは、まさにこのことだろう。
■シンポジウムでさらに判明したこと
やはりこういうシンポジウムはタメになる、と思ったのは、続々と新事実が判明してくることだ。
現行法上「自歩道については、あくまで歩行者優先であり、自転車は徐行すること」となっているのは、誰もがご承知の通りだと思うが、では、その「徐行」のスピードを、警察庁はどの程度と考えているか。
ご存じですか?
私は知らなかった。第2東京弁護士会が用意した資料によると、驚くなかれ、時速4、5kmである。自転車は歩道通行の際には、時速4、5kmで走ることを想定している、と、警察庁は、国会で答弁しているのである。
【参考資料】
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/084/1050/08405091050012c.html
時速4、5kmって、あなた、そりゃ歩行速度と同じでんがな。
徐行も何も、だいたいそのスピードでふらつかずに自転車に乗るってのは、かなりのハイテクニックですぜ。
答弁した鈴木交通企画課長(当時)は、ホントにそのスピードで自転車を運転できるとお考えだったのだろうか。
要は、何にも自転車のことを知りもしないし、自転車について、何にも考えちゃいない、そういう人々が、実に安易に「自転車なんてこの程度」として、勝手に推測し、勝手に決めているだけなのだよ。
そこにあるのは、果てしなく深い絶望あるのみだ……。
なんなんだ、この人たちは。
■頼むから、一度、真剣に考えてみてくれ
とにかくもう、一度でいいから、自転車について真面目に考えてみようよ。
メンツだの何だのがあるのかもしれないが、今回の提言やら試案やらをツギハギし、詭弁を重ね、体面を取り繕うんじゃなくて、一度、取り下げてから、一から考えてみようじゃないの。
たった6回、たった半年、それも門外漢の学者だらけの懇談会で出た「提言」なんかじゃなくて、きちんと「これからどうあるべきか」ということを、国家百年の大計として考えてみようではないか。
それをするために、あなた方は官僚になったんじゃないの。
私は知っている。官僚になる人々は、本来、みな理想が高いのだ。
少なくとも、私の同窓生はそうだった。コイツはすごいなー、理想が高いなー、かなわないなー、という連中が、国家公務員一種試験を通って、○○省庁の役人になった。皮肉でも何でもなく、これは確かなことだ。
マスメディアあたりが何を言おうと、アホな議員が何を言おうと、「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」の思いで、日々の批判に耐え、理想に邁進する、それこそが、あなた方のやりたかったことじゃないか。
その行き着く先は「理想」だったはずじゃないか。
だったら、頼むよ。
日本の道路行政の理想を考えてくれよ。
私は言わない。
「法案、取り下げたよ(または改変したよ)、ざまみろ」なんてことは口が裂けても言わない。心の底から、言わない。
むしろ、警察庁エラい! と言うだろう。やっぱり日本の警察は国民のための官庁だった! と言うだろう。これは本気で言っているのだ。
私だって、より良き日本の交通行政のために、と思っている。
それについては(たぶん)警察庁だって同じ筈じゃないか。
よりスムーズな交通のため、環境のため、弱者優先をどうするかを考え、事故を少なくするためにどうするかを熟慮し、交通教育を徹底し……、と、そういったことを、ひとつひとつ、真面目に考えようよ、と思うのだ。
現在の世界的潮流の中、交通行政のキーワードの一つは、間違いなく「自転車」である。
ならば、その自転車について、一発、真面目に考えてみようじゃないのよ。
担当者は、ちゃんと自転車に乗ってみて、その上で、日本の道路行政はいかにあるべきかを真摯に考えようよ。
本気の話、それだけが、私の思いなのだ。
警察庁は、そのあたりを汲み取っていただけないだろうか。
パブコメもたくさん届いたはずだ。みな、真面目に考え、真面目に公共の福祉のため、日本のため、と思って、わざわざパブコメを寄せているのだ。
今、これをリアルタイムで読んでる、警察官僚の方々、いるでしょ? いないとは言わせない。
私の考え方は間違っているだろうか。あなた方の今回の法案は正しいだろうか。
ちゃんと考えてみていただきたい。あなた方にはそれができるはずだ。それどころではない溢れる知力をお持ちの筈だ。
一度、ドイツやオランダやデンマークの状況を見てきてはいかがか。もっと遅れたフランスやイギリスでもいっこうに構わない。日本がいかに歪でおかしな道路行政をやっているかを、知っていただきたい。
というより、現在、既にして、本当はあなた方も知ってるはずだ。それが「日本という特殊事情」などでは誤魔化せないことなど、ホントはとうにご承知の筈だ。
ヒキタ、心よりのお願いであります。
是非、考え直していただきたい。
(*脚注1)
現在、警察庁は、これと同様のことを、新聞各紙の編集委員レベルに語っているという。こう言っちゃ何だが「火消し」に躍起だ。
話の内容を聞いてみると、まったく……、自転車を知らないと思って、好きに吹いてるもんだ、と私などは思う。
今回の「自転車通行禁止の措置」に関してだって、あくまで「例外的な措置」なんだと。
例外措置、例外措置、と言いながら、70年と78年の道交法改正以降、どうなったか。
いつぞやの号の繰り返しになるが、
【自転車の歩道走行認可は、あくまで例外措置】
↑これが、70年、78年。
【自転車の車道通行制限は、あくまで例外措置】
↑これが今回なのだ。
どう信じればいいというのか。
ゴマかしもいい加減にしていただきたい。
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*昨年12月発売の最新刊。今回はなぜか「奈良・暗峠」「秩父・八丁峠」「北海道・日高峠」と、峠モノが満載。
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「大人の自転車ライフ」光文社知恵の森文庫
「自転車ツーキニストの憂鬱」ロコモーション・パブリッシング
「日本史の旅は自転車に限る!」木世(えい)出版社
いずれも好評発売中。ネット内でのご注文はこちらにどうぞ。
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【自転車通勤で行こう】
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