ほぼ週刊イケヤ新聞ブログ版

コピーライター・ミュージシャン池谷恵司の公式ブログです。
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PA、それはコンサートを支配する人

2006年03月30日 00時44分52秒 | 広告・コピー論・批評
実は私の仕事のメインは、実は業務用PA機器の広告・カタログのコピーを書くことである。テクニカルライターではないが、それにかなり近いコピーライターかな。意外かもね。

プロフェッショナルのために説明する文章をゴキガキとたくさんぎょうさん書くわけだが、それなら、機材のことを隅々までよく知ってるのかと言われると、知っているような顔をして知らないことが多い(おいおい)、で先日、日頃の行いの良さからか、ある社内的な講習会への参加を許された。それはPAを一から組んで、本番のライブでPAをする、という、恐るべき講習だった。

いろいろ学ぶことの多い、とても実り多い機会だったんだが、なんといってもいちばんビックリしたのは、PAのエンジニアっていうのは、まったくもって自分の判断で「いい音」を作るという職種なんだなということ。考えてみれば当たり前だが、もっと考えてみるとコレは凄いことです。もちろん凄い責任だ。ミュージシャンが孫悟空だとして、PAエンジニアはお釈迦様の手のひらか。とにかくその上でしか踊れないわけだから。


聴衆の聴く音を決めるPAエンジニアってのは、(とくにFOHのこと。モニターミキサーは逆にミュージシャンのもの)いわば自分を聴衆の代表とし、数え切れないほどの決断を瞬時に下しながら音を作っていくわけで、これはもうコンサートという現代の宗教儀式を支配する司祭の立場にある、としかいいようがない。

以前僕が手伝いをしたことがある、日本を代表するミキシングエンジニアであるオノセイゲン氏は「僕はミキシングの仕事で迷ったことはないよ」と言っていたが、たぶん本当だろう。迷っていたらミキシングで良い仕事ができるはずがない。そのくらい瞬時の判断と、ブレのない「いい音」への意志が必要だ。

で、いろいろ学んだ後で、最後に最先端のデジタルミキサーでイベントの本番、一曲だけだがミキシングをさせてもらった。なんつーか、これは本当に気持ちいいね。全能感がある、いまこの場ですべてを支配しているのが自分だ、という神の領域にいるような錯覚に陥る。ま、ビギナーが陥りやすい罠ではあろうが、気持ちの良い罠だ。たぶんもう二度とこんなチャンスはないだろう。
いままでステージの上でギターを弾くことは無数にあったが、所詮手のひらの孫悟空状態だったのね。恐るべし、PAミキサー。