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「Re:Quest-1970年代以降の日本現代美術展 」の図録をめくってみる

2013年04月07日 23時27分08秒 | つれづれ日録
 ちょうどアクセス数が増えている折でもあるし、4月14日までソウル大の美術館で開催中の「Re:Quest-1970年代以降の日本現代美術展」について、もう一度、関係諸氏の関心を引いておきたいと思う。
 紹介のエントリでも書いたけど、あらためて出品作家を全員挙げておく。1970年代以降の重要な作家がほとんど網羅されている。
 これだけの顔ぶれが、日本国内でそろうことがどれだけあるだろう?

会田誠、青木陵子+伊藤存、荒川修作、荒木経惟、千葉正也、ダムタイプ、遠藤利克、榎倉康二、藤本由紀夫、舟越桂、原口典之、石内都、伊藤隆介、金氏徹平、加藤泉、河口龍夫、川俣正、小林正人、小林孝亘、小清水漸、草間彌生、李禹煥、丸山直文、宮島達男、森村泰昌、森山大道、村上隆、村岡三郎、中原浩大、中村一美、奈良美智、野口里佳、野村仁、小谷元彦、小沢剛、さわひらき、曽根裕、須田悦弘、菅木志雄、杉本博司、杉戸洋、高松次郎、高嶺格、田中功起、辰野登恵子、照屋勇賢、戸谷成雄、椿昇、若林奮、やなぎみわ、柳幸典、ヤノベケンジ、米田知子
* 姓のアルファベット順


 すごくないですか?

 図録は、韓国語、英語、日本語の三つの言語で表記されている。
 出品作家の簡単なモノグラフ(略年譜)もついているので、非常に便利。
 また、キュレーションを担当した松本透・東京国立近代美術館副館長のテキストは、簡潔に70年代以降の美術状況をまとめていて、一読して得るところが多い。まとめがうますぎるんじゃないかと思うほどなのだが、そんな中に、絶妙な文章がさしはさまれている。たとえば

 ポストモダニズムは、直線的な進歩史観に疑問符を打ち、いわばゲームの規則をチェスから将棋(死んだ駒が生き返ったり、身分が変わったりする)のそれに変えることによって、様式の歴史性なり、造形志向の時代性を著しく相対化した。


 なるほど…。

 なお、このテキストによると、日本の同時代美術を振り返る展覧会は、1994~95年に横浜・ニューヨークほかで開かれた「戦後日本の前衛美術」展が最後らしい。

 というわけで、この図録がいったいどこで入手できるか、わからないのだが、Nadif Apart あたりにもし置いてあれば、ぜひ手に取ってみることをおすすめしたい。


 あと、二つほど、図録について。

 ひとつは、上記の松本氏の次に、あいちトリエンナーレ2013キュレーターの拝戸雅彦氏が、違った角度から日本の「現代美術」「戦後美術」「近代美術」の位相について論じていて、なかなか興味深いのだが、「もの派」の歴史認識には、筆者は異論がある。
 というのは、拝戸氏は、日本の美術界に「もの派」の歴史を浸透させた大きなファクターである、千葉成夫氏の『現代美術逸脱史』(晶文社)をお忘れじゃないですかね。

 先ほど、「三つの言語」と書いたが、英語でしか書かれていないものがひとつあって、それは、1970~2012年の日本美術年表である。これも、目配りが広く効いていて、かなり役立ちそうだが、やはり英語なので、読む速度が落ちる(悲しい)。
 個人的には、札幌宮の森美術館やモエレ沼公園のオープン、デメーテル開催など、北海道の事項にも触れられていたのが驚きだった。


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