自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

シロツメクサの発芽

2015-06-30 | 植物

地面の落ちた種子が発芽するのはごくふつうの現象です。しかし,種子が穂に付いたままの状態で発芽するのは,結構珍しいように思います。というか,そう目にすることはありません。

たとえば,水田でイネが倒れ,雨が続いたとき,稲穂から芽が出ます。同じように,麦もそうです。

栽培植物でもそうですから,野生植物でそのような現象はもっと起こっているのかもしれません。しかし,意識して探しているわけでもないので,目にすることは極めてすくないのでしょう。もっとも,野生の場合は種族維持のために種子を散布する方向に進化してきているために,事例はそう多くないのかもしれません。

ところでその現象を,つい先日シロツメクサの花穂で見かけました。

シロツメクサはマメ科植物の代表。公園やグラウンド,空き地でたくましいほどに増殖していきます。それだけ,生き残り戦略に長けているといえます,

シロツメクサ群落でモンキチョウの観察・撮影をしているとき,偶然足元に芽をやりました。そこに,倒れて芽を出している穂があったのです。梅雨のことですから,地面付近は湿り気がたっぷりです。花弁が水気を含み,適度な水分を供給し続けているのでしょう。

種が見えます。種皮を付けた葉が見えます。双葉が見えます。


他にもないかと思って探すと,ありました。あちこちに結構あるのです。


自身の教職経験を思い出しても,シロツメクサは発芽の実験材料としてたいへん役立つだろうと思います。野生植物の意義をたいせつに扱う教材観の持ち主には,『花と実(種)』『種子の発芽』などで積極的な活用をお奨めしたいですね。観察を続けていると,事象との出合いが『教え方』『学び方』にヒントを与えてくれることはよくあります。「この材料でこう教えたいな」「自分が子どもだったら,こう学びたいな」というふうに。 

 


ジャガイモ栽培物語《タネイモ編》(17)

2015-06-29 | ジャガイモ

6月28日(日)。ホッカイコガネが順調に育ち,イモの収穫時期が近づいています。今日,近所のタクさんから「ジャガイモを掘ったったか?」と聞かれました。タクさんはもう収穫を終えられたとか。

 


実が膨らんでいます。随分大きくなってきて,ほとんどがミニトマトほどの大きさになっています。色は白っぽく,あるいは黄色っぽくなりつつあります。これは熟している証拠。


この時期になると,実は落下し始めます。株から伸びた茎をグッと起こして地表を見ていくと,落ちた実があちこちに見つかります。


これらの実がまだ茎に付いている時期に,実の数を数えなくては実の生り具合が正確にはわかりません。それに,状況をわかりやすく人に伝えられそうにありません。

印象だけで,「相当に結実している」とか「びっくりするほど果実が生っている」といった表現をしても,聞き手は状況を想像しにくいでしょう。それに科学的根拠にもとづいた話題になりえません。“相当”“びっくりするほど”といった量的表現は客観的な尺度にもとづいたことばではないからです。客観性に欠けるこれらのことばは,使う人のそのときどきの印象で選ばれます。そのため,当たり前ながら信頼性にも欠けます。

人によって生じるこうしたズレを避けるために、このほど、実の生り具合について客観的なデータを集めました。結果については,近くアップしたいと思っています。一言でいえば,わたしにとっては驚くような数値が得られました。自分でいうのはおかしいのですが,説得力のあるデータではないかと感じています。どうぞおたのしみに……。

さて,今日現在の実の様子を写真でご紹介しておきます。赤いビニルテープは,実を数え終わった株・房を表しています。

 

 
ここに,地表に落ちた実が。

 



できるだけ落下前に数えなくては,どの房に付いていた実なのかわからなくなります。

 

 
実が熟すると,房がその重みで地表に倒れ掛かる例が多く見られます。実の生る風景にすっかり慣れてしまいましたが,初めての人にはきっとスゴイ景観でしょう。

7月に入ると,いよいよイモを掘り上げることになります。

 


ジャコウアゲハ観察記(その346)

2015-06-28 | ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハの盛んな羽化。それはそれはもう,大したもの。

いちばん多い羽化場所はレモン。緑の葉に黒い翅のコントラストが,その存在をくっきり知らせてくれます。 

 
レモンの根元近くに生えたハンゲショウでの目撃事例。羽化した途端に交尾したペアがいました。たぶん,羽化して間もないメスを,オスが目敏く見つけたのでしょう。下写真は,上がメス,下がオス。

 
羽化したばかりの証拠に,同じハンゲショウの葉に殻が残されています。

 
いのちのドラマは絶えません。 

 


モンキチョウ,産卵。孵化へ。(2)

2015-06-27 | 昆虫

6月15日(月)。夜。昼間,シロツメクサに付いた卵を3個採集して,植木鉢に植え持ち帰りました。それをきちんと記録しておこうと思い立ち,室内で撮影することに。びっくりしたことに(モンキチョウの卵の観察は初めて!),色がきれいな赤みを呈しているのです。3個とも,同じ色をしています。これは着実に孵化に向かって変化している証拠。


6月16日(火)。朝。色は同じように見えます。


拡大してみると,色の微妙な違いや表面模様がよくわかります。“自然の造形美” といった感じが強くします。産み付けられる前,体内でどんなふうにこのかたち,模様がかたちづくられるのでしょうか。小宇宙のスゴサが伝わってきます。


モンシロチョウの卵は数日で孵化するようなので,朝夕の観察が欠かせません。変化を見逃すのはまことに勿体ないこと。 

そして,夜。見ると,1つの卵に異変が! 異様に白っぽくなっているのです。よく観察して,もうびっくり。なんと外敵がいたのです。ごく小さな昆虫が卵に取り付いて,どうやら中身を食している模様。体長は3mm程度でしょうか。こんな小さないのちを,別の小さないのちに奪われるとは。


中身がなくなった卵は,当たり前のことながらペシャンコに。かなりの時間そこにいた天敵は,どうやら食べ切ったようで,動き始めました。

 


しばらく卵の近くを歩いていました。 

 
拡大してみましょう。


翅を持った昆虫です。しかし,飛ぶにはあまりにも小さ過ぎる感じがします。

これで,観察を継続できる卵は2つになりました。 

 


ヤマトシジミの成長(7)

2015-06-26 | ヤマトシジミ

6月13日(土),夕方。残った2個体のうちの一方が,どうやら羽化間近な様子。からだ全体が黒っぽくなって,今羽化してもおかしくない状態になっています。

6月14日(日)。午前0時30分。6時間,「羽化はまだか,まだか」と待ち続けたものの,その気配なし。日曜日は所用が入って,出かけなくてはなりません。 それで,止むを得ず寝ることに。


早朝に目が覚めて,蛹の様子を確認。まだ羽化していない! 5時48分撮影の写真が下のもの。 腹部の背が白っぽくなっているのは,皮と本体との間に,空気層ができているからです。これで,いつ羽化への準備がしっかり整ったことになります。


6時59分。 下写真は,羽化直近の最後の写真です。


7時05分。一瞬蛹に目をやると,微妙な動きが! 細かい動きはわたしの裸眼ではちょっとわかりませんが, このときはなにか虫の知らせのようなものがあった気がします。「あっ」と思い,大急ぎでカメラの電源とフラッシュっをオンに。そこから懸命に撮りました。


殻が割れ,成虫のからだが下向きに出始めました。黒と白が斑になった触覚。ヤマトシジミの,この昆虫ならではの特徴です。触覚が現れ,複眼が見えてきて。
 

 
脚が出てきて。


7時05分。 翅が現れ……。からだを反転させて,上方向に向きかけました。


7時06分。 翅をすみやかに広げなくてはなりません。ほんのすこし歩いて移動。「この空間で翅を伸ばそう」と決めたようです。成虫は静止しました。羽化が始まってからこの時点までで,1分余り。

 
なんとラッキーな目撃! まず,わたしが起きているときの出来事であるという点,次に在宅時の出来事だったという点,さらには,羽化の瞬間わたしの目が蛹に向いたという点に感謝。こんな好条件が重なることは,度々あるものではありません。

お蔭さまで,納得のゆく画像が得られました。残るはあと1個体。 

 


ダンゴムシの赤ちゃん!

2015-06-25 | 生物

しごと場によく来るKさん(小1年)が飛び込んできました。

「ダンゴムシが赤ちゃんを産んだのを見つけたよ!」「見て!」。 玄関でわたしを呼びながらそういうので,行ってみました。手には金属製の容器。その中に,ダンゴムシが入っていました。見ると,白っぽい赤ちゃんがいっぱい!

 

 
事情を聞くと,先ほど石を動かしたら,赤ちゃんを抱いた親がいたといいます。そして,「ぼく,ダンゴムシが大好きなんだ」とも付け加えました。

これは見事な光景です。たまたま一眼レフカメラを持っていたので,撮ったのが下写真。赤ちゃんが元に戻っていました。体長は1mmにも達しません。ふしぎなふしぎな,そして驚くべき生態です。

 


ダンゴムシは卵が体内で孵化して,出てきます。一匹の親からだいたい100匹生まれるといわれています。一生のうち7回脱皮して親に育ち,寿命は3年なのだそうです。 

刺激的な場面を持ち込んだKさんに感謝。 

 

(後日追記) ダンゴムシ誕生を観察した関連記事「ダンゴムシの生態を確かめたくて(4) ~赤ちゃんだよ!①~」をアップしました。 2020.5.31記す

 


オオバコとヒメヒラタアブと

2015-06-24 | 昆虫と花

オオバコは他家受粉をする植物の典型だといえます。近親交配を避け,他のオオバコの花との送受粉を効率的に行えるように,同一穂内で雌性先熟のきまりが成立しています。

そして,受粉が昆虫を頼らずに風頼みなのです。言い換えると,風媒花というわけです。

ところが,おもしろい事例があります。このオオバコの花にヒメヒラタアブがやって来て,花粉を舐める例があるのです。わたしには,二度目の観察事例です。

 
ふしぎなので,よくよく観察してみようと思いました。見ているうちに,妙なことに気づきました。オオバコの花はオシベとメシベが同じ時期の同居するはずがないのに,両方がちゃんと出ていたのです。下写真では,ふさふさとしたブラシ状のものがメシベです。それを取り囲むようにしてオシベが出ています。


ヒラタアブの口吻の様子を見ると,明らかにオシベの先である葯に触れています。 


オオバコの,ふつうの花のしくみとはずいぶんかけ離れた構造ですが,ヒメヒラタアブのこの行動は受粉になんらかのかかわりがありそうな気がしてきます。

自然界は単純な割り切り方では解釈が成り立たない例があります。今回の例もそれに当たります。 

 


ヤマトシジミの成長(6)

2015-06-23 | ヤマトシジミ

6月13日(土),早朝。葉裏に付いた蛹を見ると,翅が黒くなっています。「羽化,間近!」と感じさせます。それで,注意深く見守ることに。

結果としては,羽化直前に撮ったのが下写真です。

 


この9分後,わたしが目を離している隙に羽化し終えていました。あとには殻が残され,当の成虫はどこかに歩いて……。

 


と思って探すと,植木鉢の縁でしずかに翅を広げていました。

 


残念! がっかりしましたが,こういう経験は何度もしてきているので,まあ,これ以上コメントすることもありません。植木鉢には,あと2個体が残っています。さて,昼間に羽化するといいのですが……。

 


エグリトラカミキリの訪問

2015-06-22 | 昆虫

田舎に建つ家は,比較的,あるいはうんと自然に恵まれた環境にあるため,家の中やら周りに様々な生きものが現れてもふしぎではありません。「ほほーっ」と思うようなものが,度々訪れます。ふだん訪れているのかもしれませんが,それほど気にかけないでいると,「珍客だなあ」と,思ってしまうのかも,です。

このエグリトラカミキリも,その一つです。 


網戸の内側に付いていたので,外に出してやりました。体長がほんの1cm内外。独特の黒い紋様は,一度見たら忘れられません。からだは小さくても,立派な風貌です。いかにもカミキリ類だという雰囲気が漂っています。 


幼虫はクヌギやフジなど,広葉樹の朽木を食べて育つそうで,成虫もそうしたものがある環境下で生きているということです。それではなにを食べているのかといえば,花粉だとか。我が家には,花を求めて飛来したついでに侵入したようです。 

一つの事実から紐解いていけば,物事はすこしずつ見え始めます。ただ見るのではなく,“観る” 習慣を積み重ねていこうと思います。

 


モンキチョウ,産卵。孵化へ。(1)

2015-06-21 | 昆虫

6月15日(月)。 シロツメクサの群落で,モンキチョウの産卵風景を見ました。

モンキチョウのメスがどうも群落に関心があるらしく,立ち去ろうとしません。それで,しばらく様子を見てみることに。すると,葉にとまりました。そして,パッと舞い上がって,別の葉に移動。「これは産卵行動だ!」と直感。今度は追うことにしました。コンデジはスイッチオン状態です。

すると,あるとき葉に降りて,一瞬腹部を葉の表面に付けました。急いでシャッターを切りました。下写真のそのときのもの。見ると,卵が一つ付いています。やはり産卵だったのです。ほんとうに短時間の出来事でした。

 
チョウが去ったあとを見ると,確かに卵がありました。白い,細長い見事な卵です。長さ0.8mm。

 
「葉の表面に産み付けるのだったら,他にも見つかるのでは?」と思い,探してみることに。すると,ありました。


まだありました。「こんなくっ付き方で,よく落ちないものだ」と感心してしまうほどの格好をした卵も。 


時間をかけて探せば,まだまだ見るかるでしょう。

「よし,このシロツメクサを植木鉢に植えて観察しよう」と思い立ち,さっそくそうすることに。