自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

初めてのナガサキアゲハ

2015-08-31 | 昆虫

まったく偶然の出合いでした。

畑に行くと,花オクラの葉にアゲハチョウが止まっていました。ふと見ると,赤と白の紋様が。「めずらしいなあ」と思い,近づいていきました。

確かにこれまで見たことのないめずらしい姿をしています。止まっているのは,翅が一部折れているために飛べない状態であることがわかりました。かわいそうに。

翅脈がはっきりわかります。赤・白・黒・橙のコントラストがじつにくっきりしています。後翅には尾状突起がありません。あとで調べると,ナガサキアゲハのメスだと判明しました。以前はまだこの地方には棲息していなくて,今,東日本の方へ分布を広げているそうです。


翅の傷みから推測すると,飛んでいるときにでも鳥に襲われたのではないでしょうか。 畑の片隅にスダチの木があって,枝を広げています。可能性としてはそこで羽化したとも考えられますが,これまでスダチで幼虫らしきものを見たことがないので,その確率はとても低いだろうと思うのです。

 
驚きの出合いになりました。  

 


オヒシバ紙!

2015-08-30 | 野草紙

これまでの紙づくりは,素材にする植物がほんとうに紙になるのかどうかを確かめるのが話の中心になっていました。その結果,大きさが大部分葉書か栞サイズにとどまっていました。

しかし,実際は紙をつくるとき,出来上がった紙をなにに使うのか意識しているはずです。実用性にかかわる話です。出来上がるなにがしかの作品を連想しながら紙の大きさを考え,活用を描いて材料を選択するのが,本来の姿でしょう。

それで,今回は箸袋をつくろうと思って,材料を選ぶことにしました。箸袋をつくるには,条件としてはたとえば薄く漉ける,折れに強いという点が欠かせません。それで,一般的に通用する材料としてイネ科植物を使うことにしました。いちばんに浮かんできたのがオヒシバ。オヒシバは別名チカラグサとも呼ばれ,夏の代表野草例の一つです。


畑でオヒシバを採集し,およそ5時間煮ました。この草はほんとうに頑丈なほどの強さをもっています。茎は扁平型。葉も茎も,真夏の陽射しをちっとも気にすることなく,ぐっと踏ん張って生きています。手で千切ろうとしても,なかなか。それだけ,強い繊維がある証拠なのです。それを知ると,煮る時間が長くなるのは当然と思えてきます。


5時間煮ると,全体としてはかなり柔らかくなります。茎の下の方はまだまだ硬い感じがしましたが,今回はそれで加熱処理を止めました。これから初めて体験されるという方には,茎を使う場合は先の方だけ使うことをお勧めします。


叩解過程では,①杵だけで砕く,②ミキサーを使う,この2つの方法を使い分けました。①の繊維には長短多様な繊維が混ざることになります。一方,②では短めの均一の繊維ができます(下写真)。箸袋には②が適しています。


細くて,強度のある繊維が取り出せたことにより,最終的に願いどおりの紙がつくり出せました。


なお,薄い紙は,流し込む紙料を少なめにします。「これで大丈夫かな?」と心配になるぐらいがちょうどいいでしょう。うんと少なめにすればコピー紙もできます。


①の繊維で漉いた紙は下写真のようになりました。


オヒシバは厄介な雑草という側面をもっている反面,このようなすてきな利用価値があるのです。

 


モヤシ紙!

2015-08-29 | 野草紙

スーパーで袋入りのモヤシを2袋購入。種皮の色から,どうもブラックマッペのようです。これから紙をつくります。モヤシ紙をつくるのはそうむずかしくはありません。

モヤシを調理したり食べたりしていると,シワーッ,シャリシャリッとした感触があるので,「これは繊維だ!」と感じます。繊維がある限り,それを取り出せば紙がつくり出せます。では,さっそく挑戦してみましょう。

葉書サイズをつくるには1袋あれば大丈夫。2袋ならB5サイズが漉けます。

沸騰している湯にモヤシとアルカリ剤とを入れて,煮ること30分。ずいぶん軟らかくなりました。それを手で揉み洗いしながら,繊維を取り出します。わたしは,一部をミキサーで叩解し短い繊維にして混ぜて使いました。こうすると,すこしはきめの細かな紙になります。種皮や子葉はそのままにしておきます。


こうして漉いた湿紙は下写真のようになります。


乾かすのは,いつものとおりで「はじめ一気にサッサッ,おしまいゆっくりヤンワリ」の原則を守ります。こうすることで,周辺から剥がれる万一の事態を避けることができます。

こうして,透明感のある粋な紙ができました。


拡大してみると,繊維がたくさん!


食べようと思ったら食べられます。なかなかすてきでしょう。モヤシを食べるって植物繊維を食べることでもあるんだなあ,なんてついつい感じてしまいます。腸をきれいにする一役を担っている,ってところでしょうか。 

 

 


トウモロコシの花(メシベ)紙!

2015-08-28 | 野草紙

トウモロコシのメシベの花柱は絹糸とも呼ばれています。受粉が完了して種子が育ってくると,茶褐色に変化します。

今度は,その頃の花柱を採集して紙をつくってみましょう。“絹糸”といわれるほどのものですから,一見相当な強度を持っているような感じがします。しかし,そのような強さはもちろん持ち合わせていません。程々といったところです。若い花柱を一本だけ持って両手で引っ張ると,もちろん簡単に切れます。これを紙材料にするおもしろさは,意外性に尽きます。「そんなものにも繊維があるのか」という驚きが生まれます。


先に“程々”の強さという表現をしました。つまり,アルカリを使いすぎたり,煮すぎたりするのは禁物だという点が肝心です。一気に分解して,微塵にも繊維が失われるような事態は避けなくてはなりません。

アルカリ剤の量,煮熟する時間に気を遣うことがたいせつになります。アルカリ剤はわずか,煮る時間は最長でも30分程度にとどめ花柱の煮え具合を確かめながら,というふうに。

水洗いをしたメシベ,つまり繊維を一部のそのままの長さで残し,残りをミキサーにかけて細かくしました。元の長さのまま使うのは,できるだけ丈夫な紙にするためです。繊維は全部を混ぜて使います。

 


漉くと,花柱繊維が密集しているのがよくわかります。 


乾くのは周辺からです。乾燥するにつれて,収縮力が生じます。このときに,木枠から剥がれては元の木阿弥です。風通しのよい日陰で,徐々に,ゆっくりゆっくり乾かしていくのがコツです。紙は縁から乾いていきます。

 


こうして,できたのが下写真の紙です。油紙のようなツヤをもっています。つるつるしています。繊維も見えます。ふしぎな,ふしぎな紙です。実物を見ても,材料がなになのか,さっぱりわからないでしょう。

 


陽にかざすと,すぐ向こう側にあるものが影絵のように映ります。下写真では,木枠に張った網とタケの葉が見えます。紙が影絵スクリーンになったのです。まさに意外性をくすぐる紙だといえます。

 


紙を木枠から剥がすと,出来上がりです。


残すは,実を包んで保護している葉,すなわち苞葉を材料にした紙づくりとなりました。 

 


オオバコの“葉・茎・根”紙

2015-08-27 | 野草紙

オオバコを根っこ付きで掘り上げます。花茎を取り除きます。きれいに洗います。残ったのは,葉と茎と根。今度はこれを材料にして紙をつくります。


アルカリ剤を入れ,からだを丸ごと煮ていくと,驚くような黒褐色の廃液が出てきます。

1時間ほど煮てから,オオバコを取り出します。それを徹底して揉み洗いをします。流れ出る水が無色になるまで洗います。手揉みではまだ非繊維物質が多く含まれているので,ごく短時間ミキサーにかけます。10秒程度です。

なお,手揉み段階で茎が芋状になって残ります。これだけを別に取り出して,ミキサーにかけて叩解します。出てきた繊維を上の繊維に加え,紙料とします。


それをさらに水洗いします。この過程で非繊維物質が残っていても止むを得ません。もともと弱アルカリ剤を使用しているので,化学的に純粋繊維に近づけることは無理なのです。この点である程度の妥協が必要になります。

あとは漉くだけ。


漉いてできた湿紙が乾くと,“葉・茎・根”紙が出来上がります。色はやや緑を帯びた黒褐色系です。紙質は葉書として使えるかなといった感じです。 

 


モンキアゲハ,羽化に向かって(1)

2015-08-26 | モンキアゲハ

8月23日(日)。夜。孵化後,ちょうど2日が経過。体長は6mm。からだが褐色を帯びています。2匹の幼虫はそれぞれ別の葉に移動して,じっと静止したまま。食痕はありますから,食欲はあるということです。


長い間動かないというのは,ふつう脱皮を控えているときです。さて,今回はどうなのでしょう。

 
8月24日(月)。注意深く観察を続けていると……。脱皮が始まりました。午後0時42分のこと。じっとしていた幼虫の動きが激しくなったので,それとわかりました。

 


午後0時47分。体表に薄い膜が見えて,それが皺をつくっています。


午後0時53分。皮がどんどん後方に送られていきます。頭部を覆っていた殻は,そのままのかたちで皮に付いたまま送られていきます。 

 


午後1時13分。すっかり脱ぎ終わりました。 

 


午後1時45分。後方に移動して皮を食べ,  食餌を終えたのがこの時刻。

 
こうして2齢幼虫が誕生したのです。脱皮前の静止状態は,どれだけ続くか定かではありませんが,大変化の前兆であることは他例と同じです。

 


今日見た虹

2015-08-26 | 日記

8月26日(水)。晴れ。午後6時30分。夕暮れ時の東の空。しごとから帰って,くつろぎながら,たまたま庭に出たところ,虹が! それも二重の虹が!


ふつう時雨があったときなど,はっきりと空気中に水滴があるなあという場合に起きる現象なのに,今日のはちがっていました。雲が多いものの,晴れていたのです。雲があるところは虹色がはっきりしていて,ないところはぼんやり。

大きな弧を描いていました。しばらく見ていると,虹と重なるようにしてカラスがねぐらに帰っていくのが目にとまりました(写真の矢印)。


日頃,虹には関心の目を向けているわたしのこと,めずらしい虹なので当たり前のことながらレンズを向けました。  

 


ヒルガオの花紙!

2015-08-25 | 野草紙

ヒルガオはヒルガオ科の名使われているように,この科の代表植物です。どこにでも生える野草で,なかまにアサガオなどがあります。

このヒルガオの花から紙がつくれないでしょうか。もちろん,できます。花のかたちを保っているのは繊維。弱いながらも繊維質があるからこそ,一定の大きさとかたちをした花を開くことができるのです。

夕方,野で,咲き終わったばかりの花や,落下して褐色に変化した花を集めました。萼は必要ありません。紙にするわけですから,相当量が必要です。多ければ多いほどよいでしょう。


煮るときの注意点は,弱い繊維なのでアルカリ剤を少量にする,ごく短時間に煮終えるということです。非繊維質が残りますが,止むを得ません。

あとは,水できれいに洗います。紙料としての質は低下しますが,目減りが抑えられ,かなりの量が残りました。


これを紙料にして漉きました。


一日で乾きました。はじめに一気に,おしまいは日陰でゆっくり。いつも,これが乾燥の鉄則です。


乾くと,たいへんおもしろい紙が出来上がりました。もとの花弁の色からは想像もつかない色合い。多少の透明感があります。オシベもメシベも,それに花弁も残っています。

 

 


モンキアゲハ,孵化に向かって(3)

2015-08-24 | モンキアゲハ

8月21日(金)。さて,継続観察を続けてきたもとの卵についてですが,午後8時直前,殻に穴を開け始めました。産卵後,4日と10時間が経過していることになります。この事例については部分拡大によりご紹介することにします。 

19:53。 中から穴を開け始めました。


19:56。2,3分も経てば,ぽっかり穴が。 


19:58。さらに2分でもう出始めました。外気に触れた瞬間です。 


19:59。頭をすっぽり出しました。 

 
20:01。そのままぐいぐいと出てきました。


20:04。突起がなんとも特徴的です。いかにも武装しているといった感じです。 


20:27。幼虫はすぐに殻の方に方向転換。本能のなせる行動です。当たり前のようにして殻を食べ始めたのです。時間が経過してから撮ったのが下写真です。 


20:47。40分で完全に食べ終わりました。これで誕生ドラマは完結しました。 


21日現在で,4個の卵のうち2個が孵化したことになります。翌22日(土)の早朝,残った2個の様子を観察すると,まだ孵化していませんでした。  

 


ジャコウアゲハ観察記(その348)

2015-08-23 | ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハの若齢幼虫は,ときに複数でかたまって生活しています。「ときに」というよりも,「ごくふつうに」と言い表す方がピッタリかもしれません。素人判断で,これを群集性とか,集団性とかと呼んでも差し支えないと思います。

この生態については,これまで度々取り上げてきました。ふしぎな程に,そのかたまり具合が印象に残ります。ガの幼虫である毛虫がかたまっているのを見かけるのはよくあること。しかし,アゲハ類でこうした例はあまりないでしょう。

8月22日(土)の早朝,アゲハの庭園で,たまたまジャコウアゲハの幼虫のかたまりを目撃(下写真)。

 


これまでの観察事例と比べると,孵化時期がピタッと一致しているかのような風景なのです。卵の殻を食した後の形跡が同じです。一斉に孵化したかのようです。ということは,8匹いますから,8匹きょうだいになるでしょう。それにしても,食欲満点で全部平らげたなんて,大したもの。行儀のよさ(?)が光ります。

このように群れでいることは,なにか利点があってのことと思われます。わたしの想像では,外敵から身を守る効果があるように思います。かたまっていると大きくで目立つのですが,外敵にとって大きく見えるものは襲いがたい存在になるのかもしれません。それに,仮に襲われても,全滅することはすくないはず。

そんなことを思ってか,ジャコウアゲハの成虫は本能的に卵をかためて産む傾向が確かにあります。自然は多様で,観察者には日々驚きが続きます。