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庭先の柿の大木に熟れる柿は旨かった。
葉が落ちて、見上げる梢の先に広がる秋空に柿は溶け込むように美しい。
しかし そこは子供の手には届かない領域である、竿を伸ばしても下枝の青柿しか届かない、地団太踏んだものだ。
大人が高い梯子を軽技のように登る柿取りの日を待つより仕方がない。
熊は木登りが得意だ、夜の闇にまぎれ、柿の木の天辺に登り、枝を手繰り寄せて席を作り、そこにどっかりと座って猛然と食べる。
朝になって、柿の残滓が散らばった地上から見上げる空間に、枝を組み合わせた熊棚という熊の宴席が見えた。
平成の初め、鉄折の罠にかかった熊を最後に、熊の消息は途絶えた。
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