地面の落ちた種子が発芽するのはごくふつうの現象です。しかし,種子が穂に付いたままの状態で発芽するのは,結構珍しいように思います。というか,そう目にすることはありません。
たとえば,水田でイネが倒れ,雨が続いたとき,稲穂から芽が出ます。同じように,麦もそうです。
栽培植物でもそうですから,野生植物でそのような現象はもっと起こっているのかもしれません。しかし,意識して探しているわけでもないので,目にすることは極めてすくないのでしょう。もっとも,野生の場合は種族維持のために種子を散布する方向に進化してきているために,事例はそう多くないのかもしれません。
ところでその現象を,つい先日シロツメクサの花穂で見かけました。
シロツメクサはマメ科植物の代表。公園やグラウンド,空き地でたくましいほどに増殖していきます。それだけ,生き残り戦略に長けているといえます,
シロツメクサ群落でモンキチョウの観察・撮影をしているとき,偶然足元に芽をやりました。そこに,倒れて芽を出している穂があったのです。梅雨のことですから,地面付近は湿り気がたっぷりです。花弁が水気を含み,適度な水分を供給し続けているのでしょう。
種が見えます。種皮を付けた葉が見えます。双葉が見えます。
他にもないかと思って探すと,ありました。あちこちに結構あるのです。
自身の教職経験を思い出しても,シロツメクサは発芽の実験材料としてたいへん役立つだろうと思います。野生植物の意義をたいせつに扱う教材観の持ち主には,『花と実(種)』『種子の発芽』などで積極的な活用をお奨めしたいですね。観察を続けていると,事象との出合いが『教え方』『学び方』にヒントを与えてくれることはよくあります。「この材料でこう教えたいな」「自分が子どもだったら,こう学びたいな」というふうに。