らんかみち

童話から老話まで

やがて手造り味噌ブームがやってくる

2009年10月14日 | 酒、食
 燕返しとか畳返しなら知っているが、味噌の天地返しとは何ぞやと聞かれたことがありますが、糠床を混ぜるのと同じような作業です。味噌を仕込むと樽の中心は良質な醗酵をするにもかかわらず、その周りはカビが生えたり醗酵が遅れたりするので、それをかき混ぜて醗酵を促すのです。
 
 ぼくの仕込んだ味噌は乾燥米麹と裸麦麹、それに煮大豆を握りつぶしたものと塩を混ぜているわけですが、仕込んで一月も経つと乾燥米麹も大豆の煮汁を含んで柔らかくなります。そこで天地返しを兼ねてミンチ器にかけておくと、味噌を使う時すりおろしが楽になるというわけです。
 
 こうして熟成を待ってから(麦味噌は二月くらいしたら食べられる)冷蔵庫で保管する(時々出して醗酵を促進させる)と、一年を通して微妙な味の変化を楽しみながら食べられます。市販のものは味が変化しないように醗酵を止め、防腐剤を使っているので楽しみがないといえばそうでしょうが、常にできたての安定感を求めたい方には向いているといえるでしょう。
 
 三種類の麦味噌を仕込んでみて驚いたのは、期待していなかった合わせ味噌が現時点では最も美味しいということ。嘗めてみると麦らしい芳しさは母の味噌に一歩ゆずるとして、米の甘みと大豆の旨味は他の二つより一歩リードしている感じ(値の張る大豆を使ったからなぁ)。期待外れだったのは最後に仕込んだやつのパワーのないこと。大豆が小さかったのでやや煮不足(大豆は小さいほど煮るのに時間がかかる)だからかもしれません。
 いずれにしても三種の味噌はまだ熟成段階なので、これからどんな風に味が変化していくのか楽しみです。熟成を終えて冷蔵庫に入れたら、後はこの三つをどんな按配でブレンドして使うか、それも楽しみ。

 味噌造りってスローフードの中でも相当おもしろいものじゃないかな。自分で蕎麦を植えて収穫したのを打つって、田舎に住んでりゃそれもありでしょうが土地と時間、体力と技術が必要です。その点で味噌つくりなんて道具も要らず結果も早く出るし、一年中できるからサークルかなんか作って手前味噌交換なんてのも楽しそう。今は廃れてしまった自家味噌造りだけど、趣味の一ジャンルとして復活する日もそう遠くないと思います。