自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

剪定中にスギドクガが!

2016-11-30 | 昆虫

庭で剪定作業中のこと。北山杉を手入れしていて,地面を見ると,ボケの葉に妙な毛虫が。見たことのない虫なので,「これは記録に値する」と思い,近接撮影をしておきました。とくべつ長い毛に,何か意味がありそう。こういうときは不用意に指を触れないことです。


撮っている間,幼虫はほとんど,あるいはまったく動きません。毛先まで入れてシャープな画像を撮るのはたいへん。


鮮やかな色は毒を持っていることを誇示しているようにも,色で外敵を脅しているようにも思えました。背に生えた褐色毛の束のすごいこと。

 
頭部から突き出すように伸びる毛の束。確かに天敵を脅す武器のよう。


正体は,この時点では謎。

夜,検索していきました。すると,正体がわかってきました。どうやらスギドクガらしい特徴と一致します。やはり毒の持ち主だったのです。幼虫が毒を持っているのか,成虫がそうなのか,不明です。ただ,この種がスギの木にとって害虫であることが判明。春の食害が相当なものとのこと。スギが枯れたらたいへん。それにしても,退治の対象とは。

調べていくうちに,さらに新しい情報に辿り着きました。ドクガという文字が付くにもかかわらず,毒はないらしいのです。体内に蓄えられたものについては不明とも。「そうかなあ」と疑問が浮かびました。体内毒性なら,簡単に分析できるはずなのに……,

というわけで,結局謎めいた生態の持ち主のようで,人間にはわからないことがたくさんあるうちの一例です。 

 


地域ミュージアムで考える(37)  

2016-11-29 | 随想

結局,正多角形の立体地球の仕上げとして正九角形を取り上げることに。

これなら,360度を9分割すると40度になります。つまり側面1つは40度分にあたります。40度なら10度がちょうど4つ分。半端は出ません。半端が出ないと,とてもつくり勝手がよいことになります。

展開図は,そのとおり簡単につくれました。


立体の組み立てもさほどむずかしくはありませんでした。ただ,折り目が増える分,どこかにひずみが出やすいために多少いびつなかたちになりました。したがって,正確にいえば“九角柱”ということになります。

立体は展開図の寸法の1.5倍の大きさです。図を立体に転写しました。


それに着色。そうして赤道を赤線で表示。完成!


わたしが勤務しているミュージアムは,地球と天文をテーマにした施設です。これまでにつくった段ボール製立体地球は20個を上回っているはず。館内のあちこちに,点在するように置いています。手で触ったり,腰掛椅子に使ったりされています。でも,後者の利用法としては腰を掛けて負荷がかかることを想定していなかったので,あんまり歓迎できないのですが。今は,様子を見ているところです。それはともかく,手づくり立体地球は地球を理解するのに一役買っていそうです。

この九角柱の地球もその仲間入りをします。

正多角柱で,残るは正七角柱になりました。しかしながらこれはあちこちで端数が出てくることを思うと,ちょっとつくる勇気はありません。つくったとしても,そうおもしろいわけでもなさそう。潔くやめておきます。

冒頭で「仕上げ」ということばを使いましたが,じつはまだまだ,一連の試みを続けたいと思っています。制作シリーズは応用編になりそうです。 

 


洛西,清滝川東海自然歩道の旅

2016-11-28 | 旅行

11月27日(日)。一日雨模様。

市内のハイキング実行委員会主催の紅葉ファミリーハイキングに参加。行先は京都・洛西。イベント名は『京都洛西・錦秋の清滝川東海自然歩道をゆく』で,サブタイトルは『高雄・清滝から嵯峨野・嵐山コースを歩く』というもの。歩行距離およそ10km。

雨の中の出発。雨の中の帰着。しかし,雨も自然の一現象。自然のなかで行動していると予想外の状況も生まれて当たり前。それもまた,自然とのつき合いの結果です。

出発地点は高山寺駐車場。この寺院は鳥獣戯画で名高いところです。西明寺前を通過。モミジの葉はほとんどが落ちています。写真はじつに頼りない出来です。これは雨の影響でもあります。


ひらすら清滝川沿いの歩道を下って行きます。北山杉が林立しています。急峻な山の峰は雨煙でぼんやり。清流が音を立てて流れ下っています。カワセミが川面すれすれに向こう岸に飛んで行きました。


川床や山の斜面には,片麻岩や石英が露出していたり,崩壊して砕けていたり。わたしはそれぞれ一つ,採取して持ち帰りました。石英は良質の火打石として使用できます。


昼食は清滝で。廃屋の軒下をお借りして,雨をよけながら立ったような感じでの食事となりました。まあ,こんな経験は二度とないでしょう。

食事が終わると出発。試峠を越え,嵯峨鳥居本の町並みに。ここからは嵯峨野の散策道を歩きました。

 


カメラのレンズに雨粒が付着。あとの写真はさっぱりダメ。撮りたい風物詩がいくつかあったのですが,残念。


あちこちの庭で見かけたのがカラスウリの実。こうして見ると,風流!


和服姿の女性の傘にもモミジが。モミジの季節はもうおしまいに近い感じです。


嵐山の賑わいにはびっくり。雨が降りしきるなかでも,スゴイ! 傘がぎゅうぎゅう詰めに通りを埋め尽くしているのですから。とりわけ,外国人の多さには驚きました。これも時代の変化ですね。出かけるなら,混雑が避けられてゆっくり散策できるところがいいなあとつくづく思いました。


雨でも,参加された方々と会話が弾み,こころに残るハイキングになりました。今日のようにずっとずっと雨が激しく降るハイキングって,まずありえないでしょう。おかしなことに,旅を終えて帰着したとき,雨が上がっていました。これもスゴイ! 

 


生きもの,顔と頭 ~コンデジ版~(4)

2016-11-27 | 生物

コバネイナゴは先日記事で取り上げました。

ジャガイモ畑で見かけ,撮ったのが下写真です。警戒心は感じられず,ゆっくり撮影できました。 

 
正面から見ると,なんとはなしに愛嬌のある表情をしています。口器が大きいのは,草食性昆虫らしい特徴です。

 
カップルをよく目にします。オスとメスのからだを比べると,ずいぶん違っています。胸に付いた脚からは,見えない筋肉構造が迫ってくるようです。頭胸部を見ていると,頭部が視覚器官と消化器官,そして胸部が運動器官をつかさどっていることがよくわかります。

オスがメスの背にしがみ付いている,そんなことばがぴったりの風景です。仲睦まじい,このことばは人間的な印象を一方的に持ち込むものでふさわしくありませんが,まるでそうであるかのような風景です。

 

  


焼芋大会の火種はキリモミ式で

2016-11-26 | 随想

焼芋の季節です。野焼きでサツマイモを焼いて,なかまと一緒に味わうひとときは極上。会話が弾みます。

この焼芋の火種をマッチとかライターに頼らず,昔ながらの発火法から得るとしたら,雰囲気ががらりと変わって来ます。参加者が自ら火種をつくって,それで焚き火をするのです。いい換えると,自然を相手にする際に文明の利器に頼らず原初的な手法,つまり原体験重視で行く手です。いうまでもなく,自然とのふれ合いをたいせつにする野外活動では原体験をより多く盛り込むのが理想でしょう。ただ,ほとんどの人がそこまで思いが至らないだけです。

今や子どもの自然体験で火を用いる体験は,ことごとくといってよいほどマッチかライターに拠っています。「自然学校」「自然教室」と銘打って小学校が実施している教育活動でさえ,そうなのです。これではさっぱりダメですね。ことばだけの自然体験,人工的な自然体験では,もったいない,もったいない。体感的な活動をしっかり盛り込まなくちゃ。火起こしの試みは,小さい内容ですが最適の見本でもあります。

今日,わたしが手ほどきをした焼芋大会ではキリモミ式を取り上げました。これってもっとも原初的な火起こし方法で,「これぞ縄文式!」ってヤツですね。わたしは,これこそやる値打ちのある方式だと思っています。小学校高学年以上の子や活動に意欲的なおとなが参加している場合は,なおさらです。今回の参加者は子ども16人,おとな14人で,合計30人。その様子を,順を追ってご紹介しましょう。雰囲気がほんとうにおもしろいですよ。

場所は里山林。クヌギやクルミの落ち葉がじゅうたんのように積もっています。


はじめに,焚き火のできる準備をしました。落ち葉,枯れ枝をいっぱい使って。

続いてキリモミ式発火のガイダンス。発火経験のある親子とわたしが手本になって発火までを演じます。ポイントは,回転の速さでなく,火切り棒と火切り板とをいかに強くこすりつけるか,という点。問題なくうまくいきました。皆さん,びっくりなさっていました。

写真のように4組に分かれて挑戦してもらいました。いちばん早く起こった火を焚き火に使い,その後に成功したものについては合流させるかたちにしました。


ファミリーでの挑戦。力が入っていました。


お父さんとお母さんで見事に第一号の火が起こりました。


それを用いて焚き火の開始です。


低学年の子も一緒に頑張ります。


お母さん一人で挑戦される姿がありました。たくましい!


見事に発火。最終的にはいずれのグループも成功しました。


焼芋ができていきます。


わたしがいたのはここまで。小さな芋は食べられる程度に焼けていました。「おいしい!」ということばが出ていたのでホッとしました。そんな声を聞きながら,一言あいさつをさせていただいてその場を去ることに。1時間後には別のイベントが待っていましたから。

一日を終えて振り返ると,焼芋大会としてはばっちりうまくいったように思います。わたしの描いている姿が実現でき,これから先の見通しがさらにしっかりしてきました。いつでもミュージアムスタッフとして出前をさせていただきますので,お気軽に声をお掛けください。

 


秋,ジャガイモの表情

2016-11-25 | ジャガイモ

ジャガイモは別名“二度芋”。名の通り,一年に二度栽培できます。

7月の収穫時にイモが地中に残ったままになると,秋,出芽して育ちます。育つと,もちろんイモが育ちます。ジャガイモは冷涼な気候に合った植物なので,秋が深まっても育つのです。ただ,霜が降りたら枯れて生長が止まります。今年もわたしは畑でアンデスレッド,ホッカイコガネの2種を植え付けて,収獲をたのしみにしています。

さて,プランターで実験栽培してできたイモをそのまま地中に置いていたり,地表に置いていたりしたら,その後出芽して育っています。どういうふうにイモができるか,観察者としてたのしみにしているところです。


そのうち,地表に無造作に置いていた1つがおもしろい表情を見せています(下写真)。品種は3月にホッカイコガネの種子を植えたものなので,ホッカイコガネの交配種になります。


ストロンが付いていた反対側の頂芽部分が上向きになっていたため,複数の目がかたまっていたところから芽が重なるようにして生長した結果です。丈夫な茎はストロン側の目から1本出ています。どうしたことか出芽したばかりの芽に直接栄養分が貯蔵され,その部分に日光があったために,赤みのある膨らみが形成されたのです。

本来なら地中に横たわり,この芽が地上部に茎となって出てくるところです。

地表で放置されたイモの1つは,頂芽から茎を出しています。茎は緑色。茎が変形してできたイモも,太陽の光を浴びて緑色をしています。地上部にあるとストロンを伸ばすことは叶わないようです。


地中にあるイモからは,順調に茎が出ています。品種はキタアカリです。

 


晩秋,アカタテハの幼虫

2016-11-24 | アカタテハ

一旦幼虫として育ちかけたら,いくら容赦のない寒さが訪れようと止む無し。今日,そんな風景を見ました。

アカタテハ。越冬隊は成虫です。なのに,この寒さの中,幼虫を見かけたのです。

自宅前の土手にカラムシの群落があります。といっても,刈り取られて,その後伸びて来たために,まだまだ背の低い草々の集団です。


そのなかで,何枚かの葉が綴られていました。


そっと中を調べると,アカタテハの幼虫がいました。いかにも寒さが沁みるような感じです。動きも鈍い,鈍い。確認できた数は3。


これから,気温がぐんぐん下がっていきます。間もなく霜が降りるでしょう。すると,カラムシの葉は完全に枯れてしまいます。となると,これらの幼虫は。

アカタテハのいのちはそういうことを計算済みのはず。かわいそうですが,この幼虫は成虫にはなれません。なれないということは,このまま静かに死を迎えるほかないということです。ここでも自然の掟を痛感することになりました。

生態を観察するという中には,こうした姿を目の当たりにしてあれこれ思いを馳せる営みも含んでいます。

 


ジャコウアゲハ観察記(その359)

2016-11-23 | ジャコウアゲハ

10月20日(木)。早朝,アゲハの庭園をジャコウアゲハのメスが舞っているのを目撃。ウマノスズクサを探し求めている動きで,産卵したそう。

10月21日(金)。背のうんと低いウマノスズクサの葉裏を確認。すると,卵がポツンと一粒。しかし,昨日目撃した個体が産付したとはいい切れません。


他に卵はないか,見て行くと,あっちに1つ,こっちに1つ。結局,みんなで3個見つかりました。これから昼間の時間が短くなって,気温が低下していきます。さて孵化するかどうか。それぞれの食草はいたって背が低く,葉が少ないので,仮に孵っても蛹までには至らないはず。今の時期では,草が食べ尽くされているので止むを得ません。

10月26日(水)。やや黒みが見えます。


10月30日(日)。確かに黒っぽい感じ。10日近く経つのに孵化の兆候なし。


11月11日(金)。全体が黒っぽくなっています。でも,もうダメでしょう。



1つの卵に小さな穴が。外敵が外から開けたものでしょうか。

 

11月12日(土)。穴が大きくなっています。


11月16日(水)。穴の大きさ,かたちとも変わらず。

 


結局,3個とも孵化せず。結果,産卵が遅いと孵化しないことがわかります。それが理に適っているのです。小さな観察事実ですが,生態に一歩近づけました。  

 


太陽,くっきりプロミネンス

2016-11-22 | 日記

11月22日(火)。快晴。

ミュージアムの空に,からっとした秋空が戻って来ました。こういう日は,大型反射望遠鏡をとおして太陽がくっきり見えます。運がよければプロミネンスや黒点も。

さて,今日は久しぶりにプロミネンスが見えました。肉眼でくっきりとした像が確認できました(下写真はコンデジで撮影)。感動ものでした。

 


プロミネンスは紅彩とも呼ばれていて,輪郭から綿状に吹き出しているように見える現象です。太陽表面が6千℃なのに対して,この部分は1万℃。周囲のコロナは100万~200万℃。

 


今日見えたプロミネンスと地球の大きさを比べると,たぶん地球は10個程度にはなるでしょう。

地球から太陽までの距離は光で8分18秒。新幹線なら57年。つまり,今見えている太陽はそれだけ先にあるわけです。望遠鏡は宇宙を覗く道具。たまには純粋に時を忘れて,このすぐれものを友とするのはいいものですよ。いつかお越しください。いつでもお越しください。

 


レモンの実り,思いのほか

2016-11-21 | 随想

畑に植えているレモンの木の話です。

春,結実している様子を見ると,ずいぶん少ないなあという印象でした。さっぱりダメだなと思っていたのです。ところが,秋の深まりとともに色づき始めると,葉の間からあちこちに黄が点在していて,意外に量が多そう。


よく見て行くと,木の内側ともいってもよい箇所,つまり外からは死角になっている枝の内側にかたまって生っていたのでした。

粒はそれぞれなかなか充実していて,大きなサイズです。


「知らなかったあ! これはありがたい!」とうれしく感じた次第です。

レモンがたくさんあっても困るという方があります。我が家では例年知人に多くを配ります。中にはレモンが大好きという方があって,とくべつの包装をして10個プレゼントすることもあります。10人に届けると,それだけで100個使います。家でもかなり使うので,重宝にしています。

近くの方が,このレモンを見て「大きめの,良い実や。売ってあげるで」とおっしゃいました。その方は農作物直売所に自家産の野菜・果実を持ち込んでおられ,地域ではよく知られています。その目で一定の評価がいただけたのですから,ありがたいものです。

2月,寒肥を施肥した効果もあったようです。自然は正直なもので,期待に応えてくれたのでしょう。我が家の,実りの秋を締めくくる果実の1つがこのレモンです。