
瑞穂の池の近くまでやってきたのにアケボノソウが見つからない。
三年前の記憶ではこのあたりと思っていたが、
もともと株は少なかったから、ササ藪に食われてしまったのかと不安になる。
あきらめかけて、百年記念塔方面へ一キロぐらい歩いたかな・・
「あっ、あったよ!」


夢中になってカシャカシャとシャッターを切っていると、
いつの間にか三十才くらいのデジカメを持った女性がそこに立っていた。
「どうぞ、気にしないで自由に撮ってください」
ひとしきり写真を撮りおわったあと・・
彼女はわざわざデジカメを開いて、
この近くで見つけたというギンリョウソウやシャクジョウソウの画像をみせてくれた。
アケボノソウを囲んで会話が弾む。
「それじゃ、またね」
「さようなら」
でも、行きずりのひとに「またね」はないかと笑ってしまう。
「気をつけて帰って・・」と言おうとして振り返ったが、彼女の姿はもうみえなかった。
