ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

やっぱり登りたい!:「デブリを歩く」

2019年07月28日 23時38分09秒 | Weblog
登り始めてすぐ、雪面の状態が急変した。
「デブリ」である。

デブリとは、雪崩が起き流れ落ちた雪のかたまりが堆積した状況のことで、歩き難さはこの上ないものだ。
雪のかたまりが極端な凹凸となり不安定となるが、まだそれだけなら良い方で、いきなり「ズボッ!」と膝近くまで埋もれることも頻繁にある。
二年前にはそれが原因で膝を痛め撤退を余儀なくされた苦い思い出がある。


デブリの上を登って行くN君とKMさん。
ザックが重い分足取りも鈍くならざるを得ない感じだ。

しばらくはデブリが続いたが、やがて落ち着き幾分登りやすくはなった。
しかし今度は斜度が厳しくなってきた。
テン場まではまだ遠く、あと一時間程はかかるだろう。
「その先を右に曲がれば吊り尾根が見えてくると思うよ。ガスってなければ奥穂も見えるから。」
そう言って励ますが、現実はやはりつらい。
今日一番の頑張りどころが「今」である。

やがて右へと曲がると、吊り尾根が見えてきた。
いやが上にもテンションが上がる。
奥穂を指差しながら「明日はあのてっぺんだよ。」と言うと、歓び半分不安半分と言った表情のKMさん。
N君は「うぉーすっげー!」と歓喜の声。
対照的な二人ではあったが、本音を言えばリーダーとして連れて行く立場の自分はやや不安が大きかった。


涸沢ヒュッテがはっきりと目視できるポイントまで来た。
「もうすぐですね♪」と嬉しそうなKMさん。
彼女には申し訳なかったが「でもなぁ、ここからが遠いんだよ・・・。なかなか近づいてきたという実感が湧かないんだよ・・・。」
疲労感が増してしまうような返事だったが、事実この日も「まだかまだか」の愚痴をこぼしながらテン場を目指した自分だった。

本谷橋を出発して約2時間、やっとテン場へ到着した。
長かった・・・。
歳取ったなぁ・・・体力が落ちたなぁと、嫌でも実感した。

先ずは設営ポイントを各自で決めるが、ここは自分の出番だと思い、できるだけ設営が楽そうな場所を選んであげた。
自分はまぁ何とでもなるから、二人を優先的した。
受付を済ませ、設営開始。
とは言え、雪山でのテント設営が初めての二人にとってはいつもの手順とは行かない。
いくら跡地を利用するといっても「ならし」は必要だ。
自分が担いできたスコップでより丁寧に雪面をならしてから竹ペグをダウン。
ダウンの仕方も夏山とは大違いであり、幾つかやって見せてから各自に任せた。
自分の設営が遅れてしまったがそんなことはどうでもよい。
ここで三日間過ごすことになるわけだし、時間はかかっても丁寧にやるべきだ。

「さぁて、ゆっくり珈琲でも飲もうか♪」
夕食の前にちょっとだけくつろぐことも大切。
お湯を沸かしみんなで珈琲ブレイクとした。

直後、どうやら雨がポツリポツリと降り始めた。
夕食は各自で作るが、予定では一箇所に集まり作って食べることになっていた。
急遽各自がテントの中で作ることにした。
おしゃべりをしながら楽しいひとときを楽しみにしていたが、雨には勝てない。
明日の予定を確認し、それぞれのテントへと戻った。

さすがに腹が減った。
今夜のメニューは冷凍食品とレトルトを使った簡単メニューだが、冷凍食品を利用できるのも今回が最後になるだろう。
雪山とはいえ、春が終われば一気に気温も上がり保存にも限界が生じる。
野菜もそうは利用できなくなる。
登山では季節によってメニューが大きく変わってしまうのは常だ。

今年の夏山は何を作ろうかな。
今から楽しみだ。