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北海道美術ネット別館

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■パレットのある展覧会 ~巨匠たちの素顔と魅力~(8月21日まで、北見)

2011年08月19日 00時50分46秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 東京・銀座の日動画廊は、日本で絵画といえば日本画や掛け軸であった時代から洋画を手がけてきた、老舗中の老舗画廊。
 同画廊が所蔵品を展示している笠間日動美術館の所蔵している絵画と、画家から寄贈を受けたパレットを展示しているユニークな展覧会だ。

 36人の顔ぶれはそうそうたるものだ。
 ピカソやマチス、デュフィ、ダリといったフランス勢をはじめ、安井曾太郎、梅原龍三郎、鴨居怜、林武、山本文彦、森本草介、遠藤彰子、奥谷博、浮田克躬、向井潤吉、宮本三郎、東郷青児、中川一政、相原求一朗、里見勝蔵、熊谷守一、三岸節子ら、戦前戦後の洋画壇を代表する画家がそろっている。しかも、版画やデッサンはわずかで、大半は油彩だ。
 さらに、北海道ゆかりの田辺三重松、田中忠雄、田中祥三、松樹路人、片岡球子(今回唯一の日本画家)、野田弘志、諏訪敦。
 計36人のうち筆者が知らなかったのはほんの数人だけという豪華さだ。

 パレットには、寄贈する際にささっと絵を走りがきしたものも多く、興味深い。
 なお、札幌出身の笠井誠一だけは、絵がなくてパレットのみの展示だった。


 1点のみ挙げるとすれば、鴨居怜「勲章」かなあ。
 縦長の、30号ぐらいの人物の上半身を描いた絵。顔がはっきりとは描かれてはいないし、やや横からとらえているので、肖像画とは言いづらい。
 男はややふんぞり返っているが、胸にさげているのは、勲章というよりも飲料水のびんの王冠のように見える。背景はない。
 ただそれだけの絵なのに、人間の虚栄心を痛烈に深く掘り下げて描写している。これが、死後も人気の衰えない理由なのかもしれない。

 渡邊榮一「寓話<鳥たちが目覚めても人間のからくりはもとより、ゆめのからくりすらみることはかなわなかった。>」も、複数の画面を組み合わせた平面インスタレーション的な力作。画風はデューラーなどを独学で学んだ作者らしく、クラシカルだ。


 会場に、梅原龍三郎のアトリエを撮ったモノクロ写真が大きく引き伸ばされて飾ってあった。
 たくさんの筆や、画架に向かう画伯の真剣な表情なども、興味深かったが、筆者の目を一番引いたのは、テーブルの端に置かれたピースの缶だった。
 缶ピースは、国内で発売されているたばこの中でもニコチン、タールの含有量が最も多い銘柄の一つだ。ひらたくいうと、健康に悪い。
 しかし、梅原はそんなたばこを吸い、晩年まで酒を飲んでいた。ステーキやうなぎも大好物だった。そんな生活をしていながら、彼は97歳まで生きた。
 こういうことは、個人差が非常に大きい。実は、いま議論を呼んでいる放射性物質の摂取量にも通じる難しい問題である。まあ、等しなみに扱うわけにはいかない、デリケートな問題ではあるけれど。


 
2011年7月16日(土)~8月21日(日)9:30~4:30、毎週月曜日・毎月最終火曜日休み
北網圏北見文化センター(北見市公園町)

観覧料  一般800円 高大生500円 小中生200円

※関連記事
「画商の「眼」力」。やっぱり日本には美術を買う習慣がないのか… (2009年)



・北海道北見バス「小泉三輪線」で「野付牛公園入口」降車、公園内を歩き約400メートル、徒歩5分(北見駅から15分間隔で出ています)
・JR北見駅から約1.8キロ、徒歩22分


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