正式名称は
札幌大谷大学短期大学部美術科 第43回卒業制作展・第41回終了制作展・(同時開催)専攻科1年展・美術科1年展
おおむね毎年見ているはずなのですが、なぜか「北海道美術ネット」と別館に、見た感想を書いていることがほとんどありません。
意図してないがしろにしてきたつもりは、まったくないのですが、道内では道教大に次いで美術家を数多く輩出してきた教育機関を、結果的に無視してきたことについては、申し訳ないと思います。
会場で気になった作品について述べます。
なお、出品者は全員女性です。2年生、専攻科、研究生などは区別せずに書きます。
川嶋みゆき「風の旅」
白い靴の片方を手にした少女が遠くを見つめ、足元には大きくタンポポの綿毛が飛び散る様子を、ややあおり気味の角度で描いた作品。綿毛の飛散には、絵の具の飛沫が効果的に用いられています。
三角形の安定した構図、白や茶などにしぼり込んで統一感を出した色調など、まさに青春の旅立ち、卒展にふさわしい1枚だといえるでしょう。
岩佐麻由「湿度」
下半身をピンクのドレスで包み隠した女性が風呂場で髪を洗っていますが、その髪の泡が、水色や薄いピンク、黄緑などにわかれて著しく膨脹した情景を描いています。胸もあらわにした女性がおどろいた表情をしているのはもちろんですが、端が溶けかかったドレス、ひび割れの見える鏡、古池のような濁った緑を帯びた浴槽の湯、まるで水気のない床など、入浴中にしてはふしぎなことがいっぱい。しかも右手の窓には謎の手が見えています。
渡邊ゆかり「通過点」
青い服を着て立っている女性の腹を貫通しているレールと3輛編成の赤い列車がモティーフ。女性の周囲には、びんとも原発ともつかぬものが林立して、その頂上や、女性の首筋から白い煙が立ち上っています。ものの大小がいびつになったふしぎな世界を破綻なく描写しています。
畑明日美「concert」
3枚組み。綿のようなかたちをした造形物がぼーっと浮かび上がり、それぞれには窓がならんでついています。夕闇のようなふしぎなあたたかみに満ちた作品。
加藤夕季「思い出」
秋の日暮れ時、公園でしゃがむ女性を横から描いた、写実的な作品。女性の顔はうまく隠れて見えません。遠景は色とりどりの紅葉で明るいのに、近景の石がころがる道と女性は、青系を中心にまとめ、めりはりのきいたうまい仕上がりになっています。
戸田遥「Tonight Tonight」
胴体が鳥かごになっている少女と骸骨のツーショット。
中田絵美「結(むすび)」
表面を焦がした立方体30個を一列に床置きしています。
水村春花「夕方の牧舎」
最近の若い人にはめずらしい、泥臭いまでのリアリズムが、かえって新鮮に感じられます。
津崎絵里「夕暮れ」
踏切が水没しかかっているような一面の水の上で、カバにまたがる少女。頭の上には水道の栓がついています。発想は面白いので筆力を上げてくれればなおよくなるでしょう。
林由希菜「夢想」
単色の版画2枚組。海底都市にキノコのビル群、「ア・バオア・クー要塞」のように水中に漂うもの、海獣、ペンギンの群れ、漂うクラゲ…。イマジネーションにみがきがかかっているようです。おもしろい。
折目桃子「garden」
空想の家々による世界は昨年の会場でも異彩を放っていました。ことしは架空の家の群れは空中に浮かび上がり、地上の風景とふしぎな対照をなしています。
奥平千春「千本桜・骸」
古いスーツケースに入った和服の人形としゃれこうべ。人形の顔が吉井和哉に見えるのは筆者だけ?
山崎沙弥花「生」
緑の庭で、紫色のいすにすわっている赤のTシャツ姿の女性の肖像。背後には石や熱帯植物、木の柵、ピンク色の花などが見えます。なぜか記憶に残る作品。線路際の電柱をモティーフにした「戒」も出品。
橋本祥子「無題」
白石膏による、人間の立像ともなんともつかぬ異様な物体をおびただしく床の上にならべたインスタレーション。
福井理絵「蘭鋳人形」
見せ物小屋に行って着想した作品。顔にできものができた関節人形2体と旭日旗、ポスターからなっており、おどろおどろしさはかなりのもの。かわいらしいデザインのならぶ会場では異色です。
08年1月22日(火)-27日(日)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G)
札幌大谷大学短期大学部美術科 第43回卒業制作展・第41回終了制作展・(同時開催)専攻科1年展・美術科1年展
おおむね毎年見ているはずなのですが、なぜか「北海道美術ネット」と別館に、見た感想を書いていることがほとんどありません。
意図してないがしろにしてきたつもりは、まったくないのですが、道内では道教大に次いで美術家を数多く輩出してきた教育機関を、結果的に無視してきたことについては、申し訳ないと思います。
会場で気になった作品について述べます。
なお、出品者は全員女性です。2年生、専攻科、研究生などは区別せずに書きます。
川嶋みゆき「風の旅」
白い靴の片方を手にした少女が遠くを見つめ、足元には大きくタンポポの綿毛が飛び散る様子を、ややあおり気味の角度で描いた作品。綿毛の飛散には、絵の具の飛沫が効果的に用いられています。
三角形の安定した構図、白や茶などにしぼり込んで統一感を出した色調など、まさに青春の旅立ち、卒展にふさわしい1枚だといえるでしょう。
岩佐麻由「湿度」
下半身をピンクのドレスで包み隠した女性が風呂場で髪を洗っていますが、その髪の泡が、水色や薄いピンク、黄緑などにわかれて著しく膨脹した情景を描いています。胸もあらわにした女性がおどろいた表情をしているのはもちろんですが、端が溶けかかったドレス、ひび割れの見える鏡、古池のような濁った緑を帯びた浴槽の湯、まるで水気のない床など、入浴中にしてはふしぎなことがいっぱい。しかも右手の窓には謎の手が見えています。
渡邊ゆかり「通過点」
青い服を着て立っている女性の腹を貫通しているレールと3輛編成の赤い列車がモティーフ。女性の周囲には、びんとも原発ともつかぬものが林立して、その頂上や、女性の首筋から白い煙が立ち上っています。ものの大小がいびつになったふしぎな世界を破綻なく描写しています。
畑明日美「concert」
3枚組み。綿のようなかたちをした造形物がぼーっと浮かび上がり、それぞれには窓がならんでついています。夕闇のようなふしぎなあたたかみに満ちた作品。
加藤夕季「思い出」
秋の日暮れ時、公園でしゃがむ女性を横から描いた、写実的な作品。女性の顔はうまく隠れて見えません。遠景は色とりどりの紅葉で明るいのに、近景の石がころがる道と女性は、青系を中心にまとめ、めりはりのきいたうまい仕上がりになっています。
戸田遥「Tonight Tonight」
胴体が鳥かごになっている少女と骸骨のツーショット。
中田絵美「結(むすび)」
表面を焦がした立方体30個を一列に床置きしています。
水村春花「夕方の牧舎」
最近の若い人にはめずらしい、泥臭いまでのリアリズムが、かえって新鮮に感じられます。
津崎絵里「夕暮れ」
踏切が水没しかかっているような一面の水の上で、カバにまたがる少女。頭の上には水道の栓がついています。発想は面白いので筆力を上げてくれればなおよくなるでしょう。
林由希菜「夢想」
単色の版画2枚組。海底都市にキノコのビル群、「ア・バオア・クー要塞」のように水中に漂うもの、海獣、ペンギンの群れ、漂うクラゲ…。イマジネーションにみがきがかかっているようです。おもしろい。
折目桃子「garden」
空想の家々による世界は昨年の会場でも異彩を放っていました。ことしは架空の家の群れは空中に浮かび上がり、地上の風景とふしぎな対照をなしています。
奥平千春「千本桜・骸」
古いスーツケースに入った和服の人形としゃれこうべ。人形の顔が吉井和哉に見えるのは筆者だけ?
山崎沙弥花「生」
緑の庭で、紫色のいすにすわっている赤のTシャツ姿の女性の肖像。背後には石や熱帯植物、木の柵、ピンク色の花などが見えます。なぜか記憶に残る作品。線路際の電柱をモティーフにした「戒」も出品。
橋本祥子「無題」
白石膏による、人間の立像ともなんともつかぬ異様な物体をおびただしく床の上にならべたインスタレーション。
福井理絵「蘭鋳人形」
見せ物小屋に行って着想した作品。顔にできものができた関節人形2体と旭日旗、ポスターからなっており、おどろおどろしさはかなりのもの。かわいらしいデザインのならぶ会場では異色です。
08年1月22日(火)-27日(日)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G)
気をよくしない人もなかにはいるので、名についてはイニシャルにするなど、もう少し配慮すべきだと思います。
市民一般に対して見に来るように呼びかけている展覧会で、おおやけに発表している作品について、なぜいちいち本人の承諾を得る必要があるのか、まったくわかりません。
べつに、作品をけなしているわけでもないし。
だいたい、イニシャルなんかにしたら、かえって、まるで悪いことをしている人について書いてるみたいじゃないですか(笑)。
もちろん、「おまえのブログなんかに載せるな」という要望が当事者からあれば、個別に対応いたします。