ほぼ週刊イケヤ新聞ブログ版

コピーライター・ミュージシャン池谷恵司の公式ブログです。
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逝く空に桜の花があれば佳し

2006年03月28日 10時16分54秒 | Photo&エッセイ
先週土曜日あたり、ああー桜が咲きはじめたな、ことしも、と思っていたら、今朝はもう満開と見まごうばかりの美しさで咲いている。
早い。桜とは、惜しむものなんだな。

逝く空に桜の花があれば佳し   北桃子

新聞で昨日読んだ、この句には泣けた。北桃子とは故・三波春夫さんの俳名だそうだ。晴れ晴れとしたいい句である。辞世の句だったそうで、この句を詠んだ1月から4月まで頑張り、桜にあってから逝ったという。

その新聞の記事が妙に心に残っていたのだろう。
今日子どもを保育園に送っていき、帰り際、手を振りながらバイバーイと言う子どもの声を背後で聞きながら(この瞬間はいつも別れがたい気持ちになる)自転車を漕ぎ、ふと空を見上げると、空一面が桜だった。瞬間的に「逝く空に桜の花があれば佳し」が、文字ではなく、ビジュアルと肉体感覚として、わかってしまった。

ああ、これが死ぬということなんだな、と身近な、プチ臨死体験をした気がする。それは悲しみを伴う惜別であると同時に旅立ちであり、不思議と悲しみよりも充足感が勝るものだった。

それにしても、桜は、彼岸(あの世)を想起させる、生と死、そしてエロスのメタファーであることだなぁ。

願わくば花の下にて春死なむ その如月の 望月の頃   西行