北海道美術ネット別館

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■bright future kim yuryong solo exhibition(2月7日まで)

2009年02月04日 23時56分45秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 札幌の金侑龍さん、初の個展。
 個展のタイトル「bright future」は、明るい未来、という意味だ。

 彼は在日朝鮮人である。
 ご本人も言っていたが、「在日」が現代アートの展覧会を開くのは、おそらく道内では初めてではないか。

 金さんは小学から高校まで朝鮮学校に通い、その後、東京の朝鮮大学校に進学した。
 いまの勤め先も、出自に関係が深い。
 もちろん、ふだんは日本語を話しているのだが、育った家庭は、朝鮮の言葉や風習をないがしろにしない環境だったという。

 わたしたちはふだん、美術作品を制作したり見たりするときに、それほどナショナリティを意識しないと思う。
 しかし、金さんは、そこから出発することが、アートの根底にあるのだろう。

 冒頭の画像は、インスタレーション「どうかこの血が絶えないように」。
 こんなキャプションが付されている。

血は全てを記憶している。
このルーツを、国の歴史を、
日々の暮しの中での小さな思い出や記憶。
僕らにとっては、それは大事な歴史
僕らに流れる血は、そんな小さなものまで
記憶しているのだろうか?

そうであるならば、僕はみんなに伝えたい

どうかこの血が絶えないように。


 赤く塗った針金がグシャグシャになって床の上と壁に配置され、その上に、クリスマスツリーに使うような白と青の電球がいくつもちりばめられて、点滅をくりかえしている。
 正面の壁の、赤い針金には、裏焼きになったモノクロームの自画像(裏焼きといっても、デジタルなので、そういうふうに処理したということだけど)。胸にはキューバのバッジ。
 床にも、ふだん撮っている写真をモノクロにして、透明なOHPシートにプリントしたものが何枚か置かれている。

 「血」をテーマにしているわりには、赤が弱いのが気になるが、「光」にいのちの輝きを託したという作者の思いは感じられる。

 血とか、民族の話になって、筆者が
「そっかー、ボルタンスキーがすきなの?」
と言ったら、金さんは
「いや、好きなのはハンス・ハーケです」。

 いいなあ。日本にもひとりぐらい、ああいう「過激分子」?がいてもいいなあと思う。


               

 「BRIHGT FUTURE」
と書かれたオレンジの棒。
 工事現場で誘導に用いられている道具だ。
 シンプルな作品。


           

 「relative mind」
 やはり透明OHPシートに写真をプリントした作品。
 作者の友人や、周囲の人々に、ことば(日本語、英語、朝鮮語)を書いた紙を持ってもらって、正面から撮った、肖像写真7点だ。
 「人・愛」とキャプションのある作品では、手にしている紙には「サラン」とあり、「戦争の終わり」では「WAR IS OVER」とあるなど、微妙に異なるのが面白い。単純に、好きなことばをえらんでもらったのではなく、作者とディスカッションの上で決めたとのこと。

 道内では、アイヌ民族のアートというのは、ときおり話題になるが、在日朝鮮・韓国人のアートというのは、見た記憶がない。
 金さんは今後も制作・発表を続けていくという。まだ23歳。これからに期待したい。

 作家は金曜夜と土曜在廊の予定。


2009年2月2日(月)-7日(土)11:00-19:00
ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館 地図A)


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