北海道美術ネット別館

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石崎哲男個展・齋藤典久展・渡辺良一展(6月3日まで)

2006年06月01日 23時29分51秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 全国規模の有力公募展のひとつ、主体美術協会は、創立会員に故小谷博貞さんがいたこともあってか、道内関係者がわりと多い。そして、道内のメンバーが、近い時期にいっせいに個展をひらいて、主体美術を印象づけるという作戦によく出る。今週の時計台ギャラリーのA、B、C室は、主体美術の会員で占められている。

 A室の石崎哲男さんは岩見沢在住。
 大作は、「須弥山」「選ばれし者たち」の2シリーズがあるが、絵の中味はよく似ていて、いずれも、テーブルを取り囲んですわっている人々(8人前後)を、やや上から見た視点でとらえた群像画である。
 人間は男性が多いが、絵によっては女性がまじっている。男性は大半が茶系のスーツを着て、無地のネクタイをしている。髪は、茶とも黄色ともつかぬ軽い色。顔つきはみなどことなく似ていて、面長の人はいないが、子どもっぽい顔つきというのともちがう。
 人々は、テーブルの中央に置かれた不思議な物体をめぐって話し合ったり、中国の楽器みたいなものを演奏したり、ひとりだけ預言者みたいな格好をした男の話を聞いたりしている。しかし、なにをしているのかはっきりしない絵も多い。際立って諷刺的な絵というのでもないのだが、人間のいろいろな面と表情を浮き彫りにしたふしぎと印象的な絵であることは、たしかである。

 B室は「SCENE アラン島」という副題を持つ齋藤さんの個展。齋藤さんは、旭川生まれ、東京在住だ。
 アラン島は、漁師の着ている手編みセーターで名高いアイルランドの島。齋藤さんは、ドルメンを探してアイルランドを旅しているとき、たまたまこの島に立ち寄り、すっかり魅せられてしまったという。
 どの作品も抽象的で、なにかモティーフがあるというものではない。けれども、絶妙の青は、アラン島の空の色であり、「ドルメン」は、アイルランドの古代の石造文化をこだまさせている。
 「コンビニもないような島だけれど、古い文化が層をなしているのがおもしろい」

 C室の渡辺さんは、網走管内美幌町でレストランを経営しながら絵を描いている。
 いちばん大きい作品は、小さい正方形5枚と、上部が丸くなった縦長の長方形が4枚からなる「砂塵の標的」。
 いずれも、川のような曲線が中央を走り、その周囲に、さび色をした長方形や半円がいくつも配されている。「描かれている」というよりも、地の部分よりも盛り上がっている感じだ。
 筆者は、砂漠の兵営の衛星写真みたいに見えてしかたがない。
 作者に水を向けてみると「イラクの情勢に触発されたというのは、たしかにあります。もともと、風化とか、時間のようなものをテーマに描いてきたんですが」という。
 作品は、板の上に絵の具を塗ったあと、何度も擦り取っているという。川の部分は、穴を開ける工具で一本一本溝をつけている。気の遠くなるような作業だ。
 「きれいな絵でも抽象画でもない」と作者は言うが、砂漠の遺跡を真上から見たようなふしぎな作品世界をつくりだしている。

5月29日-6月3日 10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A

□渡辺さんのサイト「ナベさんの自遊館」

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