自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

マンサクの開花

2014-01-31 | マンサク

1月31日(金)。マンサクの花のことは,毎年今頃になると取り上げてきました。それほど,わたしには思い出深い花でもあります。

このマンサクが我が家には,5本あります。近縁種ですが,それぞれに花が少しずつ異なっていて趣きがあります。そのうちの3本が今,咲きかけました。

赤花のマンサクです。庭にちょこっと赤があって,あったかい雰囲気を醸し出しています。


黄色い花を付ける,ごくふつうの種です。撮影していると,たまたま小さな小さな昆虫が花に入り込みました。そしてそこで,蜜を吸っている様子でした。


しばらく待っていると,出てきました。毎年見かけた昆虫です。


植木鉢に植えた1本が咲き始めです。一箇所にかたまって花が付いています。微かな芳香も,これだけ花が揃うとすこしは強調できるのでしょう。黄色い花弁が寄り合って,大きな花に似せる作戦なのかもしれません。


北国では雪解けが始まる頃,他の木々に先んじて花を付けます。春を告げる象徴的な花です。しかし今は,まだ厳冬期。雪に閉ざされた雪国では,山のマンサクは雪を被ってじっと寒さに耐えていることでしょう。

一足も二足も先に,マンサクの花をこうしてじっくり見られるなんて,なんだかぜいたくな気分です。どんな昆虫が訪れるか,やっぱり気にしておこうと思っています。

 


“花と実(タネ)”とジャガイモとわたし,よもやま話(番外編 ②)

2014-01-30 | 随想

二つめはチューリップの実と種子の画像です。

学校の花壇で,これだけの実ができたのです。「観察中。切り取らないで!」と札に書いて,観察中であることを周知しておいたお蔭です。これから取り出した種子が発芽したものが,前日ご紹介した発芽写真です(1月24日付けの第11話)。


実を割ると,部屋の構造どうなっているのかわかります。三つに分かれていて,それぞれに種子が二列ぎゅうぎゅう詰めになっています。種が確かに膨らんで,充実している様子が窺えます。 

 


中から取り出した種子を撮ったのが下の写真。日付けがあるのはなんとも感慨深いものです。


次回は,サボテンの画像をご紹介しましょう。ご期待ください。

 


“花と実(タネ)”とジャガイモとわたし,よもやま話(番外編 ①)

2014-01-29 | 随想

つい最近の話題です。現職時代に使ったもの,作ったもので不要になったものを整理・処分していたら,わたしの“宝物”が出てきました。それは,本シリーズに関係する貴重な資料です。なにかといえば,スライドです。

わたしは,当時,スライドで記録を残し,それらを授業で活用することをたのしんでいました。もちろん,スライド映写機も購入して。高性能・高価格のものではなく,じつに簡便な機器ではありましたが,重宝に使っていました。当時の道具としてはなかなかのものだったと思います。

さて,そのスライドは,わたしがすっかり忘れていたものでした。しかし,画像は当時の撮影場面を鮮やかに蘇らせてくれる一コマ一コマだったのです。撮影後40年も経ているので,カビが生え,スゴイことになっていますが,なんとか見られます。

画像の向こう側からライトを当て,コンデジで接写したのが,これから番外編でご紹介するものです。色の変化があり,さらにはカビや埃で汚れ,リバーサルフィルムの劣化等もあって,写りはよくありません。この分を差し引いて,ご覧ください。

まず一つめはジャガイモです。画像を処理したので,こんな色になりました。ジャガイモが地上部分に“生って”います。これは葉が付いていた箇所から出た腋芽が伸びて,その先に養分が貯えられイモ(地上塊茎)となったものです。腋芽が定位置で肥えたものもあります。これを見ると,イモはまさに茎の一部だと理解できます。

おもしろいイモの付き方だったので,記録用にと思って撮っておいたのです。


植物(厳密にいえば維管束植物)のからだは,地上の茎・葉を一セットにした“連続体(シュート)”と,地中の根(ルート)から構成されています。上写真の塊茎(イモ)は茎が太ったもので,その塊茎には目が複数準備されています。この塊茎を植えると,先端(頂部)からは頂芽が何本か萌芽します。これは地中のイモと同様です。併せて,塊茎の周りからは側芽がたくさん出てきます。

これら頂芽・側芽は枝に相当する器官であって,茎を構成している要素です。つまり,塊茎は極端に縮まった茎と見なせるのです。

ややこしいことを書きました。先に“連続体” と表現しましたが,要するに地上部では茎(枝)と葉が相互につながり合って成長している,ということです。

なお,こうした状態でイモができた理由についてすこしだけ。はじめに,これはあくまで予想だという点をお断りしておきたいと思います。本来なら地中のストロンの先が膨らんで塊茎が形成されるのですが,ストロンが成長中になんらかの原因で切れたか,ストロンがうまくつくられなかったために,地上にある腋芽に養分が回されたのではないでしょうか。

よく似た例で,茎を切って挿し木をする実験があります。結果なのですが,あらあらふしぎ,腋芽が膨らみ始めます。その現象を連想させます。

というわけで,この写真はジャガイモの,生物としての実体を教えてくれる貴重な材料といえます。

  


今,アゲハの幼虫は……(また)

2014-01-28 | アゲハ(ナミアゲハ)

1月11日(土)。終齢幼虫は,これまでいたキンカンの葉を離れ,飼育箱の蓋裏に移動。そこで一日静止していました。ここでからだを固定して,前蛹になるのではないでしょうか。 盛んに絹糸を出した形跡があります。そして,胸脚の格好から見てなんとなくこの作業が続いているようです。

 

昨年末から今日まで,最低気温は-3℃,-4℃を頻繁に記録しています。そんな気温では,野外にいたらいのちは大きなダメージを受けると思われます。部屋の中で,マアマアなんとか生き続けているのは,やはり温度に大いに関係あるでしょう。

こうしてみると,温度をコントロールできる温室で,一年中生きている姿が観察できるのは当たり前という気がしてきました。それはあまりにも人為的な飼育法なので,自然とはかけ離れいかがかなという気がしないでもありません。いってみれば,常春・常夏をつくり出して,チョウを騙しているわけです。

その点,部屋の幼虫は自然界の影響を多少なりとも受けています。 緩やかな寒さを感じているはずです。「それだって,季節を欺いているではないか」といわれれば,そのとおりなのですが。

1月12日(日)。 蓋の裏で前蛹になると思っていたら,違っていました。蓋の,他の場所に移動。

1月13日(月)。飼育箱の入れているガラスコップの側面を登っていました。見ると,ガラスに糸がたくさん付いていました。落下しないための防御策です。

 
見ていると,からだを大きく曲げてなんとか葉に乗ろうとしました。


絹糸を出しているのがわかります。動きながらからだを常に固定しよう,落下するのを防ごうとする防衛本能のなさる知恵です。 

 
1月27日(月)。13日以降,葉から蓋へ,と思ったら,また葉へ。と思っていたら,またまた蓋へ。26日まではそんな移動を,じつにゆっくり繰り返しました。ところが,この日,キンカンの葉を挿したコップの水に落ち死に絶えていたのです。なんとー! ほんとうに気の毒なことになってしまいました。わたしが,そうしてしまったというか。寒さでからだが自由には動かせない状態にあって,つい水面に落ちてしまったのでしょう。「これも自然」,そんなふうには割り切れぬ思いが残りました。

このままなんとか無事だったら,どう変化していったのか,気になります。  

 


冬のアブラムシ

2014-01-27 | 昆虫

1月。クリの木でジャコウアゲハの蛹を撮影した後,せっかくなので冬越しをしている昆虫はいないか,確かめてみることにしました。幹をじっくり観察していくうちに,目にとまったのが下の昆虫です。

樹皮とそっくりな色をしているので,目に付きにくい感じです。体長5mm程度。からだを毛で覆って武装しています。外敵や自然環境とのかかわりから,こんな姿を有するに至ったのでしょう。名はまったくわかりません。 


撮影していると,ゆっくり動き始めました。偶然です。寒いのに,ちゃんと動くのです。 


同じ枝にクリオオアブラムシがいました。無翅型で体長3,4mm程。前は卵のコロニーがあって,どっさりかたまっていたのですが,そういう風景は見当たりませんでした。このアブラムシが,ポツリポツリと点在するようなかたちでじっとしていました。 

 


これらの虫にとって,冬を越すのはたいへんでしょう。耐寒性を有する個体が生き残って,いのちをつないできているわけですから,寒さに適応しているといえばそれまでなのですが。 

 


ロウバイと虫

2014-01-26 | ロウバイ

ロウバイの花が咲き始めたという便りが届き始めました。つい先日の気象情報の中でも,映像入りで紹介されていました。

我が家の前栽でも,ほころびかけました。ツヤと厚みのある花弁が,中をしっかり守っています。蕊がちょこっと覗いています。待っていた早春を告げる花です。今どき開花するメカニズムを考えると,いちばんの要因は日長になった刺激を開花ホルモンが いちはやく察知したのかも,です。 


ほんのわずかですが,ここにも。 鼻を寄せると,芳香がほのかに匂ってきました。自然の匂いはほんとうにすてき! この匂いに惹きつけられ,訪れる昆虫がいます。わたしは,この時期,チョウが飛んで来たのには驚いたことがあります。気を付けていれば,ふつうハエやハチのなかまを見かけます。


上写真を撮った翌々日のこと。昆虫がいないか見ると,クモが一匹いました。からだをぎゅっと固めたようにしてじっとしていました。寒さから逃れようとしているのか,ここに来る昆虫を待っているのか,どちらかでしょう。香りの中でじっとしているなんて,なんだか贅沢です。

 
しばらくすると,動きかけました。完全に眠っているわけではなさそうです。

 
これからいったいどんな虫が見られるか,注目しておきましょう。 

 


野菜の冬 ~ニンニクの表情~

2014-01-25 | 植物

ニンニクは健康にとてもよいという話なので,我が家では毎年栽培しています。植え付け時期は9月から10月にかけてです。収穫は5月~6月になります。

収穫したは,料理に使うほか,翌年のタネ球根として利用することにしてます。それで,保存分は風通しのよい軒下に吊るしています。

放置しておいたら,夏を越して夏眠から覚めたようで,秋が深まる頃に芽を出しました。植え付けた球根が発芽するのと時をまったく同じくしています。土がないものの,ニンニクの生理どおりの成長をなしているわけです。


ニンニクは葉の根元が膨らんで,球根状に発達します。数個の小さな球根が茎の周りを取り囲むようにしてできています。一つの分球を,横に切っても縦に切っても,葉が重なっているのがよくわかります。それぞれの葉一片を鱗片(鱗葉)といいます。葉が太っているというのは,そこに養分が貯えられていることを物語っています。

 


アップで写すと……。


野菜は,食べる部分で葉菜,根菜,果菜に分類できます。ニンニクは明らかに葉菜です。しかし,ふしぎなことに,本によって根菜に入れられている例があります。よくわかりません。

球根に貯えられた養分を使って,すこしずつ芽が伸びていきます。ただ,このままにしておくと,栄養分が補給されないために球根はシワシワになって,やがて成長が停止します。

 
今のものでも十分使えるので,料理に使うことにしてます。先日は,これをすり潰してカレーに入れました。味がまことにまろやかになりました。

ニンニク栽培に,これまで農薬を使ったことがありません。自家製の野菜栽培では,農薬を自分でコントロールできるよさがありますね。食の安全・安心は,健康づくりに直結しています。この点,我が家のニンニクは正真正銘の健康食材です。

これからもニンニクにはずいぶんお世話になります。

 


“花と実(タネ)”とジャガイモとわたし,よもやま話(11) 

2014-01-24 | 随想

夏季がくる前に種子をつくり,暑さをこの姿で乗り切ろうとする植物は,暑さに滅法弱いといえます。暑い時期は休眠状態になっていて,やがて日照時間の変化と涼しさを感じてゆっくり眠りから覚めます。そうして,冬を越してすこしずつ暖かくなるにつれて,休眠がはっきり破れます。この,寒さ体験から暖かさ体験への一連の経過が,休眠打破には欠かせません。

この理屈に沿って,種子を一定期間冷蔵庫にいれて低温に馴染ませます。チューリップの種子を数週間低温下に置いておきました。この期間は長いほど効果が上がるといわれています。冷蔵庫から取り出し,それを播種培土に載せました。

この状態で,種子は,寒さの後暖かさを感じることになります。つまり,擬似冬体験をさせた後,擬似春体験をさせるという筋道なのです。

数日後,発芽が始まりました。種子は,わたしの作戦にまんまとはまったのです。


種皮が落ちると,スルッと伸びた子葉がいかにも「わたしはチューリップですよ」と言いたげです。子葉が一枚で,単子葉植物であることが一目瞭然です。

 
しばらく世話を続け,掘り上げました。すると,小さな小さな球根が形成されていたのです。マッチ棒の先ぐらいのものが! これには,たいへん感動したことを覚えています。この球根を,毎年栽培していくと,すこしずつ大きく膨らんでいきます。5,6年して初めて花が開くのです。チューリップの野生種はそうした生態を今もなお繰り返しているはずです。わたしは発芽を試みただけですが,チューリップの種子について考える機会が得られたことをほんとうにうれしく感じました。


我が国でチューリップ王国といえば,富山県が浮かんできます。そこでの品種改良の話にふれると,ジャガイモと同じようにまことに地味な作業が続けられていることが理解でき,こころが動かされます。

5,6年後に開花して,その花を見て優良品種を選抜します。選抜された品種を市場に出荷するには,球根の数を一定数にまで殖やさなくてはなりません。そのための年数が15年程度かかります。ということは,一つの品種が誕生するには,種子を植えてから20年もの年月を掛けなくてはならないということなのです。

チューリップの繁殖が球根と種子によること,種子は花後にできること,チューリップは種子植物であること,そうした事実は,子どもに科学の目を育てる刺激になります。「花と実」という学習の範疇にとどまらず,「科学的な見方・考え方」と鍛える際の材料になります。

チューリップの花は何のために咲くのか。種はどこにできるのか。球根が種なのか。種を蒔くと発芽するのか。なぜ球根を植えるのか。

見慣れている,見慣れてきた花壇のチューリップが,じつは,思いがけない側面をもった花であることが見え始めます。しかし,どう考えようと,花が咲くものはやっぱり種子植物なのです。花の咲いていたその後に,まさに種子ができるしくみを備えているのが種子植物なのです。チューリップは,子らが感動を持って,そうした生物的事実を学べる可能性を秘めているわけです。

 


ジャコウアゲハ観察記(その289)

2014-01-23 | ジャコウアゲハ

厳冬期を迎えた今,ジャコウアゲハの棲息地の現状を確かめておこうと思い,訪れました。継続観察には,そのときどきの確認が欠かせません。

無事に蛹になっているのは,見る限りでは10個体程でした。この現状を前にして,まことに心細く思われました。なにしろ,これまででいちばんすくないのです。

ところで,蛹は自然物,人工物を選り好みすることなくどちらにも付いています。それだけ,環境への適応性が大きいといえば,そのとおりなのでしょう。しかし,やっぱり,草や木にある蛹は本来の自然環境と溶け合っています。ぴったりお似合い,というか。撮影するにも,撮り応えがあります。

クリの太い枝の下側に付いています。高さは3m程。枝は横に伸びており,それを見上げた感じで写しました。

 
別の枝にも付いていました。やっぱり下側に。


冬はいのちが危険にさらされる季節です。そうでなくても,冬を迎える前には,いろんな災いが待ち受けています。枯れた草に付いている蛹が,無惨にもいのちを絶っています。 


すぐ脇で,蛹化直前の前蛹が硬化していました。 


一頭の成虫が産む卵のうち,無事に成虫にまで育つ割合はほんの1,2%。越冬態についていえば,低温と凍結は最大の難関でしょう。寒々とした風景の中に,いのちのいろんなかたちがあります。

 


今,クロアゲハの幼虫(また)

2014-01-22 | クロアゲハ

1月11日(土)。残った終齢幼虫は2個体でしたが,ついこの間,このうちの一つが死にました。自然死です。やはり,寒さが身に応えたのだと思われます。

残りは1個体。アゲハの幼虫と時期を同じくして,飼育箱の蓋裏側に移動してきました。この幼虫もまた,前蛹期を迎えたのだろうと思われます。


ただ,他の蛹や,羽化後の殻があって,糸を出しているのかどうか,よくわかりません。

1月12日(日)。わたしが蓋を動かしたためかわかりませんが,朝,幼虫が横に移動していました。そして,夜見ると,飼育箱の底にいました。もしかすると,落下したのかもしれません。そこにいるものの,まだからだは立つ元気さがありました。

1月14日(火)。朝見ると,同じところで弱々しくからだを横たえていました。尾端からは絹糸がモサモサッと伸びていました。夜もまた色,様子ともに変化は感じられません(下写真)。

 


ところが,部屋を暖かくして写真を撮っていると,なんと歩き始めたのです。じつに頼りなげですが。やはり寒さが動きを鈍らせていたようです。これでは,今の段階がどの辺りなのかちょっとわからなくなりそうです。

そんなことを思いながら,拡大写真を撮りました。頭部矢印のところに,アンテナとそこから生えている機械感覚毛が見えます。これは触覚刺激を感じる器官です。なお,頭部に付いている粉は埃です。

 
これをトリミングしてみましょう。機械感覚毛の根元には感覚細胞がたくさん集まっています。感覚毛はソケット形式のアンテナから生えていて,それが縦横に動くようになっています。その動きが感覚細胞でキャッチされ,神経回路を通して信号が脳に伝達されるのです。


接写の世界は,次々に新たな知見を届けてくれます。