今年で97歳なられたチェリスト、青木十郎氏が歩んで来た道程を、ご本人および関係者とのインタビューを主体に綴られた一冊。初めて青木氏の演奏を生で聞いたときの感動を思い出しました。常に探究心を忘れずに進化し続ける姿勢には頭が下がります。
その生き様を始め、「アンサンブル」という言葉はフランス語で調和という意味があるのに、合奏という翻訳が災いし、(縦の線を)合わせなくてはならないと思い込まれてしまうという実際的な指摘、「音楽性を身につけるには人間の心を極めること」「心を磨きなさい、技術だけを磨くと悲劇が起こる、心の中が丸見えになる」といった含蓄のある話まで多岐に渡ります。
「50、60歳は一生懸命勉強しなくちゃならない。そして70で花を咲かせたら良い」という話には、何か勇気づけられる思いがしました。氏のように倦まず弛まず進んで行きたいものです。