「天狗の裏庭」あたりから岩場が目立ち始めた。
アイゼンを踏み込むと「ギシッ!」というような岩を噛む鈍い音が聞こえる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/04/2acc84705c42856d3d8e0adf7b33e9e0.jpg)
岩の上にアイゼンを乗せる時はちょっと慎重になる。
岩の形状(カーブ)に合わせて、絶対と言うほどに靴底は曲がらないために捻挫をしやすいからだ。
目の前に樹林帯がある。
おそらくはこの樹林帯を抜ければ稜線へと出るだろう。
そしてそこからは強風との闘いになることは明らかだ。
樹林帯に入る前にもう一度稜線を見上げた。
やはり風は強い。
時折「ブワッ!!」っという感じで稜線上の雪が大きく強く舞い上がっているのが目視できた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/c7/4a253c5f89869235799ba9947b2f87a3.jpg)
何となくではあったが、稜線に沿ったトレースも見えた。
「あそこまでなら沿って行けるかな・・・」
心細い思いであったが、後は誤りの許されない自分の判断力だけが頼りだった。
樹林帯の中で山肌のルートを考えながら進む。
「少し西寄りに登るか・・・」
そんな程度しか思いつかなかった。
樹林帯の中には雪に埋もれかけているトレースがあった。
おそらくは昨日のものだろう。
いよいよ樹林帯を抜ける。
その前にバラクラバをかぶり、ゴーグルをかけ、アウタージャケットのファスナーを上まで引き上げた。
先ずはトレースに沿って登攀開始。
だが、そのトレースもすぐに完全に消えてしまっていた。
雪面は思っていた以上に固く、アイゼンの爪痕しか残らない。
「これじゃぁトレースなんて当てにできないのは当たり前か・・・」
こんな時になってまで他人のトレースを当てにして登ろうとしている自分が情けなくもあった。
「今があの時の反省を生かす時だろうなぁ・・・」
そう思い、地図とコンパスと高度計を基に現在地からルートを考えた。
「あの時」とは・・・。
そう、12月に登った安達太良山の時だ。
登頂はしたものの、下山ルートを誤った時のことだ。
勝手な思い込みやおぼろげな記憶だけで「たぶん・・・こっち」。
結果は散々たるもの。
挙げ句の果てに極度の低血糖症にまでなってしまったあの時だ。
一度あったことは二度あってはならない。
幸いに視界は良好だ。
周囲の地形の形状をも含めて自分の位置とコースを確認できる。
東側の稜線より標高を上げながら西に登攀を続けた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/22/0d630f36c4267c4948a9a4de99bbb877.jpg)
無茶苦茶風が強い。
何度か強風に体を煽られた。
雪面の雪の固まりは雪ではなく大粒の氷の様に固く、風で運ばれ顔面に当たってくる。
それがまた痛いの何のって(笑)。
いったん脱いでしまったバラクラバをもう一度かぶり直した。
徐々にだが標高は確実に上がっている。
上がってはいるのだが、スムーズな運びではなかった。
ピンポイントで雪面が緩いところがあり、そこにはまってしまうと体は胸近くまで埋もれてしまう。
事実何度かはまってしまい、なかなか抜け出せないで足掻いてしまった。
また、岩が進行の邪魔をし、進みたい方向を変えざるを得なかった。
つまりはジグザグに登攀していることになる。
「落ち着け。地図を見ろ。」
自分に言い聞かせる。
地図を取り出し、高度計の数値から大凡の位置を割り出した。
周囲を見渡すと、北の方角に「黒百合ヒュッテ」の建物が見えた。
地図に記入してあった磁北線、コンパス、ヒュッテの位置関係、西側の谷などを含めて「ここだ」と言えるポイントを絞った。
そして、事前にネットで調べておいた重要なヒントがあった。
『天狗の鼻のほぼ真下(北側)に、十字の標識があるので、その標識から西側(右側)へは絶対に行かないこと。
標識の左側を目指してください。
谷側(西側)に出てしまうと大変なことになります。』
という経験者のアドバイスだ。
目を凝らして見渡すが、まだ標識は確認できなかった。
再び斜め上に向かって西側に登った。
そして地図で確認。
どうやら僅かながら西側に来すぎてしまっているようだった。
少しずつ軌道修正を図った。
そして遂にあの十字型の標識を発見!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/a5/8362f405d4fbcd8e5e78ef888f88c80a.jpg)
[赤丸の部分が標識]
トレースもついている。
ギリギリと言えばギリギリだったが、軌道修正をしたことは間違ってはいなかった。
「良かったぁ~。地図の見方、コンパスの使い方を知ってて良かったぁ~」
大したことではなくとも、基本は疎かにしてはならないことを改めて痛感した瞬間だった。
後は天狗の鼻の西側を巻くように登ればよい。
ここまでの所要時間、休憩を含めて1時間20分。
ジグザグに進んでしまった割りには思っていた以上に早かった。
アイゼンを踏み込むと「ギシッ!」というような岩を噛む鈍い音が聞こえる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/04/2acc84705c42856d3d8e0adf7b33e9e0.jpg)
岩の上にアイゼンを乗せる時はちょっと慎重になる。
岩の形状(カーブ)に合わせて、絶対と言うほどに靴底は曲がらないために捻挫をしやすいからだ。
目の前に樹林帯がある。
おそらくはこの樹林帯を抜ければ稜線へと出るだろう。
そしてそこからは強風との闘いになることは明らかだ。
樹林帯に入る前にもう一度稜線を見上げた。
やはり風は強い。
時折「ブワッ!!」っという感じで稜線上の雪が大きく強く舞い上がっているのが目視できた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/c7/4a253c5f89869235799ba9947b2f87a3.jpg)
何となくではあったが、稜線に沿ったトレースも見えた。
「あそこまでなら沿って行けるかな・・・」
心細い思いであったが、後は誤りの許されない自分の判断力だけが頼りだった。
樹林帯の中で山肌のルートを考えながら進む。
「少し西寄りに登るか・・・」
そんな程度しか思いつかなかった。
樹林帯の中には雪に埋もれかけているトレースがあった。
おそらくは昨日のものだろう。
いよいよ樹林帯を抜ける。
その前にバラクラバをかぶり、ゴーグルをかけ、アウタージャケットのファスナーを上まで引き上げた。
先ずはトレースに沿って登攀開始。
だが、そのトレースもすぐに完全に消えてしまっていた。
雪面は思っていた以上に固く、アイゼンの爪痕しか残らない。
「これじゃぁトレースなんて当てにできないのは当たり前か・・・」
こんな時になってまで他人のトレースを当てにして登ろうとしている自分が情けなくもあった。
「今があの時の反省を生かす時だろうなぁ・・・」
そう思い、地図とコンパスと高度計を基に現在地からルートを考えた。
「あの時」とは・・・。
そう、12月に登った安達太良山の時だ。
登頂はしたものの、下山ルートを誤った時のことだ。
勝手な思い込みやおぼろげな記憶だけで「たぶん・・・こっち」。
結果は散々たるもの。
挙げ句の果てに極度の低血糖症にまでなってしまったあの時だ。
一度あったことは二度あってはならない。
幸いに視界は良好だ。
周囲の地形の形状をも含めて自分の位置とコースを確認できる。
東側の稜線より標高を上げながら西に登攀を続けた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/22/0d630f36c4267c4948a9a4de99bbb877.jpg)
無茶苦茶風が強い。
何度か強風に体を煽られた。
雪面の雪の固まりは雪ではなく大粒の氷の様に固く、風で運ばれ顔面に当たってくる。
それがまた痛いの何のって(笑)。
いったん脱いでしまったバラクラバをもう一度かぶり直した。
徐々にだが標高は確実に上がっている。
上がってはいるのだが、スムーズな運びではなかった。
ピンポイントで雪面が緩いところがあり、そこにはまってしまうと体は胸近くまで埋もれてしまう。
事実何度かはまってしまい、なかなか抜け出せないで足掻いてしまった。
また、岩が進行の邪魔をし、進みたい方向を変えざるを得なかった。
つまりはジグザグに登攀していることになる。
「落ち着け。地図を見ろ。」
自分に言い聞かせる。
地図を取り出し、高度計の数値から大凡の位置を割り出した。
周囲を見渡すと、北の方角に「黒百合ヒュッテ」の建物が見えた。
地図に記入してあった磁北線、コンパス、ヒュッテの位置関係、西側の谷などを含めて「ここだ」と言えるポイントを絞った。
そして、事前にネットで調べておいた重要なヒントがあった。
『天狗の鼻のほぼ真下(北側)に、十字の標識があるので、その標識から西側(右側)へは絶対に行かないこと。
標識の左側を目指してください。
谷側(西側)に出てしまうと大変なことになります。』
という経験者のアドバイスだ。
目を凝らして見渡すが、まだ標識は確認できなかった。
再び斜め上に向かって西側に登った。
そして地図で確認。
どうやら僅かながら西側に来すぎてしまっているようだった。
少しずつ軌道修正を図った。
そして遂にあの十字型の標識を発見!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/a5/8362f405d4fbcd8e5e78ef888f88c80a.jpg)
[赤丸の部分が標識]
トレースもついている。
ギリギリと言えばギリギリだったが、軌道修正をしたことは間違ってはいなかった。
「良かったぁ~。地図の見方、コンパスの使い方を知ってて良かったぁ~」
大したことではなくとも、基本は疎かにしてはならないことを改めて痛感した瞬間だった。
後は天狗の鼻の西側を巻くように登ればよい。
ここまでの所要時間、休憩を含めて1時間20分。
ジグザグに進んでしまった割りには思っていた以上に早かった。
最後の写真の左端の方、雪庇ができているように見えますね。
バックに西天狗岳が写っているのはまったくの偶然でした(笑)
是非使ってください。
山の雑誌に載っている写真はカメラも一級品で、撮る人もプロかそれに近い人ばかり。
「いいねぇ、今度真似しよう」と思っても所詮は素人なので上手くは撮れません。
それよりも、ギアやウェアなどの各メーカーの宣伝写真の方が迫力はありますね。
過酷な状況が「これでもか」というほどに伝わってきます。
自分の場合過酷な状況に陥ってしまうと写真どころではなく、「どうしよう」ってオロオロしてます(笑)。
本来のルートはその殆どが雪庇でしたから安易に近づくことができませんでした。
それでなくとも西からの強風でしたので煽られたら一発アウトでしょうね。
こんな時っていろんな意味で「独り」の力が試されるんだなぁってしみじみ思いました。