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自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

野草紙づくりのサポート(7)

2024-10-14 | 野草紙

2時間目。実際に紙づくりを実演。できるだけ子どもたちも加われるように配慮。この経験が以後に生きていきますから。

初めに,そして途中にも必要なやり取りが欠かせません。留意しておいた主なポイントは以下のものです。

・紙づくりに糊はいるかな。

・粘剤を入れるのは何のためかな。入れる粘剤の量はどのくらいなよいかな。

・昔はミキサーはなかった。どうやって繊維を出していたのかな。

・ミキサーはかき混ぜる器具。使いようによっては危険。使うときに気をつけなくてはいけない点は何かな。

・ミキサーに入れる草の長さ・量,水はどのくらいがよいのかな。

・アイロンで乾かすときに気をつけなくてはいけない点は何かな。水切りはどの程度,どうやって行うのかな。

・強い紙にするにはどうすればよいかな。

やっぱり粘剤の意味がむずかしいのかな。この段階でも,糊が要るという声がありましたから。ススキの繊維を水に溶き,繊維の塊“ダマ”の話をしました。その後粘剤を入れ,手を入れて手触りを感じてもらいました。その中で出てきた声が「繊維を均一にするってことやね」でした。そんなことばが出てくるとは! りっぱ,りっぱ。下写真はかつて粘剤に使われた植物サネカズラを触っている場面。

 

これはミキサーの使い方を説明しているところです。

 

紙料を水に溶いて,「さあ,漉きますよ」。

 

溜漉き法で漉いているところです。

 

漉いた湿紙をアイロンで乾燥。交代で作業。

 

出来上がったススキ紙を指で弾いて音を聞いています。均質で腰の強い紙ができました。

 

サポートはこれでおしまいです。おしまいに代表の子どもが丁寧に,こころを込めてお礼を述べてくれました。聞いていて,とっさにことばを選ぶ力の大きさを感じました。既製品でない,自分色のことばがきらり。わたしこそよき出会いに感謝,です。

2時間で必要なことは伝えられたのではないかと思っています。あとは自力で紙を漉いて知力を鍛え,知恵を蓄えればよいのです。たのしみ,たのしみ。

 

(付記)本記事中の写真は一部を除きすべて学校提供。ありがとうございました。


野草紙づくりのサポート(6)

2024-10-13 | 野草紙

サポートの日がやって来ました。

4年生。9人。小規模校の問題がとやかくいわれますが,わたしにはうらやましい限りの環境です。適切な導きがあれば,子らは自分色を屈託なく出します。学びの場でそれを認め,お互いに支え合うダイナミックさがくっきり現れ出ます。自分色が薄まる,埋没する,そんなことがない関係性が保てます。もちろん,関係性に関しては規模の大きな学校と比べて解決すべき課題,解決できそうもない課題が横たわっています。そうしたことを差し引いて,今回紙づくり支援という点ですてきな子らとの出会いをたのしめました。

自分色がことばとか表情でごく自然に出てくると,自ずと呼応がリズミカルになります。応答関係が遠慮なく進むと,発展的なことばや問いが生まれます。まさに,この流れに沿って学びの深さが感じとれたのでした。

時間は2時間。1時間目はあらかじめ知らせてもらっていた子どもたちの質問に答えていきました。2時間目は実際に紙漉き作業をしました(次回の記事)。

その1時間目。以下は子どもたちの質問項目です(筆者,固有名詞をアルファベット表記に変更)。

 ①紙作りの時、どのような気持ちでしていますか?

 ②紙作りのコツは何ですか?

 ③特産品(S大根、万願寺甘とう、Oみかん、パパレモン、ブルーベリー、ハーブ)で紙は作れるでしょうか?

 ④色が付いた紙を作るには、どうしたらいいですか?

 ⑤先生にとって、和紙・野草紙の魅力は何ですか?

 ⑥どうして紙を作ろうと思ったのですか?

 ⑦どうしたら、穴の空かない紙が作れますか?

 ⑧どうしたら、薄くてやぶれにくい紙を作れるのですか?

 ⑨海藻から紙を作りたいです。どうしたら、海藻から紙ができますか?

 ⑩どうしたら、曲げられる紙が作れますか?

 ⑪どうしたら、まっすぐな紙が作れますか?

これらについて,あらかじめ必要な程度で参考資料・実物を準備。それらを見て触ってもらいながら,話を進めていきました。

 

教室にも参考資料が置かれていました。海岸植物をいくつも漉いて天日で乾かした実物の紙が板の上に張り付いたままのものです。黒板にはその写真も。紙にはいくつか穴ができていました。質問の⑦はこのことです。もちろん,陸上植物なので,繊維をうまく取り出せば穴の開かない紙がつくれます。はじめは苦労して,そして失敗。それを成功に生かせばよいわけです。その経験が体験となって学びを充実させていきます。

 

問いをもって,ものごとを解き明かそうと思えば,強烈な印象が残ります。⑨は海岸沿いで暮らす子どもならではの疑問です。水の中に生える草と陸の草とはからだのつくりがひどく異なっています。それを説明して「海苔をつくるのは紙をつくるのと同じ方法なんだよ。だから,食べている海苔以上によい紙はわたしたちには漉けないんだ」,こういったら,「じゃ,ぼくらは海苔の紙を食べているんだね」といったのです。まさにそのとおり!

 

わたしの提示する実物・話題に終始子らは敏感に反応。こちらとしても,よい出会いをできるだけ盛り上げたくなる心持ちになれました。感謝。子どもの育ちを実感した思いでした。

 

 

さて,わたしの紙づくりの行き着く先は,素材は何であれ「つくった紙を何に使うのか」という視点です。平たくいえば,「漉いて何をつくりたいの?」という点に収れんしていきます。何しろ,草はことごとく紙になるのですから(とはいえ,草それぞれによっていろんな性質をもつ,つまり自分色を有した紙になっていくのですが)「○○を作りたいから,△△の素材を使ってみたい」「○○をつくりたいけど。△△の繊維は使えるのかな」といった目的意識なり問題意識なりが欠かせないと思うのです。この意識が学びを貫いて膨らんでいくことがたいせつです。

そのうえで子どもの目線に立って学びの道筋を拓いていかなければなりません。手応えのありそうな目標,ワクワク感の湧き上がる目標がなくちゃ。結果が願いを満たせたら,学びの質が深まるでしょう。下写真には担任の先生の机が写っています。その位置から教育観が伝わって来そう。教室の前にあるのとでは意味がまったく違います。子どもが学びの主役なのですね。“教(授)室”を“学(習)室”へ,の発想です。ただ,この点については担任の先生とはまったく話していません。

 

この1時間,自分で口にするのは気が引けますが盛り上がった印象でした。子どもたちの学びの意欲をすこしは後押しできたように思えるのですが……。

 

(付記)本記事中の写真はすべて学校提供。ありがとうございます。

 


野草紙づくりのサポート(5)

2024-09-28 | 野草紙

おしまいは,アイロンを使った乾燥法の話をしましょう。

下写真の紙料はススキです。

 

この場合はステンレス網から湿紙を離す必要があります。そこで,固定式の網に変えて,下の木枠に取り外せる網か竹簾かを載せ,さらにその上にチュール布をおいてから漉きます。こうして漉いた湿紙の上にもチュール布を載せます。つまり湿紙はチュール布に挟まれ,サンドイッチ状になった状態です。

 

このまま水切り板で圧を加えて,できるだけ水を切っていきます。一気に水切りをすると湿紙が変形する恐れがあるので,じわりじわりと両手で力を加えます。これはふつうの場合。

今回は時間を節約するために万力を使用しました。

 

その後,新聞紙で水分をさらに除きます。新聞紙を交換しても湿らなくなればOK。あとはチュールを外して,布で挟み,アイロンがけをします。紙の腰を強くするには薄めた膠液を塗るのがお奨めです。

アイロンがけは乾きムラが出やすいので注意が要ります。ムラが出たまま放っておくと紙が反ります。これを防ぐために,乾いたと思ったら本に挟み,重しを載せておきます。そうすることで熱が紙全体に均一に行きわたることになります。結果,フラットな紙になります。下写真の紙の出来はまあまあです。

 

これでススキ紙の出来上がりです。

 


野草紙づくりのサポート(4)

2024-09-27 | 野草紙

ステンレス網の上で自然乾燥させたエノコログサ紙です。表側は圧が加わっていないので凹凸がはっきり見られます。こちらが裏面になります。

 

これを剝がします。剥がすのはむずかしくはありません。

 

これはトウモロコシ紙です。

 

これはススキ紙。

 

ひっくり返して表面を見ました。右上はトウモロコシ紙,左下はエノコログサ紙,中央はススキ紙です。

 

両面に圧を加えて表面を滑らかにすれば完成です。

 


野草紙づくりのサポート(3)

2024-09-26 | 野草紙

材料を煮終えたら,それを細かく砕きます。

理想的なのは力仕事で木槌で叩いて紙料(パルブ)を取り出すことです。手軽にやるのならミキサーを使います。ただ,ミキサーは短時間でかき混ぜることを主眼にした器具なので,限界を承知していないといけません。たくさんの材料を入れてミキサーの能力を超える使い方をしていると,オーバーヒートを起こしてしまいます。わたしのお奨めは材料が内部でダンスする程度,というものです。なお,ミキサーは使いようによってはとても危険なので,使用上の注意をしっかり伝えておくことがたいせつです。

これによって,紙料が取り出せたら,とにかくきれいに水洗いします。とことん洗います。

葉書サイズの紙を漉く場合,必要な量を団子状にしておいて,一つ分だけ水に溶きます。これに粘剤(ネリ)を加えて,紙料中の植物繊維が均等になるようにかき混ぜます。粘剤を入れ過ぎたら,(失敗ではありませんが)水が漉き枠から落ちるのに時間がかかります。

学校で紙づくりをする場合は,溜漉き法がよいでしょう。紙料を無駄なく使いきれます。流し漉き法は初心者にはむずかしく,慣れていないとたいへん。

漉き舟で漉き枠をセットします。

 

漉き枠の内に紙料を流し込みます。この写真はエノコログサの繊維です。

 

漉き枠を水から引き揚げて水切りをした後,上の枠を外します。

 

天日で自然乾燥する方法です。斜めにして水切りしながら乾かします。この状態の紙を“湿紙”と呼びます。

 

下写真の左はトウモロコシ,右はススキです。

 

9月とはいえ暑さの厳しい日だったので,4時間で乾きました。つづきは次回に。

 


野草紙づくりのサポート(2)

2024-09-25 | 野草紙

以下,紙づくり,わたしの手順です。

まず材料の採取からです。畑や道端など,ごく身近なところから採って来ました。

これを水洗い。写真の例はトウモロコシの苞葉です。

 

これをネットに入れて,鍋に入れます。そしてセスキ炭酸ソーダを適量入れました。液が黒っぽいのは先にエノコログサとススキを煮て,その液を再利用しているからです。

 

石は重しです。沸騰中,ネットが浮かんでこないように煮沸効率を考えています。この方法なら同時に三種の草を煮ることも可能です。

 

煮終わった材料です。

 

きれいに洗った後,ネットから材料を取り出しました。

 

とてもしなやかになっています。他の二種も同じように煮ます。ただ,からだが硬いので煮る時間が長くなるだけです。煮終わったら,同じように水洗い。揉み洗う要領で。

 

これで,この工程は終了です。

 


野草紙づくりのサポート(1)

2024-09-24 | 野草紙

つい先日,遠くの港町にある小学校から野草紙づくりについて教えてほしいと依頼を受けました。4年生の「総合的な学習の時間」のテーマとして紙づくりを取り上げ,海浜植物を使って作ったものの,期待したものができないという話でした。

わたしはフリーの身ですから,「お困りでしたら,いくらでもサポートさせていただきます,遠隔地であっても気遣いなしでお願いします」と伝えました。結局,お訪ねして子どもたちの作業の中で助言することになりました。いってみれば“紙づくりおじさん”になるわけです。

その後,子どもたちがこれまでに漉いた紙について,写真を送っていただき,それをとおして見える問題点を伝えておきました。

さて,せっかく行くのですから,わたしが漉いた紙を見てもらうことにしました。子どもの目線で考えると,葉書程度の大きさで,秋の素材を使ってみるのがよいだろうと思いました。それで,採取したのがエノコログサ,ススキ,トウモロコシの三種です。前の二つは茎と葉,トウモロコシは実を包んでいる苞葉です。

今回,紙をつくるにあたっての基本的な心得は以下のとおりです(主なもののみ)。

  • 木質化している(しかけている)硬い部分は使わない。(根元に近い部分を避ける)
  • 植物を煮る時間は硬めのものは4時間が目安。長くて6時間。(この例ではエノコログサ,ススキ)
  • 溜漉き法でつくる。(植物繊維を無駄なく利用できる)
  • 紙漉き道具が少ないときは,湿紙をアイロンで乾かす。(ただ,乾きムラが出ないように注意する)
  • お盆を過ぎると,自然乾燥に時間がかかるようになるのでアイロンを使うのがよい。

採取する植物の一番目はエノコログサ。

 

二番目はススキ。

 

おしまいは,畑のトウモロコシ。これがいちばん手軽。タイミングよく9月収穫用に晩生種を栽培していました。苞葉がしなやかなので2時間も煮れば大丈夫。

こうして三種の植物繊維を取り出しました。紙がつくれるかどうか,これは繊維が取り出せるかどうかにかかっています。とにかく繊維が取り出せさえすれば紙ができるのです。ということは,わたしの場合,今の段階で紙がもうできたといっても差し支えありません。

 


久々、ワタ(靭皮)紙づくり(6)

2022-03-28 | 野草紙

漉く紙のサイズはA4。使う繊維は洋綿と和綿。

まず洋綿から。厚みは葉書程度とします。粘剤を加えた紙料を漉き枠に流し込みます。その後すぐに枠の左右を両手でつかんで,軽く揺すります。これは紙の厚みを均一に整えるのにとても大事な作業です。職人は流し漉きをするので,漉き枠にある紙料を前後にしっかりと揺すります。紙料をすくうたびに同じ作業を繰り返します。溜め漉きでの作業もこれと同じ意味を持っています。

あとは水切り。そして乾燥です。A4サイズぐらいになると,天日干しがいちばんです。というのは,アイロンのような小さな乾燥道具では乾きムラが出てしまいフラットに仕上げるのがむずかしいからです。それでもここでは,早く紙にしたいのでアイロンを使います。

 

まだ湿っています。湿紙の状態です。

 

乾燥したら本に挟んで重しをし,できるだけフラットな面に仕上がるようにします。結果はやはり周囲に起伏ができてしまいました。下にある白い紙はA4サイズのコピー紙です。

 

次回は和綿について記事にします。

 


久々、ワタ(靭皮)紙づくり(5)

2022-03-27 | 野草紙

いよいよ紙漉きの工程を迎えました。使うのは洋綿の靭皮繊維。サイズはまず葉書大。漉き舟に漉き枠を固定して,水を張り,紙料を流し込みます。溜め漉きです。

 

水を抜きました。

 

木枠を取って,湿紙をネットで覆います。

 

水切りをしたあとの様子です。

 

このあと,新聞紙でできるだけ水を除いてアイロンで乾かしました。

 

これで葉書が出来上がりました。なんとか合格点がいただけるでしょうか。葉書はプレゼント用に使います。

 


久々、ワタ(靭皮)紙づくり(4)

2022-02-14 | 野草紙

今度は和綿の靭皮繊維を取り出します。

とことんきれいに水洗いして表皮を取り除きました。

 

表皮はほとんど見えません。

 

ミキサーに入れて離解・叩解。そのあと水で洗います。

 

取り出した紙料です。これで洋綿・和綿の紙料が揃いました。

 

あとは漉くだけ。そのために粘剤をつくりました。