自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

意外な出合い,アサギマダラ(続)

2015-10-31 | 昆虫

ところが,ところが,びっくりすることが重なっておきたのです。

同じ日(10月30日)の午後,アゲハの庭園傍の畑で作業をしているとき,アサギマダラが飛来したのです。風に乗って,ひらっひらっと庭園上空を優雅に舞いました。大急ぎで捕虫網を取り出してきて,あとを追いました。「どうか,遠くに行かないで」と祈る気持ちで。

すると,畑横にある隣家の畑に舞い降りていたのです。そこにはコスモスが植えられていて,今,花盛り。ちょうど蜜を吸っている最中でした。カメラを向けて近づいていくと,パッと舞い上がりました。「あっ! 残念!」。

「もう一度降りて来て!」と願いながら,行方を追っていると,またコスモスの花に降りてきました。「ほっ!」。今度こそ写真に収めようと思って,慎重に慎重に近寄りながら,シャッターを切っていきました。それが終われば,捕らえてマーキングしたうえで放ちたいと思っていました。


部分拡大してみます。確かに口吻が蜜源に向かって伸びています。


と,その瞬間! パッと花を離れて上空に舞い上がっていきました。そして,気流に乗り,屋根の向こうへと消えていったのです。「あー,惜しいことをした!」「でも,写真だけでも撮れたんだから,サイコー!」。そんな気持ちでした。

ともかく,ドキドキするひととき。写真を見ると,口吻まで写っているので,大満足!

あの個体は,はぐれ個体なのでしょう。渡りの主要ルートにうんと近いなら,他の個体をもっと見かけるはずです。にもかかわらず,今日はアサギマダラを2頭も見ることになりました。まあ,そのルートに近いといえば近いということなのでしょうか。

なんともラッキーな農作業になりました。最高にハッピーな一日になりましたー!

 


意外な出合い,アサギマダラ

2015-10-30 | 昆虫

我が家で直に確認したアサギマダラは,これで3回目。といっても,今回はシュウさんが今朝(10月30日)早々,我が家に持ち込んで来られた個体です。

シュウさんは田の耕作に忙しい方で,早朝から田に出かけて管理・耕作に勤しんでおられます。そのとき,畦の草の上にいたということで,さっそく持って来られたのです。「ヒデさん,珍しいチョウを見かけた。草の上で横になっていたので,なんというチョウかなと思うて,持って来たんや」。そうおっしゃるので,手に持たれたビニル袋のなかを覗くと,アサギマダラだったというわけです。

海を越えて渡りをすることで知られたチョウであること,生きていればマーキングして放つと研究に役立つかもしれないこと,そんな話を簡単に伝えてから受け取りました。どうやらいのち絶えている様子です。それで,とにかく写真を撮って記録しておくことにしました。

 

個体を仰向けにして撮りました。「こんな模様がよくぞ現れたものだ」と感じ入る姿です。まるで自然がつくり出したステンドグラス!
 


背側から撮りました。こんな白斑紋様のチョウを,わたしの地域で見かけた人はまずいないのではないでしょうか。 

 
次はアップ写真です。胸部に生え揃った毛,黒地に白いぶち。ほんとうに特徴ある姿です。


さらに倍率を上げて撮りました。口吻は単純なストロー構造ではありません。毛に付着した黄色いものは,たぶん花粉なのでしょう。花を巡っていた証拠といえそうです。 

 
前方向から両眼を見ました。半球の複眼は,全方位をカバーしているように見えます。


さらに,部分拡大してみました。眼には,個眼が無数に並んでいる様子がわかります。写真の左右方向の長さは5mm程度です。じつに小さな世界です。 

 
翅を,ミクロの目で観察してみましょう。小さな小さな毛が,それこそ無数に生えているのがわかります。いろんなものとの接触や,防水などに大いに貢献しているのでしょう。


渡りの途中,いのちが絶える個体は多いはず。たまたまその個体が,シュウさんの目に触れてわたしのところに持ち込まれました。この個体から学ぶことはたくさんあります。学ばないと申し訳ありません。 

 


サツマイモの花!(8)

2015-10-29 | 

胚珠を観察したくて,子房を解剖することにしました。

まず,萼と花弁を除いて子房の膨らみを確認しました。オレンジ色の部分は蜜腺ではないでしょうか。オシベの根もとにあるもじゃもじゃの毛は,蕊を保護するとか,蜜が簡単にとられないようにとか,なんらかの意味があるはず。 


子房を縦に切って断面を見ました。切るのは思ったほどむずかしくはなく,カッターナイフでじゅうぶんでした。白い胚珠が2個向き合ったように入っています。 

 
拡大すると,一層わかりやすくなります。

 
次に,子房には胚珠がいくつ入っているのか,見ることにしました。別の花を使って,まず上方向から見てみましょう。蜜腺から蜜が滲み出しています。


この子房を横方向に切って,断面を見ましょう。胚珠の個数がわかるでしょう。4個です。アサガオなどと似通っています。

 

 
ここまで来れば,サツマイモの花の構造がかなり見えてきました。

あの畑のサツマイモはごくふつうの品種です。なのに,あの場所でだけ,どの株にも,といってよいぐらいに花が咲いているのです。ふしぎでしかたありません。ここまで追求が深まったのも,偶然の出合いのお蔭。感謝。 

 


サツマイモの花!(7)

2015-10-28 | 

花粉が付かない場合,柱頭にどんな変化があるのでしょうか。24時間後,褐色に変わるのかどうか。その他の変化が見られるのか。48時間後はどうか。それを調べてみました。

開花している時点での柱頭の様子です。


上写真を撮ったときから,6時間が経過。花弁が閉じかけています。変化があるようには感じられません。

 


24時間が経過。花弁はすっかり閉じられています。観察のためにそれを取り除きました。ところが,ここで大失敗。柱頭が花柱から,蕊の根もとに落下。やむなくそれを撮影したのが下のコマです。褐色に変わっています。ところが,表面に花粉が付着しているのです。「しまった!」。 これは花のなかで自然に蕊が付いた結果なのか,わたしの不注意で付けたのか,わかりません。


拡大してみましょう。確かに花粉が付いています。柱頭の穴は,花柱の先端が入っていたところかと思われます。

 
この観察実験は再び仕切り直しです。今度は,蕾のときにオシベを取り去ることがポイントになります。 

 


葉菜を食べる幼虫,アオムシ

2015-10-27 | 昆虫

野菜を栽培していると,厄介なのは虫退治。

我が家の今の被害状況は,ホウレンソウ,ミズナ,ダイコン,カブ,……。家族が食べる食材なので,極力農薬を使いたくありません。適当に放っておくと,どんどん食べられます。ミズナは完全にレースみたいになっています。二十日ダイコンもひどいものです。ネギだって,どんどん食べられていきます。

農薬を使わないのであればどうするか,です。もう,ネットを被せて野菜に虫が付くのを防ぐしかありません。ハクサイ,キャベツ,それにブロッコリーについては,なんとかネット作戦が功を奏しています。

カブを見ると,葉が相当に食べられています。


「これは,例のカブラハバチかアオムシの仕業だな」と思って点検すると,当たっていました。アオムシはモンシロチョウの幼虫です。あちこちにたくさん!


小さな一枚の葉に,なんと2匹もいるのを発見。これはもう,堪りません。


かわいそうですが,食材を確保する以上,捕って処分するほかありません。捕っているときに見かけたのが成虫。葉の裏にいて,静かにしていました。産卵に訪れたついでに休憩していたのでしょう。これはこのままにしておきましたが。


畑仕事は草との戦いでもあり,虫との戦いでもあります。 

 


サツマイモの花!(6)

2015-10-27 | 

サツマイモの花を訪れる昆虫のことが気になって,改めてその畑を訪れることに。新しい道具はルーペ。

花を調べ始めて,すぐ目に入ったのはアリです。

 


花の奥はどうなっているのだろうと,いつもの好奇心が湧いてきました。さっそくルーペで覗いてみると……。すると,驚くべき光景が! アリが何匹も蜜源で活動しているのです。「これはすごい!」。思わず呟いていました。

アリをびっくりさせては元も子もありません。そっと,そっと,撮影の準備にかかりました。花の視界をわずかにさえぎる葉を横に動かし,写しやすいようにしました。そうして撮ったのが下写真です。

 


数えられるアリは6,7匹。花弁の上の方にも薄っすらと写っていますから,最大で10匹ぐらいいたのかもしれません。

そのうちに,メシベの柱頭に登ってきたアリがいました。しかし,受粉には直接は貢献しているようには思えません。

さらに,ドキッとしたことが! アリの写真を撮っているとき,ハキリバチのなかまが1匹飛んで来て,目の前の花のなかに入っていったのです。ほかの花でなく,なんと足元近く花に! 花弁の色が虫をうまく誘ったようです。もう大慌てで撮ったのが下のコマ。これは 大特ダネといっていいかと思います。ハチはすぐには飛び去ろうとせず,しばらく蜜を吸っているみたいでした。あれだけたくさんの蜜が準備されているのですから,吸蜜に時間をかけるのは当たり前といえば当たり前でしょう。


ハチの姿勢を見ると,送受粉に大いに貢献していることがはっきりわかります。

偶然の観察事実とはいえ,なんとラッキーな! 「畑に行ってよかった! 」。そんな気持ちが込みあげてきました。 

 


サツマイモの花!(5)

2015-10-26 | 

今度は,柱頭に花粉を付けて付けて観察することにしました。人工授粉の要領です。白い柱頭に、白い花粉を付けるのですから,なんとも輪郭がはっきりしない光景が開けます。それで,光を横から当ててみました。

 

 
花粉がどっさり付きました。柱頭の大きさと比べると,はるかに小さい球形をしています。直径は0.05mm。表面の模様はもっと拡大しなくてはわかりません。

 


授粉後24時間が経過してから観察しました。観察風景は驚くべきものでした。柱頭の色がすっかり褐色に変化していました。それを支える花柱及び花粉は白いまま。もしかすると,受粉しなかったらこうも早く変色しないのかもしれません。

 


柱頭に付いた花粉は,花粉管を出し,花柱にある通路に入っていきます。管の先が子房にある胚珠と受精して,種子形成への道を歩むのです。わたしは,鉄砲ユリの花粉管を観察した経験があるだけですが,花粉管が動きながら伸長する様子は驚きの何ものでもありませんでした。今も鮮やかな記憶として残っています。

48時間後。柱頭あたりの色合いに変わりはありません。ただ,花柱が傾いてきた点を除いては。


柱頭を拡大してみると,さらに驚いたことに,かたちが詳しくわかりかけてきたのです。柱頭はイガグリ状の球がかたまっています。花粉の表面は突起がたくさん!

 


仰天! 「ほほーっ!」の世界が開けています。

やってみなくちゃ、わからないものです。わかったつもり,ただ見ただけ,そんなうわべの見方をしているだけでは自然は扉を開いてくれません。 

人工授粉させないで,そのままにしておくと柱頭の変色のしかたはどうなのか,知りたくなってきました。やってみます。

 


サツマイモの花!(4)

2015-10-25 | 

今度は,花弁を取り去って蕊の様子をかんさつすることにしました。撮影にあたっては,蕊に立体感をもたせるために横方向から光をあてました。 

花の咲き始めでは,オシベがメシベをしっかり包むようにしています。このとき,メシベは受粉可能な態勢なのでしょう。一方,オシベの葯はまだ閉じられていて,花粉がはじき出されていません。


時間が経つにつれ,オシベがメシベからわずかに離れつつ,葯から花粉がこぼれかけます。花に入った昆虫がまずからだに付いた花粉を柱頭に付けます。奥にある蜜を得ようとからだを突っ込んだとき,そのからだに花粉が付きます。この花粉は他の花に運ばれることになります。

こうして受粉が確実に行われるとともに,近親交配が避けられることになります。おおよその解釈は,これで当たっているでしょう。したがって,サツマイモの花ではオシベ・メシベの高さがちがっていることがとても重要な意味をもつと思われます。 

 


柱頭をよく見ると,無数の凹凸面で成り立っていることがわかります。ただ、デコボコといっても、実際はどんな様子なのか、写真ではじゅうぶんにはわかりません。花粉をより確かにキャッチする構造だということだけは、はっきりしています。 


部分拡大してみましょう。 柱頭の横幅は1.1mm。目を凝らして見ると,表面に微細な毛が生え揃っているようにも見えます。このレベルになると,もう顕微鏡を必要とする世界になります。なお,粘液らしいものが分泌されているようには見えません。 

   
初めて見る,サツマイモに隠された微小世界です。レンズをとおして,驚がくの事実が見えてきました。

それでは,人工授粉のつもりで花粉を柱頭に付けてみたら,なにか変化が見られるのでしょうか。思い付いたらなんでもチャレンジ! 結果は次回に。

 


サツマイモの花!(3)

2015-10-24 | 

持ち帰った花を調べました。初歩的ながら解剖学的な手法でしくみを探るのです。

外から見たメシベ。“サツマイモならでは”の特異な柱頭です。ぼこぼこっとした形状は,もちろん,花粉を受け取りやすいはず。 


花を縦方向に切って,断面を観察しました。メシベがぐっと突き出して,その周りを5本のオシベが取り囲んでいます。


蕊の先付近を見ると,特徴ある様子が迫ってきます。


メシベの根もとは膨らんだ子房。種子の赤ちゃん“胚珠”が入っています。


その子房をうまく縦に切れないかなあと思って,切ってみました。道具はカッターナイフ。しかし,うまく切れませんでした。辛抱強くすればできるはずですから,もう一度チャレンジしてみます。

うまくいけば,胚珠が見えるでしょう。見えたとしたら,アサガオのそれに似ていることでしょう。

蜜源のことが気になって,新しい花で上から奥を覗き込むことにしました。それでわかったことなのですが,蕊の根もと周りにはたくさんの蜜が滲み出ているのです。液体がポッコリと膨らんで溜まっています。その辺り一帯には,網状の器官が張り巡らされています。これが蜜を分泌しているとはいえないまでも,蜜との関係は当然あるはず。


ついでに,蜜にちがいないか,味を調べてみました。爪楊枝の先を付けて,そうしてわずかに付いた液体の味を確かめるのです。すると,どうでしょう。かすかに甘さが感じられたのです。妻にも同じことをしてもらいましが,わたしとまったく同じ感想でした。なんだかミツバチの気分に浸れ,ハッピー!


蜜が出ていて,その蜜が昆虫を招く大道具であることは明らかです。

もっと近づいて観察したらどんな世界が広がっているか,試みました。すると,予想外の姿が見えてきたのです。結果は,お・た・の・し・み,に。

 


サツマイモの花!(2)

2015-10-23 | 

近寄って花の写真を撮りました。ヒルガオ科の花らしい姿が,きれいな曲線を描いて開いています。


花の奥は色が極端に濃くなっていて,ちょうど中心部にめしべがニョッキと頭を覗かせています。花に「どうしてそこは濃い色なの?」と尋ね,答えてくれるとすれば「その方向に蜜源があるシグナルなんだよ。誘導色かな」とでも答えてくれるかも。

柱頭のかたちは特異です。まるで粒々が寄り集まった感じがします。メシベに「どうしてそんなユニークなかたちをしているの?」と尋ねれば,こんな返事が返ってくる気がします。「もし虫が来てくれたら,花粉がくっ付きやすいように,付いた花粉が落ちないようにわたしなりの工夫をしているんだよ」。


品種改良を行っている農事研究センターでは,人工授粉をしているわけですから,自然界でもミツバチやハナバエなどの訪花昆虫が訪れているはずです。

写真を撮っていて気づいたことですが,アリが目立つのです。あちこちの花で,複数で,という感じです。蕊の根もとに蜜源があって,それを舐めているのでしょう。からだの大きさとかたちから考えると,アリは頼もしい送受粉者というふうには見えません。うまく蜜を得ている,ちゃっかり者なのでしょう。


あとで写真を点検してよくよく見ると,蜜源に複数のアリの姿がありました。そのときは,そこまで確認していませんでした。ルーペでもあればよくわかったのでしょうが,持ち合わせていなかったので観察機会を逃しました。

オシベはぼんやり見えますが,メシベの柱頭の下にあります。メシベが突き出していることからいえるのは,どうやらサツマイモは受粉に際して近親交配を避けているということです。他の花の花粉を付けた昆虫が訪れ,そのからだがまず柱頭に触れれば,そこで受粉が成り立ちます。こう考えると,つじつまが合いそうです。


花の奥はどうなっているのか,とても気になりました。これについては,持ち帰った花で調べることに。次回,結果を報告します。