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父の手紙(昭和18年 満州より)1

2008年06月04日 | 季節の便り
梅花うつぎ


昭和18年頃父は家族を残して満州に渡った。
そのころ満州で羽振りが良かった父の叔父に誘われたらしい。
私の六歳ころの出来事であるが詳しいことは何一つわからない。
幸いなことに父は体調を崩し一年ほどで内地に引き揚げた。
古い文箱から父が留守宅の母に寄せた手紙が一通だけ見つかった。

四月三十日発
十九日付けの御手紙本日落掌、多分昨日頃、間島市の可野さん宅へ着いたのを用事があって可野さん宅へ行った苦力達が、今朝私の居る東盛湧へもどってきて“あられ”の小包と共に渡して呉れました。
色々手数をかけて有難う。それで私は今日(二十九日)は午後一時に苦力達に仕事を云い付けておいて、一時半頃三里余り離れている間島市の可野さん宅へ山を越えて持って行きました。
勿論夕方は帰ってくるのですよ。しかし可野さんの奥さんは、ずい分離れていえる四平街という新京よりもっと南の方の町へ、そこへ可野さんが第二回目の苦力を連れに行っているのだが、その町へお金を持って行ってしまった後で、家には鍵がかかっていて、子供さんが近所の子供と遊んでいるばかり。
それで隣の家へ小包をよく頼んで預けてかへりました。
この両家は大変親しい間柄ですから心配はいりません。子供さんもこの家に預けて奥さんは発ったのです。
書くことが大変前後するが、十日発の御手紙は二十日に戴きました。あの頃は大変疲れていたが、お許の眞情溢れる手紙を読んで元気百倍非常に力付けられました。有難う。
それでは先にこちらの近況をお知らせしやう。
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