自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ジャコウアゲハ観察記(その268)

2013-09-07 | ジャコウアゲハ

以下は『ジャコウアゲハ観察記(その263)』の続き話です。

9月2日(月)深夜。たまたま,孵化しないか気になって見ると,びっくりする光景が飛び込んできました。一匹の幼虫が卵に取り付いて,どうやら外から殻を食べるようなしぐさに見えます。「まさか,食べはしないだろう」と思っていたのですが,数分経って再び見ると,やはり同じ行動を続けていました。確かに食べているようです。食べているように見えているのですが,それでもわたしは「ほんとうにその気になっているのか」と半信半疑の気持ちです。

外側から殻を食べるのは,たぶんたいへんな苦労があるはず。歯が立たないということばがあるぐらいですから,丈夫な曲面に歯が食い込むのかなと思えてきます。

しばらく見ていると,卵のかたちがほんとうにすこし変わってきた感じがしました。どうやら穴が開いた模様です。ということは,たしかに食べているってこと! 中にいるはずの幼虫はいったいどうなるのでしょうか。

幼虫は一度も休まず,貪り食うようにして殻を食べ続けました。その間,わたしは中の幼虫らしき姿は見ませんでした。それを幼虫が食べていると思われる光景も目にしませんでした。これはふしぎな話です。もしかすると,不完全な卵で,空洞だったのかもしれません。

幼虫は殻を食べ尽くしました。ここまでで50分ばかり。食べ終わると,じっとしていました。そうしてやがてその場所を離れました。

幼虫がなかまである卵を食べるのを見たのは,これが初めてです。食草があるにもかかわらず卵を食べようとし,ついには食べてしまった行為の意味をどう考えればいいのでしょうか。まちがいなく共食いの一種です。こうしたことがあるから残忍だというふうには思えません。まったく偶然の出来事として,食べようとしたにすぎないでしょう。この偶然の例が,あまりにも衝撃的なためこの出来事は一層印象に残りそうです。

孵化せず残った卵はあと一個。二日後の様子は下写真のとおりです。同時に産み付けられたと考えると,どうやらいのちは停止してしまっているようです。

残念な結果になりそうですが,しかたありません。