自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

フジバカマと訪花昆虫(1)

2015-09-30 | 昆虫と花

フジバカマは秋の七草の一つ。そのフジバカマが,あちこちの野や道端で今わんさと咲いています。そして,そこに昆虫がちゃっかり訪れています。花は清楚で上品ながら,さほど目立たないのですが,昆虫が敏いのか,あるいは花特有のアピールが功を奏しているのか,ふしぎに多くの昆虫たちの姿が見られます。


これは見逃すことはなかろうと思い,撮影開始。

さっそく目に入ったのがツマグロヒョウモンのオス。近くには,幼虫の食草スミレがたくさん自生しているので,現れて当たり前なのです。


そして,イチモンジセセリ。長ーい口吻がひときわ目立ちました。

 


ハナムグリはゆっくり,じっくり。これはたくさん見かけました。


ハナバチのなかまも一匹。頭をぐいっと花に突っ込んでいました。花から花に移るたびに,他の昆虫が逃げるようにして避難していきました。さすがの風貌?


撮影中に,虫はまだまだたくさん訪れました。

 


ヒガンバナの花(花弁&蕊)紙

2015-09-29 | 野草紙

ヒガンバナ紙にはゆかいな表情があると思います。繊細な繊維なので際立った特徴が現れるのでしょう。

先日つくった花紙は,生の花を使ったもので,しかも子房の膨らみ部分も相当量入ったものでした。

ところで,ヒガンバナは1週間程度咲いた後,花が水分を失ってすっかり縮れてきます。ちりちりっとした感じで,茎の先端に付いたまま。「あんな強烈な印象を残す花が枯れたら,こんなふうになるのだなあ」と感慨深くなります。そのちりちりっとしたものは,花弁と蕊(おしべ・めしべ)です。それらだけを集めて紙をつくったら,どんな色の,どんな風流な紙ができるのか,ついつい確かめてみたくなりました。

さっそく紙づくりです。子房のところはまだ緑色をしています。それを除いて,花弁と蕊とを根気よく集めていきました。30分もすればどっさり採集できました。


それを煮ること30分。この30分は,湯が沸騰してからの時間です。これでもとのかたちが崩れて,繊維の集合体のようになりました。色は濃い焦げ茶色。有毒成分を含んだヒガンバナの個性を感じさせます。


繊維を揉みながら水で洗っていきます。廃液が無色になったらOK。これで紙料が取り出せたのです。やはり濃い焦げ茶色をしています。


これを漉き枠に入れると,湿紙の出来上がりです。このあとは,直射日光にしっかり当ててできるだけ早く水切り,乾燥を行います。終盤は,風通しのよい日陰で乾かします。


幸い秋晴れの日だったので,翌日にはしっかり乾きました。これまでに見たことのない色! 驚くような焦げ茶です。やってみなくちゃわからないものです。


わたしたちの身の回りには,このようにまだまだわからないこと,試されていないことがたくさんある気がします。今の自然の見え方って,ほんとうにたくさんの人がふしぎを解き明かそうとして蓄積してきた,とりあえず現時点での知の集大成にすぎません。わたしはわたしなりに,感じたふしぎをそのままにしておかないで,できるだけ真理に近づく努力をしたいと願っています。何歳になろうとも。 

 


ヒガンバナとアゲハ

2015-09-29 | 昆虫と花

ヒガンバナの花は鮮やかな赤をしています。だれに,なにに向かってその存在をアピールしているかといえば,もちろん訪ねてくるべき昆虫に対してです。なのに,一向に虫らしい虫が訪れるようなこともなく,種子ができているようでもありません。

実際,虫はほとんど訪れないばかりか,種子もできません。これは,ヒガンバナの染色体に関係していて,ちょうど種なしブドウが人の手を経ることなく自然にできているようなものです。それで,花は蜜を生産する意味はまったくなくなっているために,蜜があっても先祖の血をわずかに引いている程度にすぎないというわけです。まあ,ご先祖さまを忘れない程度,といったほうがふさわしいかもしれません。

それで,昆虫はまず訪れなくなっているのです。

この「まず」というところがミソで,ときには訪れることもあるという点も忘れてはなりません。アマチュア写真家が撮った写真で,ヒガンバナの花にアゲハがとまっているものをたまに目にすることがあります。そうした大型の昆虫を,ヒガンバナはきっと昔は歓迎していたはずです。大きく伸びた蕊や花弁を見ていると,よくわかります。それはちょうどユリの花とアゲハとの関係を思い浮かべれば理解できるでしょう。

脚場は花弁と蕊。蕊のねもとにある蜜源に口吻を伸ばす格好をしたとき,オシベの先に付いた葯がからだに触れます。すると,花粉がからだに付着するでしょう。同時に他の花で付いた花粉がメシベの先柱頭に接触します。これで,送受粉が完了。

このつくりは,むかしむかしヒガンバナが昆虫のどうつながっていたかを物語る名残りです。運がよければ,このつながりを直に観察できます。ほんとうにたまには,アゲハがやって来るのですから。

先日,自宅近くの土手で紙づくり材料にと思いヒガンバナを採集していました。そこにまず現れたのがアゲハ。一年前に本ブログ記事で報告して以来の出合いでした。

 


直後,すぐ近くの別の花にとまったのがクロアゲハ。

 


また,別のところでもクロアゲハ(メス)が。


いずれもすこしばかりいて,そうして舞い上がっていきました。ふしぎな,ふしぎなひとときでした。 

 


アゲハ庭園のルリタテハ(1)

2015-09-28 | ルリタテハ

9月28日(月)。快晴。さわやかでありながら,日差しを強く感じる一日になりました。最近,毎朝のようにモズが近くの電線にとまって盛んに鳴いています。秋本番といったところです。

アゲハの庭園の片隅,ホトトギスで孵化した幼虫のその後について書きとめておきます。

葉が激しく食べられて,幼虫がすくすく大きくなってきました。あちこちに終齢幼虫が見られます。ホトトギスを植栽した甲斐があったなあと,つくづく感じます。幼虫の居場所を確認するには,食痕が手掛かり。食痕があれば,そこになにかの営みがあるはずです。

見ると,やっぱり。葉が相当に食べられた茎に,幼虫が4匹も。

 


右端の幼虫は茎を懸命に食べていました。からだをうーんとねじった姿勢で。 

 


別の茎には,終齢幼虫が2匹。糞が残されていました。 

 


また別の茎にいる幼虫は,葉を貪り食っていました。 

 

 
ルリタテハの越冬態は成虫です。これからどこで,どう変化して成虫になるか,注目に値します。 

 


探検隊活動で漉いたヒガンバナ紙

2015-09-27 | 日記

9月26日(土)。晴れ。仕事場での話題になります。いろんな自然体験,感動体験を組み込んで行っている『土曜ちょこっと探検』で,ヒガンバナ紙をつくりました。

ヒガンバナの花は今が満開。この時期を逃せば材料が手に入らないので,「今だからこそつくっておきたい」というメンバーの意見を尊重。子どもとおとな,みんなで14人がヒガンバナ紙づくりに挑戦しました。

各自,ヒガンバナを採集して持ち寄りました。それをコンロで煮ました。沸騰後に茎と重曹を加え,煮ること20分。茎がフニャフニャ状態になったときに,指先で繊維を確認してもらいました。みんな,びっくり。繊維がみごとに見えるので,「すごい!」「これ,糸になるかなあ」なんて声が出ていました。


それを蛇口で揉み洗い。繊維がどっさり取り出せました。それを見て,またみんなはびっくり。


次は,わたしが漉き方を説明。そして,いよいよ一人ひとりが漉くのです。

きちんと漉かないと,満足できる結果につながりません。それで,漉き舟を一つだけ,順番を決めて,助け合って,というように慎重に作業を進めていきました。結局,作業を始めてから2時間かかったのですが,なんとかうまくいきました。あとは乾燥。天気がよければ,一日で乾燥するでしょう。


いつも,活動を終えるときに,五・七・五調で感想を書きとめて紹介し合うことにしています。この日は,それぞれの句にビックリ感と満足感が織り込まれていました。各地で咲くヒガンバナを紙料に使って紙を漉く体験は良質な体験の一つでしょう。充実したひとときを提供できて,わたしも充実感を味わうことができました。

 


孵化の瞬間

2015-09-26 | ヤマトシジミ

庭園の草引きをしていて,見つけたのがヤマトシジミの卵2個,そして茎に付いた蛹。間もなく活動期が終わる頃なので,きちんと孵化を見届けようと思い,コップに茎を挿して観察していました。

結果。一つについては,わずかに確認が遅れて撮影できずに終わりました。残念! 残りは一つ。「今度こそは」と思い,慎重に見て行くことにしました。

しごとが休みの日のことです。卵の一部に薄っすらと黒っぽい色が現れてきました。これは頭部です。まちがいなく孵化が近づいている証拠。「見逃せないな」と思い,ルーペで度々観察を続けました。なにしろ,卵の直径が0.5mm足らず。観察には,よほどの注意深さが必要となります。

この個体もそう。まだ大丈夫だろうと思っていたら,次に見ると,もう卵の天井が開けられ始めていたのです。びっくりして,大慌てで撮影準備に取りかかりました。

 


天井の蓋が開けられて,いよいよ誕生の瞬間です。


ゆっくりゆっくり出てきました。上半身を出した格好です。


からだが完全に出ました。しかし,脚を葉に着地させる様子はありません。


このあと,幼虫はからだの向きを変えて殻を食べ始めました。食べ始めると,意外に熱心な食べ方に見えました。口が動くのが観察できたほどです。これまでの観察例では,まったく殻を食べずに離れていく幼虫もありました。


食べるといっても,それほどの執着心はなさそう。完全に平らげるわけでもなく,あっさり途中でやめました。そして,初めて葉に着地。しばらく休んだあと,去って行きました。


こうして,あたらしいいのちが誕生しました。


何度見ても,いのちの物語には感動が伴います。

 


ヒガンバナの花紙!

2015-09-25 | 野草紙

今,ヒガンバナの花の真っ盛り。新聞紙上の一面にも,その風景が取り上げられています。彼岸にぴったり!

これまで,ヒガンバナの茎から紙をつくることはありましたが,それらはすべて花を取り除いたあとの花茎を材料としたものでした。しかし,「花だけから紙をつくれるだろうか」と考えることはありませんでした。今の関心からいえば,とことんいろんな部分を紙料にしてみたいのです。それで,ヒガンバナについても花で試したくなりました。

これなら,今の時期いくらでも採集できます。土手に行って,たくさん集めました。


煮た時間は沸騰してから20分間。花の色が変わり,柔らかくなっているのがわかります。箸で取り出してつまんでみると確認できます。 

それを篩に移して,水道水を流しながら揉み洗いします。廃液に色が付かなくなったら終了。

花のねもと,つまり子房の周りが丸みをもって残ったままになりますが,そのままにしておきます。ミキサーにかけるなどして潰す必要はありません。こうしてできたものが紙料になります。

あとは溜め漉きの手順にしたがって漉いていきます。表面がでこぼこしていても気にしません。ただ,紙料をたくさん使うと今の時期,乾くのが遅くなります。秋晴れが続くようであれば,多めでもいいでしょう。完全に乾くのに,3日程度はかかります。はじめは日なたで,一気に水切りをしながら乾かします。


やがて全体が乾いてきたら,風通しのよい日陰でゆっくり乾かします。


花紙は,子房から出た繊維が平行に並んでいたり,おしべ先の葯が細かく散らばっていたり。独特の味わいがあります(下写真。背景の格子はステンレス網)。


見ようによっては,紙色である濃い褐色がヒガンバナ特有の個性を主張しているようでもあります。

  

 


マムシグサ紙!

2015-09-24 | 野草紙

マムシグサからつくった紙は,わたしは大好きです。色合いも強さも,表面の感触も,なにもかもすてきなのです。折り紙にもコピー紙もつくれます。一度つくる体験をした人なら,きっとわたしと同じにで好きになるのではないかと思うほどです。

わたしの住む地方では,マムシグサはスギの植林地でよく見かけます。日陰で,湿り気が多い環境を好む植物であることがわかります。林間で,わずかな光を求めて生きるシダに似ています。マムシグサは1本見つかれば,辺りを探すとほかにも見つかります。大きいものやごく小さいものまで,たくさん。これは,1本の果軸に果実がどっさりでき,それが落下して殖えていくからです。


それらを何本か,地面付近から切り取って集めました。使うのは茎だけです。葉が付いていてもよいのですが,葉の繊維は茎のそれとは比べものにならないほどわずかなので,とくに使わなくても大丈夫という意味です。

もしあなたがマムシグサ紙をつくられる場合は,マムシグサのからだから滲み出す液を手に付けないようにしてください。それに含まれているシュウ酸カルシウムの結晶が皮膚を刺激してとてもかゆくなる恐れがあります。この結晶は目には見えないほど小さなものです。サトイモやコンニャクイモの成分と同じです。わたしはそれで何度も被害に遭ってきましたから,コリゴリしています。初めての人はゴム手袋を付けて扱ってください。

煮るのは1時間で十分。

それを水洗いして,ミキサーにかけて,さらにきれいに水洗い。これで,すてきな紙料が取り出せました。茶色っぽい表皮が入っていれば,それが一味も二味もよさを引き立てます。表皮を除いて煮た繊維もまた,純粋な色合いがしてとてもきれいです。


あとは漉いて,乾かすだけ。


たいへん簡単に,超薄手の紙の仕上がり!  


そうそう,ついでながら余談話を一つ。マムシグサはコンニャクと同じ仲間なので,コンニャクの茎からもまたよく似た紙がつくれます。

 


バショウ紙!

2015-09-23 | 野草紙

バショウ紙は“芭蕉紙”と書きます。バショウはバショウ科植物の名のもと。バナナもこのなかまです。

このバショウでできた紙は沖縄県の伝統的な和紙です。沖縄の知人にそれをおみやげとしていただいたとき,薄い褐色をしたなんとも味わいのある紙なので,とても印象に残った記憶があります。わたしが30代の半ばの話です。

そのことが頭にあって,わたしも野草紙の材料の一つとしてバショウを使ってみたいと思うようになりました。それから数年して,バショウを一株譲り受ける機会があり,畑の片隅に植えました。それがどんどん増えて,今は見上げてワァーッとびっくりするぐらい本数を増やしています。しかし,バショウ紙を漉く機会がなく,そのまま放置状態でした。


今回漉くのは,書道作品を書くのになにか野草で漉いてほしいという依頼を受けたことによります。「これならバショウ紙がいい」と思い立ち,それを採取して持ち帰ったというわけです。バショウのからだは,背丈が5mほどでしょうか。複数の葉を大きく広げて日光を受けていますから,それを支える茎は丈夫です。丈夫な茎には,それなりの構造が仕組まれていて,その骨組みの柱になるのが繊維なのです。木のようにボキンと折れることもなく,大きな風を受けても,しなやかに曲がり続けます。


したがって,バショウはあくまで草本植物でありながら,大した繊維の持ち主なのです。

さて,漉くのは葉書サイズからA4サイズまで。毛筆用紙なので,ごく薄く漉くことになります。わたしがふだん使うステンレス網を利用すれば,どんな薄い紙でも漉けるので,その点は大丈夫です。

煮た時間は3時間。繊維が柔らかくなってきました。それをミキサーで細かく砕きます。すると,上質の繊維が取り出せました。これで,紙はできたのも同然。


漉いて,乾かして。


この日は秋晴れの一日だったので,朝漉いて,夕方にはすべての紙が乾いていました。


一日でたくさんの紙が完成しました。依頼を受けた責任が果たせてホッとしています。

付記。この記事を書いているときに思い出したのが,絵本『ミラクルバナナ』。ハイチでバナナ紙をつくる試みが始まって,漉かれたそのバナナ紙からつくられたのが『ミラクルバナナ』。バナナ紙づくりには日本のたくさんの人がかかわっています。バナナ繊維からつくられた紙なので,バショウ紙ときょうだい! 本棚からこの絵本を取り出して,改めて読み返しました。人の営みが見えてくる,とってもすてきな絵本です。 

 


モロヘイヤ紙!

2015-09-22 | 野草紙

モロヘイヤは葉や茎を食する野菜です。これを知人からいただきました。1mほどの茎が付いたままでした。知人宅ではかなり大きく生長しているようで,「木のように育っている。いくらでもどうぞ」という話でした。

モロヘイヤの茎が紙にできないか確かめてみようと思い,茎を折ると,木のように折れてしまいました。完全に木質化しているのです。折れた茎は,分離されず皮でつながったままでした。皮を剥いでみました。すると,根元側から先端側に向かって長い皮が採取できました。しなやかで,強そうです。何カ所かで同じことを繰り返しても,やはり同じ結果になりました。

このときわたしは,カラムシの皮から紙をつくったときのことを思い出しました。カラムシの茎からも同じように丈夫な靭皮繊維が取れます。そして,それが織物繊維として利用されてきた歴史があります。

ネットで調べると,なるほどと思われる情報が得られました。

  • 植物名はシマツナソ。漢字で「縞綱麻」。別名の1つがジュート。
  • コウマ(黄麻)ととも繊維原料として利用。2つは「ジュート」と呼ばれている。
  • 2,3mにまで生長する。茎を水に漬けて発酵させた後,繊維を採取する。

これなら当然紙が漉けます。さっそく紙づくりに取りかかりました。茎から靭皮繊維を剥いで集めました。葉が付いていても一向に構いません。


煮熟後,それをミキサーにかけて細かくしました。カラムシのときとそっくりの状況です。麻を感じさせるだけあって,強くて丈夫な繊維です。短時間で紙料が得られました。あとは漉くだけです。

いつものとおり溜め漉きで湿紙をつくりました。そうして水切り。あとは乾燥です。こうして思ったとおりの紙が完成しました。


淡い赤褐色をした紙です。麻繊維からできたことがなんだかわかるような,引っ張りに強い紙です。紙をつくり出す作業をとおして,植物の生態に迫るたのしさがまた一つ加わりました。