画壇の芥川賞とよばれた「安井賞」を1996年に受賞した茨城の水彩画家の個展。2002年にもおなじ会場で個展をひらいており、そのときは、大作「饗宴」が圧倒的だった記憶があります。
今回は、冬の農村風景を、抑えた色数で描いた作品がメーンでした。
柳田さんの絵は、リアリズムといえると思いますが、農村の現実をえぐる社会派的なものではないし、懐旧的・ロマンティシズム的な色調もありません。
といって、筆の細かさを誇るようなスーパーリアリズムとも違います。たしかに、冬草の描き方など、じつに真に迫っているのですが。ただ、低い視線で、じっと風景を見据えているというふうなのです。
筆者のいちばん感服したのは「待春」という作品です。ビニールハウスの内部をモティーフにしており、左側には、耕運機などに曳かせるとおぼしき荷台車が、右側には白菜が無造作に置かれ、視線の奥は堆肥のような塊でさえぎられています。天井からは破れかけたビニールが下がっているのが見えます。あまりにも飾り気のない現実を淡々と写し取っている、その姿勢に心打たれました。
このほか、暗い小屋の内部を描いた「冬日」や、水路を描いた作品などがありました。
フランスの風景を題材にした小品も何点かあり、こちらはやや明るい感じがしました。
ことしは9月に、セザンヌの生地として知られるエクサンプロバンスでも個展をひらくそうです。
7月10-15日
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
□柳田昭さんのホームページ
今回は、冬の農村風景を、抑えた色数で描いた作品がメーンでした。
柳田さんの絵は、リアリズムといえると思いますが、農村の現実をえぐる社会派的なものではないし、懐旧的・ロマンティシズム的な色調もありません。
といって、筆の細かさを誇るようなスーパーリアリズムとも違います。たしかに、冬草の描き方など、じつに真に迫っているのですが。ただ、低い視線で、じっと風景を見据えているというふうなのです。
筆者のいちばん感服したのは「待春」という作品です。ビニールハウスの内部をモティーフにしており、左側には、耕運機などに曳かせるとおぼしき荷台車が、右側には白菜が無造作に置かれ、視線の奥は堆肥のような塊でさえぎられています。天井からは破れかけたビニールが下がっているのが見えます。あまりにも飾り気のない現実を淡々と写し取っている、その姿勢に心打たれました。
このほか、暗い小屋の内部を描いた「冬日」や、水路を描いた作品などがありました。
フランスの風景を題材にした小品も何点かあり、こちらはやや明るい感じがしました。
ことしは9月に、セザンヌの生地として知られるエクサンプロバンスでも個展をひらくそうです。
7月10-15日
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
□柳田昭さんのホームページ
普通は目線が地平線まで行くものですが、柳田さんの場合は常に目線が足元あたりにあるようです。
そこから、すべてが始まっているような印象を受けました。
会場では気さくに鑑賞者に話しかけておられ、飾らない人柄と個展というものを開催するという基本的な精神を教えられたような気がします。
テクニックを隠さず教え、ひとりでも多くの人に絵が上手くなってほしいという情熱のようなものを感じました。
私が2度目に行ったときは中学生くらいの少年に、少年の描いた風景から、別の画用紙で枠取りして、画面を切り取ってもう一度別な興味や角度から描くという方法を伝授しておられました。こういう基本的な作画発想の仕方は、その少年に大きな影響を与えたことでしょう。
たしかに目線の低さは印象的でした。
地面や藁、枯れ草といったものに寄せる視線は他の画家にないものがあると思います。