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返らざる日々

2012年08月30日 | 季節の便り

 サギソウ

彼は 深夜の作業中手足のしびれを訴え、休憩室で休んでいたが、容体悪化が進み、救急車で脳神経外科に搬送された。

この時の画像では右総頸動脈が完全に閉塞している。

多分 右総頸動脈経路中に派生した梗塞が連鎖的に広がって、短時間で右総頸動脈が完全に梗塞されたのだろう。

病院では即座に血流を妨げている血栓を溶かすべく血栓溶解療法が実施されたが、時既に遅く仮死状態の脳細胞は蘇生しなかった。

その上、死んだ脳は膨張を続け、健常左脳を押しつぶす恐れがある、壊死した部分の頭蓋骨を取り外し、膨張部分を頭外に逃がす緊急手術が行われた。

しかし膨張は予想越えて急速に頭蓋内部にも広がり、発症後約56時間で、ついに生命の中枢機能を司る延髄を押しつぶした。

頭蓋骨切除のため手術室に搬送される前に私達は面会が許された。

娘の呼び掛ける声に目を開き、20年ぶりに対面した我が子を確認できたのだろう、一瞬笑ったように見えた。

それは我が子がここに現れることを確信していたように思えた。

麦わら帽をかぶって無邪気に手を振る幼子の姿をそこに見たのかもしれない。

混濁し朦朧とした世界との狭間で、返らざる楽しかった日々を思い巡っていたのだろう。

 

 

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