北海道美術ネット別館

アート、写真、書など展覧会の情報や紹介、批評、日記etc。毎日更新しています

修正あり【告知】長万部写真道場 再考ー北海道における写真記録のこれから (2月25日、渡島管内長万部町)

2018年02月02日 17時17分17秒 | 展覧会等の予告
 渡島管内長万部町で、2月11日から25日まで地元の写真愛好家集団「長万部写真道場」の写真展が開かれます。
 また、写真道場がのこした作品群を調査してきた「長万部写真道場研究所」が、展示最終日の25日、フォーラムを開きます。

 フライヤーから引用します。

 戦後復興期にカメラが一般に普及し始めたこともあり、北海道では多くの写真家・写真愛好家が、戦後入植した移民や先住民族アイヌの日常の暮らしなどを撮影しました。当時、北海道各地で、写真家達が土地の暮らしと風土を写真によって記録しようと試みていました。彼らの残した写真は、郷土文化の形成を考える上でも近代日本の発展と北海道の関係を考える上でも貴重でありながら、未だ十分な調査や価値付けが行われておらず、写真家達の死後、散逸・消失の危機にさらされています。

 「長万部写真道場」は、そのような時代の流れの中で、彼らにとって最も身近だった長万部で生きる人々の多様な生活の姿を捉えた地域の写真家グループです。今回この「長万部写真道場」の残した写真分を、2015年の調査以降初めて一般公開するとともに、写真研究者らを招いてのフォーラムディスカッションを開催します。


 25日のフォーラムの内容は次の通りです。

 第1部(午前10時~11時45分)

基調講演1「郷土に写真を残す~青森県立美術館での実践を通じて」 高橋しげみ(青森県立美術館美術企画課学芸主幹)

基調講演2「『掛川源一郎写真集 大地に生きる-北海道の沖縄村-』を読む」 倉石信乃(明治大学理工学研究科綜合芸術系教授)

プレゼンテーション「長万部写真道場 調査報告」 中村絵美(長万部写真道場研究所主宰)


 第2部(午後0時45分~2時15分)

パネルディスカッション「北海道における写真記録のこれから」(倉石、高橋、中村)


 中村絵美さんは長万部出身で、道教大を卒業後、根室管内羅臼町や鳥取県など各地で美術の実践に取り組んできました。
 2015年、郷里で、長万部写真道場の主宰者のひとりだった澤博さんのアトリエに残されていた大量の写真を発見し、整理や保管に携わってきています。
 今回は、札幌の大友恵理さんら、長万部写真道場研究会や北海道開拓写真研究協議会のメンバーの有志が中心となり、フォーラムなどを開催します。
※この段落の表現を一部手直ししました。2月3日。

 長万部写真道場は、伊達出身で戦後道内のリアリズム写真を代表する存在だった掛川源一郎と親交があったことがわかっています。掛川さんが、沖縄から長万部に入植した一家を追った写真集『大地に生きる-北海道の沖縄村-』に結実する仕事をした際、掛川さんに一家を紹介したのも写真道場のメンバーだったそうです。

 付け加えると、高橋さんは青森県立美術館で、全国紙などにも大きく取り上げられた小島一郎の写真展などを企画した学芸員で、カタログ「小島一郎写真集成」は第21回「写真の会」賞を受賞。ベトナム戦争の報道でピュリッツァー賞を受けた写真家澤田教一の回顧展も手がけています。
 倉石さんは横浜美術館の学芸員時代、マン・レイ、ロバート・フランク、中平卓馬など数々の展覧会を担当。写真評論の著書として『反写真論』があり、詩人でもあります。
 

 なお、関連イベントとして、フォーラム前日の24日、「長万部写真道場」撮影地見学ツアーを行います。
 午後3時に町学習文化センターのロビーに集合。約1時間半かけて、中村絵美さんが町内の撮影地を案内します。
 参加費500円。要申し込み。


 近年は、「写真の町」を掲げる上川管内東川町が、地元の写真家飛弾野数右衛門の名を冠した賞を、「東川賞」のひとつとして設けたり、後志管内共和町の西村計雄美術館が、同町小沢の開拓農民をカメラで追った前川茂利の仕事にスポットを当てたり、空知管内長沼町でも地元のアマチュア写真家たちの仕事を発掘する動きが出てくるなど、道内各地でおなじような取り組みが生まれています。
 戦後73年。北海道は、戦後開拓や炭鉱開発で人口が増えた時期があったものの、その後は相次ぐ閉山や離農、北洋漁業の衰退などで過疎化が進み、地域は存亡の岐路に立たされています。そんな時代に、足元の歴史と風土を見続けた「視線」について、あらためて振り返ることに、大きな意義があるといえるのではないでしょうか。
 さらにいえば、1968年ごろ、北海道の開拓写真は、近代の記録であり芸術でもあることから高く評価されたことがありました。
 「明治維新150年」「北海道命名150年」については批判的に見る必要があると思いますが、歴史を見つめ直すひとつのきっかけとしては有効でしょう。


 蛇足ながら、澤さんは多彩な方面で活動した方で、筆者にはラジコンクラブで自作飛行機を飛ばしていたイメージが強いです。以前は、お化けカボチャコンテストで日本一になったこともありました。


 フォーラムと写真展は入場無料。


フォーラム:2018年2月25日(日)午前10時~午後2時15分
写真展:2月11日(日)~25日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後3時)、月休み
長万部町学習文化センター(長万部町長万部411-216)

□長万部写真道場研究所 http://occ-lab.org/
□EMI NAKAMURA WORKS(中村絵美) http://muu.in/nakamuraemi/

□中村絵美の制作ノート 人生は旅 http://eminakamura.blogspot.jp/

生息と制作-北海道に於けるアーティスト、表現・身体・生活から (2013)
北海道教育大学卒業制作展(2011)





 JR長万部駅から、Google マップや gooマップで経路を検索すると「約1.5キロ、徒歩19分」などという表示が出ます。これは、同駅は東側にしか出入り口がなく、西側の学習文化センターや温泉街に行くためには、迂回する必要があるためです。
 ただし徒歩の場合、上の地図で、ホテル「エクセルイン」の南側に描かれた細い人道跨線橋こせんきょうを渡れば、10分ほどで着くはずです。

 くわしい道順は別項で紹介します。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。