焼芋の季節です。野焼きでサツマイモを焼いて,なかまと一緒に味わうひとときは極上。会話が弾みます。
この焼芋の火種をマッチとかライターに頼らず,昔ながらの発火法から得るとしたら,雰囲気ががらりと変わって来ます。参加者が自ら火種をつくって,それで焚き火をするのです。いい換えると,自然を相手にする際に文明の利器に頼らず原初的な手法,つまり原体験重視で行く手です。いうまでもなく,自然とのふれ合いをたいせつにする野外活動では原体験をより多く盛り込むのが理想でしょう。ただ,ほとんどの人がそこまで思いが至らないだけです。
今や子どもの自然体験で火を用いる体験は,ことごとくといってよいほどマッチかライターに拠っています。「自然学校」「自然教室」と銘打って小学校が実施している教育活動でさえ,そうなのです。これではさっぱりダメですね。ことばだけの自然体験,人工的な自然体験では,もったいない,もったいない。体感的な活動をしっかり盛り込まなくちゃ。火起こしの試みは,小さい内容ですが最適の見本でもあります。
今日,わたしが手ほどきをした焼芋大会ではキリモミ式を取り上げました。これってもっとも原初的な火起こし方法で,「これぞ縄文式!」ってヤツですね。わたしは,これこそやる値打ちのある方式だと思っています。小学校高学年以上の子や活動に意欲的なおとなが参加している場合は,なおさらです。今回の参加者は子ども16人,おとな14人で,合計30人。その様子を,順を追ってご紹介しましょう。雰囲気がほんとうにおもしろいですよ。
場所は里山林。クヌギやクルミの落ち葉がじゅうたんのように積もっています。
はじめに,焚き火のできる準備をしました。落ち葉,枯れ枝をいっぱい使って。
続いてキリモミ式発火のガイダンス。発火経験のある親子とわたしが手本になって発火までを演じます。ポイントは,回転の速さでなく,火切り棒と火切り板とをいかに強くこすりつけるか,という点。問題なくうまくいきました。皆さん,びっくりなさっていました。
写真のように4組に分かれて挑戦してもらいました。いちばん早く起こった火を焚き火に使い,その後に成功したものについては合流させるかたちにしました。
ファミリーでの挑戦。力が入っていました。
お父さんとお母さんで見事に第一号の火が起こりました。
それを用いて焚き火の開始です。
低学年の子も一緒に頑張ります。
お母さん一人で挑戦される姿がありました。たくましい!
見事に発火。最終的にはいずれのグループも成功しました。
焼芋ができていきます。
わたしがいたのはここまで。小さな芋は食べられる程度に焼けていました。「おいしい!」ということばが出ていたのでホッとしました。そんな声を聞きながら,一言あいさつをさせていただいてその場を去ることに。1時間後には別のイベントが待っていましたから。
一日を終えて振り返ると,焼芋大会としてはばっちりうまくいったように思います。わたしの描いている姿が実現でき,これから先の見通しがさらにしっかりしてきました。いつでもミュージアムスタッフとして出前をさせていただきますので,お気軽に声をお掛けください。