林に変わった桑畑
夜明けに雨が音を立てて降った。
青葉にあたる夏の雨とちがい、秋の雨音は風のようにも聞こえてきた。
まどろみの中で、数十年も昔のカイコの夢を見ていたようだ。
繭をつくる間際の、数センチほどに成長したカイコの食欲は、尽きることが無いほど旺盛で、与えられる桑の葉を昼夜を問わずむさぼり食べた。
養蚕が盛んな時代、家の中はカイコに占領されて、人はカイコに囲まれるようにして眠った。
夜中 大人たちは腹をすかせたカイコに桑を与える、おびただしい数のカイコたちが音を立ててざわめくように桑の葉をかじる。その音を子供たちはいつも夢の中で聞いていた。
それは木立をぬらす雨の音ににていた。
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