道展、全道展、無所属の版画家52人からなる北海道版画協会の恒例の展覧会(ほかに、冬には小品展があります)。ただ、思いつく版画家で、入会してない人ももちろん大勢いますけど。
以下、順不同。
金沢一彦「白夜」「放浪する詩人」
いつものメルヘンあふれる金沢ワールド。
ちょっとちがうのは、通常の朱と藍のほかに、黄緑や水色のちいさな斑点がいっぱい散らばっていること。主調は変わらず、きらびやかさが増した感じ。
兼平浩一郎「眠れる夜に」
樹木が凍りついたような緑の2本の柱。おもに画面の下半分に飛び散る白の飛沫と、画面全体を横切る3本の横線…。これまでの、直線の多い兼平さんの画風を引きつきながらも、抽象になった新作は、とても力強く、緊張感に満ちていると思う。
佐野敏夫「カサブランカ」
以前は、爆発する星など、凝集力のある画面をつくっていた佐野さんですが、近年は肩の力が抜けたような作品が目立ちます。今回も、輪郭線が太いほかは、ふつうの可憐な百合がモティーフになっています。
木の瀬博美「Breath」
深い深い青に、白の飛沫がかかる画面は、マリンスノーの降る深海のようで、見る人を瞑想に誘うかのようです。
神田真俊「CALLIN」
コラージュ感覚の横溢したポップで「濃い」画面をつくってきた若手の神田さんですが、画風がだいぶ変わりました。淡いパステル調の色面構成のなかに、よく見ると、頭部の切れた裸の男がうなだれて立っています。
渋谷正巳「ある山なみN-1」「ある山なみN-2」
山脈を描いているのはいつもと同じだけど、今回はまるでオプアート。見る角度で絵柄が変わるのです。たぶん、メッシュのような目の粗い布に刷って、隙間を空けて3枚重ねているんだと思います。
手島圭三郎「冬の日」
絵本などで知られるベテラン。鹿7匹が下のほうに小さく描かれているのは、いつも中心のモティーフを大きく扱うこの作家には珍しいかも。
小林大「月世界」
裸などを描写しているわけではないのになぜかエロティックな小林さんならではの世界。緻密な線描と楕円形の画面が、木口木版を思わせます。巨大な猫の頭や人の顔をしたハチなどが悪魔的な雰囲気を漂わせるなか、下のほうで踊るねずみがいい味を出しています。
ナカムラアリ「Blossom ブロッサム」
葉のかたちをした支持体がユニーク。
萩原常良「山麓地帯 3」
白と黒だけで雄大な森の風景を描写。よく見ると、峠越えの道路がつづらおりになって木々の間を縫って走っている。
鳴海伸一「Lotus」「J/BI-E」
乱暴とも思えるほど力強い線が走る画面。繊維の多い紙もおもしろい。
早川尚「遠くへ」
暗い闇の中を泳ぐ魚のようなかたち。表面を細かい渦のような文様がびっしりと覆っている。以前この人がもっていた感傷性のようなものがなくなり、深みをたたえた作品。
三島英嗣「きらめく風」
長くテーマとしてきた遺跡をやめ、風というあたらしいモティーフにいどんだ作品。ドアのスリットから漏れる光へと階段が続いていく。
石川亨信「奥に聴く」
この作者にしては飛沫が大きいと思う。
更科秀「V.M.ポーターの街」
ことし3月に亡くなっていた。新聞のおくやみ欄で見たけれど、この名前はペンネームなので、確信が持てなかった。
晩年は、紙に焼きごてのようなものを当てるモノタイプ作品に取り組んでいた。今回展示されている遺作も同様の作品。
道展会員で、「サロン・ド・メ」など海外でも発表するなど活躍していた作家だった。
ご冥福をお祈りします。
他の出品者は次のとおり。
(題名は、作品の下に書いてある表記を優先)
岡本葉子「un peu de vert…(少し風が…)」「mon jardin(私の庭)」
尾崎淳子「遠い所」
金澤博子「aqua zone」
木戸しづ子「お茶にしませんか!①」「お茶にしませんか!②」
木村多伎子「宿屋」
菅間慧一「巡礼路の橋(スペイン)」
鈴木なを子「猫村の一日(午前10時:お母さんといっしょ」
清野知子「モンステラ・B」
田崎敦子「のびのび」
竹田道代「The flower and vase」
種村美穂「WHITE RHINOCEROS」
阿部芳子「風を待つ(3)」
木曽淑子「On the hill,Night II」
大井戸百合子「南の人」
内藤克人「内と外’06-01」「A fene the rain」
西村一夫「内なる風景2006 T-2」「内なる風景2006 T-3」
福岡幸一「トンコボセリーセラス」「ユーバリセラス」
細見浩「根北峠(斜里付近)秋」「阿寒(オンネトウ)秋」
丸山郁代「Re-make」
水野恵子「小さき森から -9-」
宮井保郎「ABYSS-5」
山内敦子「ひまわり」
岩崎弘道「雪山遠望」
吉田敏子「Eternity Seed」(同題2点)
浅野武彦「はたたてうお」
大野重夫「山麓の湿原」
石井千晶「還りゆくときに」
村田由紀子「8-15-3」
7月6日(木)-11日(火) 10:00-18:00(最終日-17:00)
大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A)
以下、順不同。
金沢一彦「白夜」「放浪する詩人」
いつものメルヘンあふれる金沢ワールド。
ちょっとちがうのは、通常の朱と藍のほかに、黄緑や水色のちいさな斑点がいっぱい散らばっていること。主調は変わらず、きらびやかさが増した感じ。
兼平浩一郎「眠れる夜に」
樹木が凍りついたような緑の2本の柱。おもに画面の下半分に飛び散る白の飛沫と、画面全体を横切る3本の横線…。これまでの、直線の多い兼平さんの画風を引きつきながらも、抽象になった新作は、とても力強く、緊張感に満ちていると思う。
佐野敏夫「カサブランカ」
以前は、爆発する星など、凝集力のある画面をつくっていた佐野さんですが、近年は肩の力が抜けたような作品が目立ちます。今回も、輪郭線が太いほかは、ふつうの可憐な百合がモティーフになっています。
木の瀬博美「Breath」
深い深い青に、白の飛沫がかかる画面は、マリンスノーの降る深海のようで、見る人を瞑想に誘うかのようです。
神田真俊「CALLIN」
コラージュ感覚の横溢したポップで「濃い」画面をつくってきた若手の神田さんですが、画風がだいぶ変わりました。淡いパステル調の色面構成のなかに、よく見ると、頭部の切れた裸の男がうなだれて立っています。
渋谷正巳「ある山なみN-1」「ある山なみN-2」
山脈を描いているのはいつもと同じだけど、今回はまるでオプアート。見る角度で絵柄が変わるのです。たぶん、メッシュのような目の粗い布に刷って、隙間を空けて3枚重ねているんだと思います。
手島圭三郎「冬の日」
絵本などで知られるベテラン。鹿7匹が下のほうに小さく描かれているのは、いつも中心のモティーフを大きく扱うこの作家には珍しいかも。
小林大「月世界」
裸などを描写しているわけではないのになぜかエロティックな小林さんならではの世界。緻密な線描と楕円形の画面が、木口木版を思わせます。巨大な猫の頭や人の顔をしたハチなどが悪魔的な雰囲気を漂わせるなか、下のほうで踊るねずみがいい味を出しています。
ナカムラアリ「Blossom ブロッサム」
葉のかたちをした支持体がユニーク。
萩原常良「山麓地帯 3」
白と黒だけで雄大な森の風景を描写。よく見ると、峠越えの道路がつづらおりになって木々の間を縫って走っている。
鳴海伸一「Lotus」「J/BI-E」
乱暴とも思えるほど力強い線が走る画面。繊維の多い紙もおもしろい。
早川尚「遠くへ」
暗い闇の中を泳ぐ魚のようなかたち。表面を細かい渦のような文様がびっしりと覆っている。以前この人がもっていた感傷性のようなものがなくなり、深みをたたえた作品。
三島英嗣「きらめく風」
長くテーマとしてきた遺跡をやめ、風というあたらしいモティーフにいどんだ作品。ドアのスリットから漏れる光へと階段が続いていく。
石川亨信「奥に聴く」
この作者にしては飛沫が大きいと思う。
更科秀「V.M.ポーターの街」
ことし3月に亡くなっていた。新聞のおくやみ欄で見たけれど、この名前はペンネームなので、確信が持てなかった。
晩年は、紙に焼きごてのようなものを当てるモノタイプ作品に取り組んでいた。今回展示されている遺作も同様の作品。
道展会員で、「サロン・ド・メ」など海外でも発表するなど活躍していた作家だった。
ご冥福をお祈りします。
他の出品者は次のとおり。
(題名は、作品の下に書いてある表記を優先)
岡本葉子「un peu de vert…(少し風が…)」「mon jardin(私の庭)」
尾崎淳子「遠い所」
金澤博子「aqua zone」
木戸しづ子「お茶にしませんか!①」「お茶にしませんか!②」
木村多伎子「宿屋」
菅間慧一「巡礼路の橋(スペイン)」
鈴木なを子「猫村の一日(午前10時:お母さんといっしょ」
清野知子「モンステラ・B」
田崎敦子「のびのび」
竹田道代「The flower and vase」
種村美穂「WHITE RHINOCEROS」
阿部芳子「風を待つ(3)」
木曽淑子「On the hill,Night II」
大井戸百合子「南の人」
内藤克人「内と外’06-01」「A fene the rain」
西村一夫「内なる風景2006 T-2」「内なる風景2006 T-3」
福岡幸一「トンコボセリーセラス」「ユーバリセラス」
細見浩「根北峠(斜里付近)秋」「阿寒(オンネトウ)秋」
丸山郁代「Re-make」
水野恵子「小さき森から -9-」
宮井保郎「ABYSS-5」
山内敦子「ひまわり」
岩崎弘道「雪山遠望」
吉田敏子「Eternity Seed」(同題2点)
浅野武彦「はたたてうお」
大野重夫「山麓の湿原」
石井千晶「還りゆくときに」
村田由紀子「8-15-3」
7月6日(木)-11日(火) 10:00-18:00(最終日-17:00)
大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A)
日曜日に当番でギャラリーにいました。
芳名帳で名前を見つけ、
ちょっと怖い気もしながら、
本ページでの掲載を楽しみにしていました。
力強さと緊張感。
まさに、求めているイメージです。
次の制作も楽しみたいと思います。
ご自分のサイトをお持ちとは知りませんでした。
今回の作品はとても好きです。硬質の作品だと思いました。またどこかで作品を拝見するのを楽しみにしています。