ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
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劔岳そして雲海「初秋に登る」

2020年01月16日 23時44分06秒 | Weblog
一シーズンに二度劔岳に登ることはこれで何度目になるだろうか・・・。
贅沢なことでもありこの上なく楽しみな山行であった。

9月17日、扇沢駐車場を出発し室堂へと向かう。
一緒に行くのは若手のホープN君だ。
北アルプスのあちこちの山は登ってはいるが、劔岳は彼にとってまだ未踏峰。
ガイド兼インストラクターとしてご一緒願えないかというたっての依頼を受け登ることにした。
(「俺が剱のガイドか・・・なんか笑っちゃうなぁ」)と思いながらもやっぱり登りたい。


黒部ダムにて。
ここは写真撮影の定番スポットで、登山者と観光客で賑わうポイントだ。

バス、ロープウェイ、ケーブルカーなどを乗り継いで室堂へ向かういつもの慣れた行程ではあるが、N君にしてみれば一つ一つが新鮮であり、少しずつ劔岳に近づいているという実感が湧いていることだろう。

室堂ターミナルに着き、登山届けを提出。
新鮮な湧き水を汲みいざ劔岳へ!

ほぼ快晴の秋空の元、足取りは軽かった。
「もう少し行くと剱の一角が見えるよ。」
その一言にN君の胸躍る様子が伺える。


ミクリガ温泉を過ぎた辺りで劔岳の北西部(早月尾根)が見え始めた。
「あれが劔岳だよ。」
「おぉ~」という言葉以外に何も出てこないようで、しばし黙ったまま見つめているN君だった。
感動だけでは無いかも知れないが、その気持ちをいつまでも忘れないでいてほしい。
自分とは違い、これからまだまだ続く山男人生にとってその新鮮さは大切だと思う。


ややアップの画像。
「あしたはあそこを目指すんですね。」
その一言が何を意味しているのか・・・。
登頂を目指す意欲だけでなく、「劔岳」という名の持つ畏怖心があることは間違いのないところだろう。


雷鳥坂が一目瞭然で見ることができた。
(赤い線が登頂ルート)
部分的にはこの位置からでもルートを確認することができ、N君に説明した。
「あそこを登り切れば目の前にドドーンと剱が現れるからね!」
ニッコリと笑っていたが、テントを背負って登り切ることが結構きついことは彼自身もよく知っている。
「頑張ります!」
「大丈夫、今日はテン場までだから慌てずゆっくりと行こうや。」


7月に来た時もこのポイントで休憩を取った。
残暑とはいえあの時よりも水は冷たく感じ、さすがに足を浸すことはできなかった。


これから始まる今日の難所「雷鳥坂」登攀を前にして軽く行動食を摂った。
真夏の雷鳥坂よりはまだましなのだろうと推測するが、何もかもが初めてのN君にとっては少々きついかも知れない。
そこは若さでいくらでもカバーリングできる。(羨ましい・・・)

紅葉にはまだ早かったが、ナナカマドの葉がやや色づき始めていた。
雷鳥坂を登り始めてすぐのポイントに「ナナカマドカーブ」というポイントがある。
これは自分が勝手に名付けたもので、「ここからいよいよ始まる」というポイントでもあり、下山時には「もう終わるよ」というポイントでもある。

しばらくは稜線を境に右へ行ったり左へ行ったりを繰り返して標高を稼ぐ。
そして大きく右へとルートを伸ばせば雷鳥坂の2/3を越えた辺りになる。


約2/3を越えた辺り。
暑いことは暑いのだが、風はもう秋風を思わせるほど肌に冷たかった。
それでもまだこの時は心地よかった。


「たぶんあと1時間はかからないと思うよ。まぁゆっくり登ろうか。」
「早く剱が見てみたいです。」
「その思いを思い切り溜めておいて、乗越に着いたら爆発させるといいよ。感動ものだから(笑)。」

平日とはいえ、夏山と比べれば登山者の数はあきらかに少ない。
まぁ混雑がないということでどちらかと言えばありがたいと思う。
何故ならマイペースでの登攀ができるからだ。
そして季節柄もあり、発汗量は7月の時よりも少ない。
これがバテ防止にも繋がっている。
秋の北アルプスって、やっぱり「有り」かもね。


別山乗越が見えてきた。
「あれが剱御前小舎だよ。もうすぐだ!」
「いよいよ剱とご対面ですね!」

雷鳥坂登攀タイムは、休憩を含めて2時間10分だった。
まずまずのコースタイムに自己満足だった。
乗越に着き真っ先にやったことはザックを下ろすことではなかった。
何よりも目の前に屹立するその全容を見せてあげたかった。
「こっちこっち」と言ってN君を案内し、絶景ポイントまで急いだ。


でかいザックを下ろすことも忘れ、しばし見入っているN君。
「どう?」とかの一言であっても言葉は掛けないほうがいいだろいと思い、何も言わず何も聞かず。

彼の後ろ姿を見ながらゆっくりと煙草に火を付けた。




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