自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

地域ミュージアムで考える(48)

2017-01-31 | 随想

三方晶系の結晶体の一つ,水晶型をした立体に地図を描き込むときがやって来ました。とうとう,という感じです。なんだか大げさないい方ですが,つくりづらかった工程を振り返れば,やっぱり難関,難敵の相手なのです。それで,そうやすやすとは着手できないでいました。

まず赤道を書き,その後陸地を記入。陸地を描く手はいつものようにカーボン紙を使った転写です。

 
それが終わると,陸地の色を緑と決めました。決めたら,さっさと色を付けていきました。


これでなんとか出来上がり。

 


あとは,赤道を着色して,そうして海を色付けすればよし,です。

 


海については,南半球だけをブルーで着色することに。変則的ですが,北半球側で素材の肌が見えるのもまたよし,と判断したからです。


水晶型地球がついに完成しました。取り掛かってから一カ月ほどは経ったでしょう。長さが70cm,中央部周囲一辺が20cmというサイズです。

 


両手で抱えて写真を撮ると……。

 


出来上がった今,「やったー!」「やれやれ」の気持ちです。今回はとくにこの気持ちが強くあります。さっそく展示物の仲間入りです。 

 


竹紙づくり(2)

2017-01-30 | 野草紙

繊維の長さ,太さ,それに色にメリハリを付けて紙をつくると,いろんな表情が見えてきておもしろくなります。一律同じような繊維だけでつくった紙には,均質感はあるのですが,手漉きのおもしろさ,素朴さが損なわれる場合があるように思います。

せっかくの機会なので,いくつかの試みをして,Mさんがどのように解釈なさるか,それをたのしみにしておこうと思い立ちました。この試みは次のとおりです。

  ① 繊維の色を見て,2種類に区分けする。

     ⇩  

  ② 量の多い褐色繊維については打解・叩解工程で3種類の紙料をつくる。

    量の少ない黒色繊維は1種類のままとする。

     ⇩

  ③ 試作紙をMさんに吟味してもらってから,必要な紙を漉く。

こうすることで,紙質に多様な表情が現れます。

下写真は色で分けた繊維です。褐色と黒とはっきり違いがわかります。黒い繊維は黒色腐朽菌が関係してできたものでしょう。


打解・叩解工程で使用した道具はミキサーです。今回は石臼を使った手作業はしませんでした。


得られた紙料はしたのものです。①~③褐色繊維で,細かな繊維から順に並べています。④は黒い繊維です。


次はいよいよ漉く工程になります。作業の実際については次回に取り上げます。 

 


地域ミュージアムで考える(47)

2017-01-29 | 随想

単純な立体地球をまだ完成させていなかったというのが四角錐。いうなれば“ピラミッド型”です。厚手の紙でモビーール用のものを作っていたものの,段ボール製のものは作っていませんでした。

四角錐を2種つくることに。底面の正方形がそれぞれ一辺24cmと30cm。まず24cmのものから取りかかりました。

のりしろをつくり,折り目を付けておきます。


先に三角形部分を接着します。クリップを使えば簡単。 

 


接着を終えると,底面部分と合わせます。 


正方形の穴を開けた段ボールに,立体を逆さにして立てます。ボンドを付けてから重しを載せ,固定します。 


かなり固定できると,元の格好に戻し,上からテーブルで圧を加えます。 

 
こうしてピラミッド型の四角錐が2つ完成しました。これに地図を描きました。


仕上がった作品が下写真の立体です。

 

  
ものをつくるというのは,大層ゆかいで,おもしろいものです。

 


カラスガイをとりに

2017-01-28 | 生物

ミュージアムには郷土の魚を展示飼育しているコーナーがあります。その中にタナゴを飼っていて,タナゴと共生関係にあるカラスガイも“います”。 “います”とカッコ付きにしたのは,いないときもあるという意味です。今はいません。

夏季,貝類は水温の上昇に適応することがたいへんむずかしく,カラスガイも同様です。それで,夏を越すとカラスガイが全滅して,タナゴがいくぶん寂しそうな雰囲気になります。とはいえ,水量の多い夏にカラスガイをとって来るのはたいへん。結局,冬にとるということになります。

さて,先日,そのカラスガイをとりに出かけました。行先は水量の減った小川。両岸には雪がまだ残り,肌寒い風が吹いていました。水は雪解け水で澄み切っていて,ヒヤッとします。手をその中に入れて,カラスガイをとるのです。

水深がわずか10cm。貝はあちこちにごろごろ。


とり上げると,足はしばらく出たまま。殻の中になかなか入っていきません。寒いので,動きが緩慢なのでしょう。 

 
カラスガイがかたまって棲息しているところには,ほんとうにかたまっていました。下写真は50cm四方を撮っていますが,その範囲に10個以上の貝がいました。

 
必要な数は8個と決めていたので,それ以上はとりませんでした。

このとき,思いがけない収穫がありました。大きなシジミが目に付いたので,泥を除いてみると,なんとシジミがどっさり!

 
ほんとうに大きいのでびっくりしました。いくつかは展示用に持ち帰りましたが,試食用としては一切採取しませんでした。いくら小川のものとはいえ,体内にどんな成分が蓄積されているかわかりません。近くの人が食用にしているならともかくとして,こういうときはそれ以上立ち入らないのが賢明でしょう。

ここは自然がまだまだ残されているのです。うれしい限り。


これで,ミュージアムの展示コーナーがすこしだけ賑やかになります。

 


ロウバイ,花と昆虫(3)

2017-01-27 | ロウバイ

1月15日(日)。雪。今冬最大の寒波到来。庭の積雪量を計ると15cm。その後止んだりまた降ったり。しばらくしてまた計ると18cmにも。ロウバイの花は高ーい雪帽子を被っていました。この寒さでは当分昆虫を観察できそうにありません。


1月24日(火)。曇りときどき雪。午後4時。気温2.4℃。この時間帯,雪がちらついていました。よもや昆虫は来ていないだろうと思いつつ,とりあえず確かめるつもりで見に行きました。すると,なんとハナバエのなかまが一匹! ちょうど花から出て来るところでした。下写真はその直後の様子です・


ハエは花を出てから,枝を伝って上に移動。からだには花粉がどっさり! たぶんロウバイのものでしょう。この分だと,ゆっくりながらも,相当に動いて蜜を舐めたはず。


梢にしばらくとどまっていました。


そうして,再び歩いてもとの花まで戻って来たのでした。


この外気はさすがに身にしみるようで,動きは緩慢なばかり。

1月25日(水)。午前8時現在,晴れ,氷点下4.1℃。家の外に出て地面にしばらく立っていると,靴裏が地面にくっ付きました。歩いても,パリパリッと吸いつけられる感じなのです。ロウバイの花弁には霜がびっしりと付着していました。霜の華と形容できそう。


ハラビロカマキリの卵鞘にも霜が張り付きます。

 


午後4時。4.8℃。冷たい一日でした。この時間にも,この気温でも,小さな昆虫が訪れていました。初めて見る昆虫です。


体長5mm。からだが毛で覆われ,触覚が毛筆のように先で揃っています。いつもこんなかたちなのでしょうか。ふしぎなふしぎな姿に見えました。名はまったくわかりません。

  


地域ミュージアムで考える(46)

2017-01-26 | 随想

わたしの勤務するミュージアムは地球と宇宙をテーマとした施設です。来館者には地球と宇宙のあれこれに触れながら,ワンダーな気持ちになっていただきたいと願っています。そのために,いろんな知恵を絞って展示や解説の工夫をしたり,ミュージアムの活用方法を考えたりしているところです。それをわたしたちからの仕掛けといっていいでしょう。

地球に関しては,地球のかたちそのものに目を向けて展示を工夫しているところです。これはわたしの提案です。本シリーズで精力的に取り上げている立体地球づくりがそれです。立体のかたち,大きさをはじめ,アート作品にまで広げて,仕掛けを展開中です。

館内のあちこちに配置した立体地球は20個を超すはず。天井には,もっとも簡単な工作物モビールが釣り下がっています。あっちに。

 
こっちに。


単独で並べている錐地球もあります。 


先頃,こんなことがありました。

スタッフが来て「女のお子さんが,立体地球がほしいといっていらっしゃるのですが,どうしましょうか」と聞きました。「ほしいなら,あげてください。お出会いしましょう」といいながら,出会いに行きました。わたしはそういう希望者が出てくることを想定していましたが,子どもがほしいとはおもしろい話だと感じ,事情を聞きたくなったのでした。

その子は近隣市に住む小学3年生の子でした。「好きなものをプレゼントするので,選んで」と伝えると,迷うことなく一つを手にしました。それは陸と海をそれぞれ緑,青に着色したものでした。「わたしはこれがいちばん好き!」といいながらニコニコ顔をしていました。

「なぜ この地球がほしくなったの?」と尋ねました。わたしがいちばん知りたい点でした。すると,この子からは学年としては意外にも驚くほどすてきなことばが出てきたのでした。それは「本格的な地球だからです」とことばでした。ただのおもちゃ風でない,ほんまものを見たという満足感を感じているのでしょう。こんな工作物がこんなことばを引き出すことになろうとは! まことに光栄です。実際,わたしのつくったこの地球は丹念に展開図を描いて手づくりしたものなのです。

「あなたがいるところは,この地球のどこかな」と聞くと,しばらく経ってから「ここ!」と返ってきました。その反応を褒めながら,「大事に大事にしてくださいね」と伝えたのでした。

魅力的な仕掛けはこころをくすぐり,ワンダーな気持ちを引き出します。これからも仕掛けづくりをたのしみながら,こういう出会いを,わたしは大事に大事にしたいと願っています。

 


竹紙づくり(1)

2017-01-25 | 野草紙

友人のMさんは押し花絵の作家。今春,グループ展をするので作品用に竹紙(ちくし)を漉いてほしいという依頼がありました。竹紙を作品に活かして,どんな効果が現れるのか確かめてみたいということでした。

そういう提案には喜んで乗っかっていきたいとわたしは常々思っています。とはいえ,勤めの身。冬の今,晴れ間にタイミングよく漉くのはたいへん。それに乾燥も一日では到底無理です。そんななか,正月明けに紙づくりに取りかかりました。

使った竹繊維はストックしていたもの。倒木がやがて朽ちるように,竹も倒れて腐朽菌や小動物によって分解されます。分解が進んでいた竹から繊維を集めておいたのです。それを寸胴に入れて煮ました。手でつかむと,ごわごわっとした感触です。さすがに強い繊維だなあと思うほどです。


アルカリ剤はセスキ炭酸ソーダを使用しました。量は経験からみた適量で,ときどき少量追加しました。煮熟時間は5時間。思っていたより時間がかかりました。理由は量が多かったためと思われます。

 


これだけ煮ると,強靭な繊維でもかなり柔らかくなります。とはいえ,まだまだ手強い!

 


揉み洗いをしながら内皮(下写真)をていねいに取り除き,繊維だけにします。内皮は竹筒の内側にあって,主に繊維を揃える役目を果たしているもので,紙の成分としては不必要です。


冬の水は冷たく,作業は短時間でも厳しいものです。


こうして,紙にできる繊維が準備できました。

 

                                       (つづく) 

 


冬,カマキリを超近距離撮影(続々々)

2017-01-24 | 昆虫

温度管理と餌に気遣っていけば,カマキリは意外と長く生きるのかもしれません。1月に入っても,しばらくは元気にしていました。被写体としてはなかなか魅力的な格好,風貌をしているので,ずいぶんこだわって撮ってきました。今回はいよいよ締めくくりの撮影です。

太陽の光の当たり方を考慮して,頭やら目やらに迫っていくことに。 


こちらを見ているわけではないと思うのに,まるで見ているような。この感覚器官に捕らえられた獲物はかなりの確率で犠牲になりそうです。 


脚の手入れをし始めました。 まだ元気です。


口元はしっかりしています。個眼が並んでいるのが確認できます。 


さらに近づくと,規則正しそうな並び方に見えます。 

 
さらにさらに近づいて観察すると,見事な配列であることが理解できます。わたしの頭の内でこの個眼と内部構造とがつながって連想できたとしたら,きっとスゴイことになっているでしょう。

 
こうした姿・かたちには,人間がけっして解き明かせない崇高さ,いのちのメカニズムが詰まっているように感じられてしかたありません。 

 


サザンカの花,昆虫(5)

2017-01-23 | 昆虫と花

こんなふうに,種が異なっていてもなかよく吸蜜する姿を見かけるとこころが和らぎます。取り合いをするというふうじゃけっしてありません。 

 
そのうちあとに残ったのはクロヒラタアブ。頭をぐっと蕊の根元に突っ込んで,逆立ちの格好。レンズが近づいてもまったく気づいていません。からだに付着した花粉はまちがいなくサザンカのそれのようです。

 
しばらくいて,頭を上げました。蜜をたっぷり口にしたことでしょう。


ホソヒラタアブは冬も花を訪れる常連。 


一匹目に付くと,その他にもいるものです。 

 
花弁も舐めていました。花は,ここにも味を準備しているのでしょうか。


今冬のサザンカは,このあと何度かの雪に見舞われ,観察者にとっては散々な結末となってしまいました。これも自然の成り行きのまま,です。 

 


地域ミュージアムで考える(45)

2017-01-22 | 随想

結晶体型の立体地球づくりをしながら,同時並行で錐・柱が合体した作品づくりに取りかかりました。“とんがり帽子”をイメージしていただければわかりやすいかと思います。下が柱で,上が錐。その第一弾が三角柱・錐です。

段ボールで作った展開図は下写真のとおりです。柱のサイズは一辺24cmの三角柱です。


これを組み立てます。PE平テープでしっかり固定できるので手間どりません。平テープを使うのは段ボール板に食い込むのを防ぐためです。

 
柱の底面をふさぎます。きっちり接着するように椅子の背部分を重しにして乾くのを待ちます。

 

 
次は錐の接着に移ります。これが意外とたいへん。気長にやるのがいちばんです。

 


錐の一辺を接着して完成!  


出来上がりました。あとは海陸を描いて完成です。さて,どんなふうに仕上げるか,思案どころです。

 

                                                              (つづく)