自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

久々、ワタ(靭皮)紙づくり(6)

2022-03-28 | 野草紙

漉く紙のサイズはA4。使う繊維は洋綿と和綿。

まず洋綿から。厚みは葉書程度とします。粘剤を加えた紙料を漉き枠に流し込みます。その後すぐに枠の左右を両手でつかんで,軽く揺すります。これは紙の厚みを均一に整えるのにとても大事な作業です。職人は流し漉きをするので,漉き枠にある紙料を前後にしっかりと揺すります。紙料をすくうたびに同じ作業を繰り返します。溜め漉きでの作業もこれと同じ意味を持っています。

あとは水切り。そして乾燥です。A4サイズぐらいになると,天日干しがいちばんです。というのは,アイロンのような小さな乾燥道具では乾きムラが出てしまいフラットに仕上げるのがむずかしいからです。それでもここでは,早く紙にしたいのでアイロンを使います。

 

まだ湿っています。湿紙の状態です。

 

乾燥したら本に挟んで重しをし,できるだけフラットな面に仕上がるようにします。結果はやはり周囲に起伏ができてしまいました。下にある白い紙はA4サイズのコピー紙です。

 

次回は和綿について記事にします。

 


久々、ワタ(靭皮)紙づくり(5)

2022-03-27 | 野草紙

いよいよ紙漉きの工程を迎えました。使うのは洋綿の靭皮繊維。サイズはまず葉書大。漉き舟に漉き枠を固定して,水を張り,紙料を流し込みます。溜め漉きです。

 

水を抜きました。

 

木枠を取って,湿紙をネットで覆います。

 

水切りをしたあとの様子です。

 

このあと,新聞紙でできるだけ水を除いてアイロンで乾かしました。

 

これで葉書が出来上がりました。なんとか合格点がいただけるでしょうか。葉書はプレゼント用に使います。

 


久々、ワタ(靭皮)紙づくり(4)

2022-02-14 | 野草紙

今度は和綿の靭皮繊維を取り出します。

とことんきれいに水洗いして表皮を取り除きました。

 

表皮はほとんど見えません。

 

ミキサーに入れて離解・叩解。そのあと水で洗います。

 

取り出した紙料です。これで洋綿・和綿の紙料が揃いました。

 

あとは漉くだけ。そのために粘剤をつくりました。

 


久々、ワタ(靭皮)紙づくり(3)

2022-02-05 | 野草紙

煮終わったワタの靭皮です。

 

これを簡単に水洗いします。

 

問題は表皮です。これは紙料には不純物です。できるだけ除くのが望ましいので,ふつうはアルカリ剤で煮る前に蒸してから除去します。しかし,その手間がたいへん。それで,今回は表皮ごと離解・叩解することにしました。結果,表皮を繊維ごとミキサーに入れ,ごく小さくしたうえで流し去る必要が出て来ます。

 

細かくなった繊維を裏漉し器に入れてきれいに水で洗います。不純物をできるだけ流し去るようにします。

 

こうして取り出した繊維が下写真のもの。これが紙料となります。

 

あとは漉く工程になります。

 


久々、ワタ(靭皮)紙づくり(2)

2022-02-03 | 野草紙

1月28日(金)。洋綿・和綿の靭皮が揃ったので煮熟しました。

水の入った寸胴鍋に入れて,ガス点火。午前10時30分。二つの材料が混ざらないように,それぞれをネットに入れています。

 

沸騰中です。

 

ここにアルカリ剤(セスキ炭酸ソーダ)を入れました。

 

途中何度かアルカリ剤を少量入れました。紙には不要な不純物が水に溶けて,水がずいぶん汚れています。

 

火を止めたのが午後3時30分。最初からだと5時間かかっています。

 


久々、ワタ(靭皮)紙づくり(1)

2022-02-01 | 野草紙

昨年試行錯誤を繰り返して,実用に耐えるコットン紙をつくれるまでになりました。その道のりについては,ハードディスクのトラブルのために画像データが取り出せなくなり,詳述することができません。今のところはわたしの頭に記憶として刻まれているだけです。

ところで最近になって,コットンで紙をつくるのでなくワタの靭皮繊維を材料に紙漉きをしたくなりました。ワタの茎は最後には木質化して木のようになります。それで,ワタの木と呼びます。ナスの木という表現と似ています。草にもかかわらず木の特徴とそっくりになり,外側には丈夫な靭皮が成長します。

その繊維を集めて紙料にしようというわけです。もう何年も前にそれから紙を作った経験があります。もちろん紙ができました。今回は前より上質の紙をつくりたいと思うのです。それも最終的にはA4サイズのものができたらいうことなしです。

知人が田でコットンを栽培しています。1月はその茎を処分する時期です。それを焼却するのはもったいないので,ほんの一部もらい受けました。洋綿と和綿の両方です。

茎から靭皮を剥ぎます。繊維はとくべつ強い感じはしませんが,ある程度は強さが感じられるといった程度です。なお,洋綿と和綿の違いはわたしにはわかりません。わからないながらも,念のため別々に扱うことにしました。下写真は洋綿の木です。ワタはオクラやトロロアオイと同じアオイ科に属する植物です。皮を剥いだときの様子が似通っています。

 

こんなに集まりました。

 

束にしました。

 

表皮が付いたままなのですが,これを取り除くのは手間のいる作業になるのでこのまま煮ることにします。煮終わってから除去すればよいでしょう。

 


「コットン紙,できませんか」(14)

2021-06-16 | 野草紙

一般の方がコットン紙を漉こうと思ったら,繊維を入手することはむずかしいでしょうか。いいえ,そんなことはありません。コットン繊維なら100均に行けば手に入ります。脱脂綿を買えばよいのです。しかも,110円(税込み)なのですから,なんともありがたい限り。

ただ,今回は実証実験です。ふつう,紙をつくるそのこと自体が目的になってはおもしろくないでしょう。

漉いた紙で何をするか,紙を何に使うか,だからどんなサイズの紙を漉くか,そんなことをあらかじめ考えておくからこそたのしさが増幅するのだと思います。

100均のコットンはカット綿で,一辺が1.5cmの正方形に整えられています。それに,製造段階できれいな層(繊維の向きが同一方向)になっており,繊維が複雑に絡み合っていないためにそのままでは紙にはできません。とにかく,ごちゃ混ぜにして繊維同士を絡み合わせなくてはならないのです。

 

そうするためにはミキサーが必要になります。作業はとても簡単です。

 

あとは普通に紙を漉いて。

 

 

水切りをして,乾かすだけ。

 

たぶん,1時間半コースでハガキ一枚はつくれるでしょう。試してみてください。脱脂綿をどのくらい使うかについては,体験してノウハウをつかんでください。下写真のコットン紙の汚れは,乾燥時に布の汚れがついてしまったからです。

 

コットン紙は和紙ならぬ非木材紙。わたしのカテゴリーからすれば野草紙の一つです。牛乳パックからつくる再生紙は木材紙。わざわざ「牛乳パック和紙」と呼ぶ人がありますが,それは大間違い。両方とも和紙職人さんが漉いたとしても和紙とはいいません(実際にその事例あり)。

コットンを材料にした非木材紙づくりの試みが広がればすてきなのですが……。本質的な取組をとおして,営々と続く人間の知恵や生産的活動に思いをはせていきたいものです。今夏,勤務ミュージアムで「コットン紙を漉こう」と銘打ったワークショップを開催する予定です。もしかすると,全国でも初めての試みかもしれません。

 


「コットン紙,できませんか」(13)

2021-06-14 | 野草紙

これまでコットン紙づくりで,ずいぶん苦労を重ねた気がします。コットン繊維のように頼りなげな細いセルロース繊維から,ほんとうにたやすく紙が漉けるか,まずそこの気持ちを解消するのが関門です。

ところで,コットン紙はヨーロッパの伝統的な紙でもあり,インドでは手づくりをしているということで,ともによく知られています。前者は高度な製紙技術によっており,後者はとても原初的な技法で漉かれています。

インドのコットン紙づくり技術は,わたしの紙づくりに大いに役立ちました。ただ写真をとおしてだけなのですが,じつによく理解できたのです。なにしろ布の端切れや古着を裁断し,繊維をどろどろにして紙の材料にするのですから。それもとても大雑把で,ドカーンとしたつくり方なのです。

はじめに書いた関門の話に戻りますが,先入観を取っ払って取り組むことが大切だとわかりました。コットン繊維はもともと塊りのようになっているので,一本一本の繊維を水の中で均一に分散させようとは考える必要なし,です。塊りそのものが均一に散らばっていたらよし,と思っておきます。そうすることで,気楽に漉けます。

コットン紙づくりの依頼者Mさんから,追加分のコットン繊維をたくさんいただきました。この繊維には油質成分が含まれているとはいえ,紙には不必要なリグニンのような成分はない(あってもごくわずか)と考えておいてよいでしょう。割り切ってそう考えれば,このまま紙料(パルプ)として使えます。煮る時間が省けるので,とても楽! なお,下写真はいただいたコットンのうちの和綿です。和綿は繊維が短いため扱いやすく,紙漉きに向いています。

 

さっそくつくってみました。ミキサーで叩解します。もちろん程々に離解工程も重なっています。

 

繊維を水に入れて粘剤を加えます。手でかき回します。すると小さなダマがきれいに分散した状態になります。

 

これを漉き枠に流し込んで漉きます。そしてアイロンを使って乾かします。これで完成です。ばっちりうまくいきました。

 

時間が意外とかかるのは水切りと乾燥工程です。天日で気長にすることを思うと,ぜいたくないい方になりますが,全工程からみればそこを根気よくするのが大事だと感じます。

 


「コットン紙,できませんか」(12)

2021-05-12 | 野草紙

今回は追加版です。

これまでときどきやって来た,いたって簡単な紙漉き方法でコットン紙を漉きました。その方法は漉き舟(バット)なしに漉くというもの。水平な面があれば,コンクリート面のうえでも石の上でも大丈夫。ただし,そこにはある仕掛けがあります。それは粘剤を多めに使うことです。水なしでも,枠があれば紙料が均一に広がります。水切りに多少時間がかかるのでムラのない紙が漉けるというわけです。

下写真がセットし終わったところです。

 

木枠内にコットン100%の紙料を注ぎ込みました。水がゆっくり滴り落ちます。紙料は均一に広がっているのがわかります。

 

木枠を外しました。このまま斜めに立てかけておくと水は自然に流れ落ちます。

 

コットン90%・コウゾ10%の紙料も同じようにして湿紙にしました。水切りは板でなく,プラスチックを使用。これも簡易法のうちです。

 

立てかけておいて乾けば完成! 先に書いたとおり,はじめは日なた,あとは日陰で乾かします。しばらく経ってから,コットン100%の湿紙を透かしてみると……。繊維は均一です。

 


「コットン紙,できませんか」(11)

2021-05-11 | 野草紙

今回は自然乾燥の結果についての報告です。

自然乾燥ではステンレス金網の上に,ソフトチュールにのったコットン湿紙をおきます。はじめは日に当て,おしまいは風通しのよい日陰におくので,今の気温だと2,3日かかります。日向で一気に乾かすと,乾きムラが顕著に出てチュールごと紙が剥がれることがあります。剥がれると,紙が波打った状態になります。こうなると,いくら平らにしようとしても無理です。

したがって,徐々に無理なく乾かすほかありません。「はじめは日なた,あと日陰で」がポイントです。夏だと半日ぐらいで乾きます。

下写真がほぼ乾き終わった紙です。

 

こんな感じで乾かしました。

 

出来上がった紙が下のものです(右がコットン:コウゾ=9:1,左がコットン100%)。

 

結局,乾燥に要した日数は二日間でした。