東の散歩道

B型ヴァイオリニストのマイペースライフ

''食''の映画術

2011年07月06日 21時57分00秒 | 
 昨日図書館で、映画ライター渡辺祥子さんによる「''食''の映画術」(SCREEN新書)という本を借りました。邦画、洋画を問わず、ここ数年の間に公開された映画の中で目にとまった食べ物や飲み物について書かれたエッセイ集です。
 ざっと目次を眺めたところ、見た映画はあまり入っていませんでしたが、それでも借りた理由はただ一つ。山響が出演している「おくりびと」について書かれていたからです。
 NKエージェント(納棺を執り行う会社)の社長に扮する山崎務が主人公にすすめるふぐの白子。あるいはクリスマスに会社で食べるフライドチキン。どちらも「美味い、困ったことに」とつぶやく社長が妙におかしい名(迷?)シーンです。渡辺さんによると、脚本の小山薫堂は、かつて大ブレイクしたテレビ番組「料理の鉄人」を手がけていたとか。料理の見せ方が巧みなのも納得がいきます。
 ところで、私がこれまで見た映画で印象的だった食はなんだろうと考えると、ちょっとすぐには思い浮かばないのです。一つだけパッと出るのは、これはアニメーションになりますが、「千と千尋の神隠し」で出て来た白米の握り飯(なんとなくおにぎりより握り飯と書きたくなる素朴さ、力強さがありました)。両親を豚に変えられ、わけのわからない状況に陥って絶望する千尋に、謎の少年ハクが手渡す握り飯です。最初はいらないと拒絶する千尋ですが、再度すすめられて泣きながら食べるシーン。生きることと食の切り離せない関係が感じられます。
 一方、子供のころ繰り返し読んだ児童文学にでてきた食は、これはもう、次々と思い浮かびます。大好きな「大きな森の小さな家」のシリーズでは、豚を燻してつくるベーコンに始まり様々な料理が登場しますし、ミヒャエル・エンデの「モモ」で、主人公がふるまわれた「食べるほどに元気がでる」パンやホットチョコレートも素晴らしく美味しそうでした。他にもメアリーポピンズやナルニア国物語のシリーズなど(なんだかファンタジーが多いですね)きりがありません。「'食''の児童文学術」という本が書けそうなくらいです。
 児童文学の食がこんなに印象に残っているのは、作者がかなり心がけて書いているというのもあると思いますが、まだ柔らかいアタマを使って存分に想像力を働かせているというのも大きな要因でしょう。全て見せてしまう映画で印象深い食を演出するには、よほどその食に意味を持たせるか、かなりの工夫が必要なように思います。


 
コメント
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