自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

'22春 虫の目レンズは友 ~サクラ(11) ~

2022-05-19 | 花と実

ヤマザクラの花が実に変わっていきます。実のかたちは軸を入れるとマッチ棒に似ています。色は黄緑。

 

この木の低いところには枝があまりないので実も少なめ。線路を入れて構図を決めたいので,こんなふうになりました。こうして電車を待ちます。

 

便数の少ない電車。時間を変えて訪れました。電車のヘッドライトが見えます。これを入れたかったのです。葉の上に実の影が映っています。快晴だったので雲は入りませんでした。そこが惜しいところ。

 

花がすべて終わって実に移り変わったとき,また撮影しようと思います。きっと,実の表情がずいぶん違っているでしょうし,葉もにぎやかさを増していることでしょう。

 


'21~'22冬 虫の目レンズは友 ~ツクバネ~

2021-12-19 | 花と実

ツクバネの実を撮影したくて,古刹を訪ねました。ツクバネの木は葉をすっかり落としていました。目的の実は褐色に熟してまだ鈴なりです。日を浴びて光る実がくっきり。

 

青空を見上げながら枝を撮影。実はまるで提灯にようなすがたで行儀よくぶら下がっています。

 

逆光下です。鐘楼と本堂を背景に撮りました。

 

実に付いた4枚の羽の反りが見事です。

 

向こうの石塔を見上げながら撮りました。向こうの方まで実があります。

 

やはり晴れた日の撮影が最高です。

 


ツクバネの雄花

2016-05-04 | 花と実

数年前のこと。山で自生しているツクバネの実をいくつか拾って持ち帰り,試みに,前栽の土に埋めました(下写真は2010年12月撮影)。


じつに適当に! おもしろいことに,そのうちの数個が芽生えて,今2株が育っています。高さが1mを超すまでになりました。去年は実が付きかけたのですが,その株は惜しくも枯れました。今残っている株は2つとも実の生らない雄株。したがって,雄花が付いているだけです。

珍しい木なので,雄花の姿を記録しておきます。花は複葉の先に数個かたまって付いていまs。

 


萼が開くと,保護されていたオシベが見えかけます。 

 
4本のオシベが見えると,真ん中辺りがきらりと光っているかのよう。蜜なのかもしれません。


花を見て行くうちに,甲虫が目にとまりました。体長は1mm? 蜜を舐めているのでしょうか。もしこの甲虫が送粉者だとすると,スゴイ画像になりますが……。 

 
ちゃっかりと葉を利用して棲み付いたクモが獲物を捕らえていました。


撮影していると,警戒して巣の中に入りかけました。しかし,そこから逃げて行こうとはしません。捕らえられた昆虫は蜜源を訪れて犠牲になったのでしょうか。 

 
ツクバネは独特のかたちをした実が見事です。落下時に,4枚の羽根がプロペラの役目を果たすのです。これがツクバネの種子飛散戦略。雄花だけでは実は見られません。今年暮れには種子を採集して,改めて植えてみようと思っています。雌株を育てなくてはおもしろくありませんから。たのしみが1つ増えました。 

 


ウマノスズクサの花(さらにさらに)

2013-07-29 | 花と実

昆虫がウマノスズクサの花に入る瞬間を目撃したのはたった一度。中に入っている昆虫を見たこともただ一度。しかし,その昆虫ハエはすぐに飛び去りました。それで撮影したことがありません。何とかして見たいと思い,簡単な手を打ちました。

花にハエ類が入っていることを前提にした手です。花を切り取ってそれをしばらく冷蔵庫に入れておき,取り出してからカッターで切るのです。そうすれば,見られる可能性,撮影できる確率が増すでしょう。

さっそく,やってみました。ワクワク,ドキドキして切りました。するとどうでしょう! 見たいと思っていたハエが入っていた! それも三匹! わたしの期待感を一層高める結果になりました。

壺の直径はせいぜい8mm。体長はほんの2~5mm程度。小さなハエにも大きさの違いがあります。これはスゴイ出合いです。人知れない花の世界で,このように活動している昆虫が存在していて,花と昆虫は互いに持ちつ持たれつの関係を保っているのです。

考えてみれば,アリが甘味成分を舐めていた事実と重なって見えてきます。ハエはこの甘味が好物で入ってくるのかもしれないのです。

花のしくみとワザ,ハエの嗅覚のスゴサがつながって見えてくる生物学的な事実です。ここでも,「ほほう!」のしくみが巧みに機能しているわけです。

 


ウマノスズクサの花(さらに)

2013-07-20 | 花と実

ウマノスズクサの子房の中をまだ写していなかったものですから,なんとか撮っておこうと思いました。それで,カッターナイフを使って子房を縦方向に切りました。ところが,とても細いものですから,失敗。別の花でも同じことを繰り返しましたが,スパッとはうまくいきませんでした。

そして,三度目。今度はナイフの刃を新しいものに替えたお蔭かなんとかうまくいきました。切った部分を除いた瞬間,驚きました。中に,小さなハエが一匹入っていたのです。ハエはしばらくいて,その後慌てて飛び去りました。

子房の中には行儀よく胚珠が並んでいるのがわかります。ラッパ状になった筒には毛が密生しています。毛の向きが内側に倒れています。外からやって来る虫が,この案内によってうまく導き入れられるわけです。 

撮影していると,間もなく一匹のアリがやって来ました。そうして,中に入って甘みの成分を舐め始めました。しばらくすると,また一匹,また一匹と増えました。おしまいに五匹にまでなりました。それらが甘みに関心を示し,夢中で舐めていました。 

子房を見ようとしたわけですから,今度はさらに倍率を上げて撮りました。みごとなまでの,胚珠の並び方です。いったい何個あるのでしょう。一列で20個以上あります。ということは,全体で数百個になるのかもしれません。

どの子房でもよいので,一つなんとか実にまで育ってほしいのですが……。 

 


ウマノスズクサの花(またまたまた)

2013-07-19 | 花と実

壷になった萼の中を撮影するために,断面を切り開いたままにしておいた花にアリが一匹。今度は,中に入ってなにやら一所懸命にしている様子。じっと見ていると,舐めているような感じです。たぶん,甘みの成分でもあって,それを餌にしているのでしょう。

ついでながら,開口部から侵入することがあるのでしょうか。ふと,そんなことを思いました。 

№1の子房が黄色味を帯びてきています。さて,これが膨らんでいくのでしょうか。受粉しているなら,当然そうなるはずですが。 

 

 


ウマノスズクサの花(またまた)

2013-07-18 | 花と実

6月14日(日)。№2の花の萼を切りました。茎に付けたままの状態で。それを写したのが下写真です。オシベとメシベがいちばん奥にちょこんと付いています。

毛が白く,まだしっかり立っています。さて,受粉はなされたのでしょうか。 

アップ気味で写していると,偶然アリがやって来ました。中には入らず,どこかに消えて行きました。 

蕊と子房のつながりがよくわかります。それぞれのオシベに葯が二つずつ。ハエが蕊の根元の蜜腺に向かってからだを入れたときに,花粉がからだに付くのが目に見えるようです。こんなに小さな壺状の萼を備えている意味がよくわかります。 

 


ウマノスズクサの花(また)

2013-07-16 | 花と実

7月13日(土)。№1の萼部分が落下。花の後には,子房が残りました。膨らみ加減ですが,このまま熟していくか,当分見てみましょう。

落ちた萼を切って中を覗いてみることにしました。虫が入っているかどうか,蕊の様子はどうか,これらの点を確かめるのです。

さっそく萼を縦方向に切ってみました。虫は無事に脱出しているでしょうか。虫の姿はありませんでした。無事に外にでたようです。受粉が行われた後,内部に密生している毛は萎びてしまうので,ふつうよりもっと出やすくなります。この花は食虫植物ではないので,楽々と脱出できたのでしょう。

ところで,よく見ると壺と筒の境辺りに,黒い粒が一つ付いています,

もっと拡大して撮ったのが下の写真です。 

死骸には見えません。もしかすると,入ってきた昆虫の置き土産なのかもしれません,たぶんそうでしょう。その正体は糞です。そうなら花は受粉を完了した可能性が大きいということになります。 

蕊の様子がよくわかります。

花柱のないオシベが6つ,合わさっています。その外側に黄色く見える塊りが,それぞれのオシベに2つずつ。この塊りが花粉袋“葯”で,黄色いもの花粉です。そうして,中央から飛び出した褐色の紐状のもの,これがメシベの柱頭です。

葯と柱頭が距離を保って位置しています。これは雌蕊先熟型をとりながら,なおかつ,近親結婚を避けるための知恵かと思われます。ここでも,「ほほう!」と感心させられるしくみが整っているのです。 

 


ウマノスズクサの花(続々々)

2013-07-14 | 花と実

7月12日(金)早朝。№1の花を見ると,これまで大きく湾曲していた筒状の萼が横向きになっています。どうやら受粉を終え,萎びていくようです。花全体を見ると,まるで提灯をぶら下げているような姿です。いずれ壺の中を覗こうと思っています。

№2の花は,萼を開き始めました。上に細長く伸びた部分が実にスマートに見えます。この後,大きく反り返って,正面からは真ん丸く見えるようになります。これで虫を迎え入れる準備が完了。 

夕刻。№1の萼は,見るからに萎れかけていることがわかりました。 

 


ウマノスズクサの花(続々)

2013-07-13 | 花と実

7月10日(水)午前7時。見ると,萼が開いて,ラッパ状の花が開いていました。ついに,第一号が我が家で開花! 入口の色といい,毛の生え具合といい,昆虫を招き入れる巧みな戦略なのだなと感心しながら撮影。

焦げ茶色が入口周辺を彩っています。その色を目印に,昆虫が訪れ,奥を目指します。毛は,虫が入ると出にくい向き,つまり逆さに生えています。長い生物史のなかで,ウマノスズクサがこうしたかたちを獲得した知恵には舌を巻いてしまいます。

この花,もしかすると朝開く性質をもっているのかもしれない,と思いながら見ていると,偶然どこからともなく小さな小さなハエが近づいてきました。そうして,花の周りをぶんぶん飛び回りました。すごい速さ! わたしにはブヨの大きさに見えました。

写真に撮れるチャンスが訪れたらなあと思った瞬間,入口に止まることなく,さっと奥に入ってしまったのです。一瞬のことで,何が起こったのかさっぱりわからないといった感じでした。奥から出ている匂いか,色に誘われ奥に導かれて行ったのでしょう。嗅覚のよさに合点。よほど魅力的だったのでしょう。匂いを嗅いでみましたが,わたしにはわかりませんでした。

これで受粉がうまくいくはず。

先ほど朝開花するのかも,と書きました。早朝なら風がほとんどなく,匂いを辺りに効率よく漂わせることができます。それにしても,早くからしっかり活動している昆虫がいることに驚きます。

ところで,中に入った昆虫はどうなるか,です。逆さ毛のせいで出られなくなるのでしょうか。調べてみると,そうでもなさそうです。なかにはそれでおしまいという例もあるでしょうが,ほとんどの場合は花の巧みなしくみのお蔭で出て来られるのです。

ウマノスズクサは雌蕊先熟型で,オシベに取り囲まれたメシベは一足先に熟します。そこに昆虫がやって来て吸蜜。その際,他の花から運ばれて来た花粉が付いて受粉が行われます。完了してしばらくすると,逆毛は萎び,昆虫はほとんど苦労なく出て行けるとか。

雌蕊先熟型なのは,たまたまこの花の特性であり,たとえ雄蕊先熟であっても理屈は同じです。こうした戦略は,この草が近親結婚を避けて,多様な遺伝子を種に残し,たくましく生き残ろうとしている姿なのです。こう思って改めてウマノスズクサを眺めると,そのえらさに「ほほう!」と感じ入らざるを得ません。