常念が見える部屋から

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松茸山から

2012年09月25日 | 季節の便り

 

長野県東筑摩郡錦部村刈谷原は、かって善光寺街道の宿場町であった。

私が子供のころ、岡田の宿から刈谷原峠を越えると、なだらかな下り坂の両側に宿場格子の古い家並が静かに息づいていた。

母の姉がその町の山持ちの家に嫁いでいて、季節になると持山で採れた松茸が、我が家にも沢山届いた。

今では30分も車を走らせれば着く距離なのだが、昭和初期、歩く以外の方法はかった。

大きなリュックを背に、刈谷原の伯父さんはいつも大声で突然やってきたように思う。

足に脚絆を巻いて、30キロを超える道のりを峠を越えて歩いて来たのだ。

現在歩く行事や目的がなければ、日常の移動に足を使うことは殆どないのだが、当時は足だけが頼りだった。

伯父がリュックを開けると松茸の香りが家中に満ち満ちた。

伯父は翌朝「来年は松茸を採りにこいや」と云って帰って行った、しかし今日までそれは実現していない。

時を経て代が変わり、従兄弟たちとの交流も既になく、あの人たちの生死さえも探る術を知らない。

 

 

 

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