らんかみち

童話から老話まで

ハリー・モミジィという名の按摩さん

2009年10月19日 | 暮らしの落とし穴
 いつも左向いて歩いている人間が、たまに右向いて歩いたりするもんだから今日のようにモミ爺の門を叩かないといけなくなるんですね。
「へっへっへ、噂をすれば影とやら。兄さんが来なさることは承知しておりましたよ」
 座頭の父つぁん、すなわちモミ爺に予知能力があるんじゃなく、「あいつは陶芸でバカやっとるから、そろそろダウンして揉んでもらいに来るよ」と、陶道仲間が情報を漏えいしていたものと思われます。
 
 モミ爺は針も打てるので、「肩が凝って歯茎が腫れたよ」と訴えたら、チクリチクリと首筋から腰にかけて針を打ってくれました。
「凝りというのは筋肉に乳酸が溜まっている状態で、針を打ってもそれが融けるんでございますよ」
 揉み解したら乳酸が抜けるのはなんとなく分かりますが、不思議にも針を打っても時間はかかるけど乳酸を排出できるのだとか。「あんま手離れ、針三日」といわれるように、按摩は終わった時点で効き始め、按摩は三日経ってから効いてくるのです。
 
「明日福山までバイクで2時間走りなさる? せいぜい肩を凝らしてまたお越しください、お待ち申しております、へっへっへ」
 モミ爺は激励してくれたんですが、家に帰ると揉んでもらう前にも増して気分は鬱です。いわゆるモミ返しというやつでしょうか、こんな夜はライトなアルコールが良かろうとチョイスしたのが「2009年おたる初絞り、デラウェア」です。8.5%のアルコール度数である上に、葡萄葡萄したジュースみたいな甘口の白ワインなので肴が無くてもがぶ飲みできます、という場合じゃなく明日は童話講座だっちゅうの。