自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ヤマトシジミ,蛹化へ。そして羽化へ(2)

2013-09-30 | ヤマトシジミ

9月29日(日)。ポットに植えたカタバミにいた幼虫は,いったん地面に降りてポットの周辺を回り始めました。しばらくしてそこで静止。

時間が経って見ると,地面すれすれに伸びた葉に付いていました。

さらに時間が経って,もう一度見てみると,動きがありました。頭を出して,なにならやっている様子。間違いなくこれは絹糸を出しているのです。からだを固定するために,どの個体もするのと同じように淡々とその動きを繰り返している最中でした。

下向きの姿勢で。 

からだを上方向に大きく伸ばして。このとき,タイムングよく口から出される糸を写すことができました。ラッキー! 頭から垂直に糸が降りているのも見えます。 

糸を紡ぎ出しているとき,びっくりすることを発見しました。ファインダーを覗いていて,偶然尾先付近を見たときのこと。二つの白い突起状のものがピクリ,ピクリと体内から出ては入り,入っては出て,この繰り返しが続いたのでした。突起の先には棘が何本か付いていて,イソギンチャクのように見えました。いったいあれは何だったのか,あの動きは何だったのか,今もなおふしぎでしかたありません。

終わると,そのあとには糸が残りました。幼虫は静かに休んでいます。このまま前蛹になるのです。下写真は,上の写真でいえば反対側,つまり向こう側から写したものです。

ポットに植えたカタバミの根元付近に,この個体が見えます。

一日も経てば蛹に変化しているでしょう。1cmの世界の出来事です。

 


ヤマトシジミ,蛹化へ。そして羽化へ(1)

2013-09-29 | ヤマトシジミ

ヤマトシジミの幼虫はほんとうに目立ちません。カタバミにいるのを探し当てるのは相当に苦労します。成虫がたくさん舞うことを思えば,幼虫だって相当数いるはずなのに,なかなか見つかりません。

わたしは今,卵が孵化した時点から幼虫を飼っています。それが成虫になるまでをたどろうと思っているのです。これまでにも羽化場面を撮影済みですが,まだ,記事としてはまとめ切れていません。まとめないままに,別個体で蛹化への姿をご紹介することにします。次々に変化が現れたり,発見があったりするので,記事内容の生じた月日と記事アップ日とが時には大幅に前後してしまうことを,ご了解ください。

昨日,つまり9月28日(土)のこと。ポットに植えたカタバミから降りて,飼育箱の中を歩き始めました。体長1cm。これはもう,蛹化を間近にした行動に違いありません。

それで,台に載せて至近距離から撮影することにしました。じつは,この幼虫は蓑の傘を頭から被ったような姿をしていて,頭がなかなかうまく観察できません。動きはたいてい緩慢で,観察のタイミングをつかむのはかなり困難を極めます。

下写真のように頭が見えるのは,珍しいほどです。 

歩いていると思うと,途端に頭を蓑の中に入れて静止します。こういうしくみは,頭を保護するのにきっと役立っているのでしょう。 胸脚が6本揃ってすっきり見えます。カタバミで生活しているときは,葉や茎に取り付いているので,こうしたからだの様子を窺い知ることはまずできません。

こうしてこの日の撮影で,からだのしくみについていくつか合点できたのでした。

できればカタバミで蛹化してほしいので,ポットに戻して成り行きを観察することにします。  

 


ジャコウアゲハ観察記(その278)

2013-09-29 | ジャコウアゲハ

接写撮影をしていると,「ほほう!」と感心をし,合点もする場面によく出合います。「なるほど,そんなふうになっているのか」という,驚きなり発見なりを体感したときの味わいとでもいえるでしょうか。

最近では,羽化の瞬間を待ちながら,うんと近づいて蛹の殻のその奥を観察していて,ここまで透き通ってはじめて羽化の準備が整うのだなと思ったときなど,その例です。成虫の体表と,殻との間に空気層ができて,口吻や脚,触覚,それに複眼が確認できるようになります。

体毛がはっきり見えるようになります。それはまた,観察者にとってはそうならなくては羽化が始まらない目安にもなります。

間もなく羽化だなと予感したときでも,2,3時間目を向けて待ち続けなくてはならない,そのようなことはいくらでもあります。いのちを巡る変化は,そう簡単に単純に訪れるものではないということでしょう。

それゆえに,ただひたすら待つ続け,タイミングよく撮影できたときは,アゲハのいのちに付き合えてなんだかハッピーな気持ちになります。充実感がジワーッと広がります。

この日,誕生の一瞬を見るのに結局2時間じっと待ったのでした。

 


オオバコの分布拡大作戦 ~大山登山道の例~

2013-09-28 | 植物

オオバコは人里植物のひとつです。人間の生活の営みと合わせるようにして,分布範囲を形成し,広げていきます。人との縁が切っても切れない草という,ふしぎで,おかしな植物です。それなら,人類史で定住生活を始める前はオオバコとしてはどのようにして生息地を得,維持・拡大しようとしてきたのか,それはわたしの想像力を超えています。

ところで,人の歩くところ,行くところに生える術を身につけているのが,この植物らしい点です。人でなくても,動物でもよいのです。その術とは,秋に熟する“引っ付き虫”と似た戦略です。種子が熟すと,水分が付いて濡れたときに表面に粘着力が現れるのです。すこし専門的なことばを使うと,ゼラチン質のゲルにまとわれるということになります。すると,たとえば人間がその場所を通るときに靴に付着する,動物ならからだのどこかにくっ付く,このようにして離れたところに運ばれていくわけです。

この巧妙な謎は,熟したタネを水に浸して指先で摘まむようにして触ると,納得できる事実です。はっきりぬるっとします。オオバコは大した戦略を持っているといえます。人間がよく歩く範囲は背の高い草が生えてこないところです。そこでならオオバコはずんぐりした茎を地面にへばりつけ生きていけます。どんなに強く踏まれようと,次から次へと葉を出し続けるしくみを発達させてきたからです。

里を離れた峠でも,山道でもどんどん増えていきます。そこは今も人間が通っているか,かつて通っていたことを物語っています。逆にオオバコが生えている場所は,今はいくらひっそりしていても人間の匂いがする場所,あるいは昔,人間の匂いがしていた場所ということができます。

大山に登ったときも,そのことを強く感じました。登山口にはたくさんのオオバコが生えていました。

そこを過ぎると,姿があまり目立ちません。しかし,2合目を過ぎた辺りの夏山登山道にも,ちゃんと生えています。ブナの根元に! ただし,よほど注意深く観察してみないとわからないほどです。

これから先,どうなるかわかりません。気温など生育環境との関係で,そうそう高いところにまでは分布を広げないかもしれません。これまでの状況が目立たないほどですから。

植物の植生については,考え始めると,奥深いものがあります。わたしのような素人には見えない世界が広がっています。それでも,持ち合わせの知識で合点しようとする知的作業にはおもしろさが伴ないます。ついつい考えることが増えます。 

 


ジャコウアゲハ観察記(その277)

2013-09-27 | ジャコウアゲハ

昆虫を撮ることは,いのちを記録することだと感じています。変化を撮ることは,行動を見つめることにつながっていると思っています。「こんなふうな場面が撮れたらいいな」と思っていて,そのとおりになったら,なんとハッピーなことでしょうか。充実感を感じた撮影場面をご紹介しましょう。

一枚の葉に卵が5個。行儀よく並んだこれらの卵はきっと同じときに,同じ成虫によって産み付けられたものだろうと思い,孵化を確認しておくことにしました。

発見して一週間。孵化が間近に迫ってくると,すこしずつ卵が変色してきました。赤みが濃さを増して黒っぽくなり,中の幼虫の頭がうっすらと確認できるまでになったのです。経験的に,どのくらいで孵化が始まるかおおよその見当はつきます。 

ときどき様子を見ながら待つと,やがて一つ目の卵(右端)で殻に穴を開ける作業が始まりました。作業はゆっくり進んでいきます。それとともに穴が広がっていきます。それと同時に,他の卵でも殻を破る動きが見え始めました。この分だと,連続して孵化が観察できるように思われました。

間もなくはじめの一匹が頭を出しました。ついに誕生したのです。

その後,全身が出てきました。外気に当たり,しばらく休んでいました。この間に,隣りでは二つ目の幼虫が穴を開け,間もなく出そうになりました。 

これが誕生すると,また隣りの三つ目の幼虫が出始めました。 

そして,残りの2体はほぼ同時に出たといえるほどのタイミングで誕生したのです。

それぞれの幼虫は,誕生後,向きを変えてそれまで入っていた殻に向かいました。それを餌にするために,です。母親から送られた上等のタンパク源なのです。揃ってそれを食べる光景は,なんとも見事な絵になっていました。 

結局,五匹は同じ母からいのちを授かったとみていいでしょう。これほど誕生の時が一致しているのは,スゴイの一言に尽きます。見応え,観察応えがありました。 

 


大山へ

2013-09-26 | 日記

9月26日(木)。晴れ。風が強く吹き,雲が激しく流れる一日でした。

久し振りに伯耆大山に登ってきました。早朝に家を妻とふたりで出発。中国道・米子道を通って登山口へ。午前10時,山頂弥山(標高1710.6m)を目指して登山開始。

森林限界まではブナを中心とした落葉樹が林立しています。日が差し込むものの,風が強くて木の葉が音を立ててわさわさと騒ぎ続けます。年齢を考えてゆっくりゆっくり歩を進めました。

木や鳥が四季の変化を感じさせてくれました。シジュウガラ(下写真中の矢印)やヤマガラが傍にやって来ました。

ナナカマドの真っ赤な実。

なにか名前のわからない木の実がいろいろ。黒やら青やら。自分の存在を色で主張して,鳥に見つけて遠くに運んでほしいと願っているのです。小さくても,たくさんの実があると,離れたところからでも割合見つけやすいはず。

目玉のブナについては,下山時にたくさんの写真を撮りました。後日取り上げましょう。

登山者はそれほど多くはありませんでした。平日だからでしょう。年配者に混ざって,地元の小学5年生たちが登山遠足で登ったということで,下山してきました。

パノラマ風景が広がるようになると,自然の美しさがジーンと伝わってきました。海,海岸線,風車群,市街地,田園,山麓,牧場,原生林,雲の落とす影,……。目の前の空には,雲の層が横方向に一直線にできています。気温の境があるのでしょうか。雲ははげしく西に向かって流れていました。

寒さを感じるようになって,ジャンパーを着ました。景観をたのしみながら,一歩一歩前へ。

やがて9合目に。そこを過ぎた辺り一帯を占めるダイセンキャラボクの群生は見応えがありました。その間につくられた木道を通って,山頂へ。着いたのが午後1時前。3時間近くかかりました。ゆっくりペースの標準かと思われます。頂上はわたしたち夫婦だけ。

山頂小屋の温度計は6℃を指していました。そこで昼食。登山客は数人のグループのみ。昼食が終わると,早々と下山。尾根が風を遮った状態で,進行方向の右側(東)が強風,左側(西)が無風といった中を降りて行きました。すれ違う登山者はほとんどなし。

家に帰ったのが午後8時。心地よい疲れの感じられる,ハッピーな一日になりました。

 


ジャガイモの種子,予備的発芽実験の試み(又々々)

2013-09-26 | ジャガイモ

9月23日(月)。

ジャガイモの種がどんどん発芽を始めました。ざっと20ほどあるようです。これは冷蔵庫作戦の結果どころではなく,たぶん,秋を迎えて夏眠から覚めたことによるのでしょう。素焼きの植木鉢に蒔いていたところ,あちこちから林立する感じで芽生えています。

この分だと,まだまだ発芽生えが続き,最終的に発芽率はかなりの数値に達するのではないでしょうか。

よく観察すると,種子から根をほんのわずかに出しかけたものが見当たります。種が一箇所にかたまっていたので,そのとおりかたまって生えてきた芽生えがあります。

その横では,根に根毛をどっさり付けた芽生えも。

これはもう,ほんものの実生です。真正種子からの発芽ですね。農事試験場でも同じような作業を経て品種改良に向けたしごとが地道になされているのでしょう。

この先どうなるか,ますますわくわくしてきました。

 


カタバミの種子散布戦略

2013-09-25 | 植物

ヤマトシジミの幼虫の食草はカタバミです。カタバミをポット植えして,そこに幼虫をおき,観察しています。つい最近,カタバミの実のことで思いがけないことを発見しました。

これまで気づかず,ずいぶんあいまいな観察眼だったなと反省しています。

というのは,実の中の種子は熟すと勢いよく弾けて遠くに飛ぶことは十分わかっていたにもかかわらず,種子の特徴がまるでわかっていなかったことによります。じつは,機械的に弾けて散布するだけの戦略をとっているだけでなく,種子にエライソームを付けて,アリにも運ばせる策を講じているらしいのです。それを知り,「ほほう!」の気持ちです。

この戦略によって,最大1m程に飛んだ種は,さらに遠くに運ばれていくことになります。

ルーペで実を見ていて,種の周りに白い固形物が付着しているので,気になりました。どの種子にも付いています。「もしかするとエライオソーム成分かもしれない」と直感して調べました。すると,たしかにエライオソームとのこと。この成分は,カタクリ,スミレ,ホトケノザでよく知られています。

そこにあります。

ここにもあります。

 

トリミングして,種の姿を見ましょう。種子の長さは0.95mm。種皮の突起模様に特徴がありそうです。

アリの前に置くと,もちろん関心を示すでしょう。しかし,こんな小さな種子では,わたしにはちょっと実験ができそうにありません。

それはともかくとして,ヤマトシジミの幼虫は,こんなおまけ話をわたしにプレゼントしてくれたのです。 

 


ジャコウアゲハ観察記(その276)

2013-09-24 | ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハの羽化は何度も取り上げてきました。それは,わたしが被写体にしたい最高場面の一つであり,ジャコウアゲハ自体がたいへん魅力に富んだ昆虫であることによります。この記事で276話を数えることになりました。同じような記事内容はいくつもあったでしょうが,やっぱり飽きが来ないのですね。

『アゲハの庭園』は変化が毎日のように続きます。ウマノスズクサの脇に竹を立てておくと,蛹化するのにちょうどいい場所と思うようで,終齢幼虫がたくさん登ります。登って,そこで蛹化するのです。

その竹を適当な高さで切って,家に持ち込みます。それを写真に撮るわけです。これを繰り返していると,変化が気軽に観察できます。今では,以下2時間前には予知できます。蛹の色が変わってくるといいながらも,ルーペで見ると,変化が段階的に生じていることがわかります。最終段階になると「これで2時間以内には羽化だ」と予想がつくのです。

下写真は殻と,間もなく生まれてくる成虫との間に空気層ができています。滑らかに出てこれる準備がととのったと見分けられます。

レンズを覗いていると,ほんの数秒だけブルブルッと震える瞬間があります。ゆっくり出てくる成虫もあれば,スルスルッと流れるように出てくるものもあります。後者の場合は,シャッターチャンスを逃す恐れがあるので,要注意です。

出ながら,口吻を伸ばしたり元に戻したりします。

ギュッと縮まっていた翅はまだ縮まっています。翅脈に液がすこしずつ注ぎ込まれていきます。翅がきちんと開き切るということは飛翔能力を得るのに,とても大事な点です。 

この個体はゆっくり型でした。小さな殻に,こんな器官が詰まっていたのかと思えるほどの感慨を覚えます。眼も脚も口吻も触覚も,そして翅も。からだを覆う毛は,殻を通して見えていたとおりのものです。

この成虫が産んだ卵が,今秋,幼虫となり蛹となって越冬します。そうした変化を庭園で観察しながら,季節の移り変わりを感じることになります。 

 


クロアゲハ幼虫,4齢から5齢へ

2013-09-24 | クロアゲハ

クロアゲハの4齢幼虫が葉でじっとしていました。それが一日近くなのです。「ははーん,これは脱皮するな」と直感。葉ごと家の中に持ち込んで,カメラをセットして待ちました。

間もなく脱皮するに違いないことはわかるのですが,いつそれが始まるのやらちっとも予想がたちません。それで,まあいいやと思ってそのままにして,ときどき様子を見ることにしました。 

しばらく時間が経ってから確認しました。 すると,すでに脱皮を終えていました。そして,じっとしたままでした。口の周辺や脚の色合いがいかにも脱皮間もないことを物語っていました。

自分がまとっていた皮を食べるのはいつ頃か,気になってきました。食べ始めたのは,ずいぶん時間が経ってからでした。向きを変えて,「食べるぞ!」という構えになりました。 

食べかけると,大した勢いで口にしているように思えました。動きが速いのです。 

どんどん食べて,とうとう食べ尽くしました。皮をも無駄にしない食性に,頭が下がります。  

そのあと,また元の向きになって,しばらく休んでいました。 

これで終齢幼虫に脱皮しました。さいごの幼虫期は食欲が旺盛で,もりもり食べます。それにともなって,大きさがぐんぐん大きくなります。これが蛹になるときも見たいですね。変化はとにかく,刺激的です。

いつか脱皮最中のすがたをばっちり撮りたいと願っています。しかし,脱皮直前の特徴ある兆候がまだ見えないままです。まだまだ夢でしょう。