佐々木崑さんの著書に『生命の誕生 ~昆虫・小動物の世界~』があります。初版は1978年(昭和53年)5月3日出版ですから,もう35年前の本です。昆虫を含めて身近な小動物の誕生とその直後の瞬間をとらえた労作で,わたしは管理職時代も含め,授業でずいぶん使わせていただきました。誕生物語がもうたっくさん,簡単な解説付きで取り上げられており,さらに写真が刺激的なのです。
例えば,カメムシやミミズ,ナメクジ,カタツムリ,テントウムシなどはわたしの目を引き付けてくれます。
この本を見るたびに,「こんなに没入できる世界にいられて,あたらしいいのちとふれ合うなんて,なんてすてきな生き方なのだろう」と思ったものです。足元にも及ばない話ですが,近頃のわたしは,なんだか佐々木さんのこころにすこし近づけたかなというような気がしています。
当時のカメラ・印刷技術と今のものとではずいぶんちがっていて当たり前です。しかし,今の感覚から見て画質は劣っていても,写真に賭ける熱・夢が見事に凝縮されているのです。
わたしはここのところ集中してアゲハ類の孵化を追ってきました。誕生の一瞬をとらえたいという夢を持ちながら。そんなひとコマをご紹介しましょう。
殻の一部を中から食い破って出てきます。
全身が出てきました。こんなからだが準備されていたのです。卵は直径1mm。
出終わると,幼虫は殻を食べます。
変化にはいのちの神秘がつきものです。見ていて,ちっとも飽きることはありません。佐々木さんに深謝。