「「スーホの白い馬」の画家 赤羽末吉」と題する特別展が、9月から11月7日まで道立文学館(札幌市中央区中島公園)で開かれていました。
この絵本作家の画業については見識のある方が説明するでしょうから、ここではよけいな批評をつけくわえることは差し控えます。また「スーホの白い馬」は、モンゴルの民話ではなく、戦後の中国共産党の階級闘争史観が混入しているのではないかという、説得力ある意見があることについ . . . 本文を読む
吉川勝久さんは札幌の全道展会員。
故玉村拓也さんの跡をついで、「GEM木版画展」に出品する道新文化センターの講師を務めていますが、意外にもこれが初の個展だそうです。
玉村さん同様、木版画らしい肥痩のある元気な線が画面に走りますが、最大の違いは、玉村さんがキュビスムに影響されたとおぼしき、直線を多用した画面なのに対し、吉川さんの作品には、風のように曲線がぐるぐると躍っていることだと思います。 . . . 本文を読む
全国的な水彩の団体公募展のうち道内では、日本水彩画会(日水)と水彩連盟の二つが毎年支部展を開き、見応えのある展示を続けています。
水彩連盟は毎年4月に国立新美術館(東京・六本木)で公募展を開催しています。北海道支部展は秋なので、来春出す作品をまず見せて先輩や同僚の意見を仰ぐ人も、半年前に東京で展示した作品を持ってくる人もいるようです。
冒頭画像の左は、竹津昇さん「父のいたところ」。F100 . . . 本文を読む
山崎亮さんは札幌の道展会員。
以前は札幌時計台ギャラリーで1年おきに個展を開いていました。2004年の個展からは、空から見た風景をメインの画題に、オーソドックスな画風で筆を執り続けています。
「山崎さん、昔は海底でしたよね」
と言うと、いったいそれはいつの話だという顔をされてしまいました(苦笑)。
冒頭画像の3点はいずれも「飛行機雲」。
「ユーミン」こと荒井由実(松任谷由実)の初期を代 . . . 本文を読む
(承前)
田湯加那子さんは1983年生まれ、白老在住です。
今回の「ルーツ&アーツしらおい」のメインビジュアルは彼女が描いた4種類の花の絵が採用されています。
彼女が他の地元画家と異なるのは、これまでは主に「アール・ブリュット」の文脈で紹介されてきたことです。
しかし今回は、そういう、健常者とか障碍者とかの区別抜きで評価されて、フライヤーやバナーやウェブサイトにばーん! とあしらわれて . . . 本文を読む
(承前)
以下、あくまで推測、一般論でいうのですが、中央の先端的な作家を展覧会などのかたちで紹介すると、必ずといっていいほど
「地元の作家を無視するのはいかがなものか」
「地域に根ざしていないのではないか」
などという声が出てきます。
気持ちはよく分かります。
東京の現代アートが落下傘みたいにやって来て、昔から地道に活動している地元画家が無視されるように見えては、そりゃ地元としてはおもし . . . 本文を読む
「新版画」と呼ばれる、近代日本の版画が注目されているようです。創作版画のように自らの絵を自ら彫って刷る、というのではなく、浮世絵の伝統を引き継いで、彫りや刷りは職人が行うものです。
川瀬巴水(1883~1957)は、美人画の伊東深水と並んでその代表選手です。大正から戦後にかけて日本中を旅して回り、古き良き風景を、几帳面に写生して版画におさめました。適度に写実的で、やわらかなその画面は、永遠の懐 . . . 本文を読む
小樽・銭函在住で、全道展、北海道版画協会の会員重岡静世さんの個展。
1944年(昭和19年)岩見沢生まれ。早くから絵画に親しみ、旭川の高校在学中に純正展に入選し、道教大3年生で全道展で入賞している。その後、オホーツク管内湧別町の志撫子しぶし、釧路管内浜中町の貰人もうらいとといった小規模校で教壇に立った。
油彩から版画に転じたのが58歳のとき。それで全道展の会員に推挙されたのだから、方向転換は . . . 本文を読む
■心に浮かぶ青い景色はありますか? 藤山由香 Do you have a blue scenery in your mind? -Yuka Fujiyama (2023年8月23日~9月26日、札幌)
昨年閉鎖したギャラリーミヤシタで定期的に個展を開いていた美術家は何人かいて、中には、他の会場で展示すること自体なかなか想像できないほどあの空間に作品がなじんでいた人もいます。
藤山由香さんもその一人だと思います。
団体公募展には縁が無く、ほかに「New Point」や「びょういんあーとぷろじぇくと」といったグループ展に出品したこともあるにはあるのですが、彼女の、丹念に色を塗り重ねて青を中 . . . 本文を読む
(承前)
裏小樽モンパルナスと呼ばれるスペースでは、小樽の画家三宅悟さんが個展を開いていました。
最初入ったときにはちょっと照明が暗いかなと感じましたが、慣れるとそれほどでもなく、味のある空間で、ちょうどいいぐあいに音が響きます。
「私的」というのは、家族や子どもたちを描いた旧作の絵を多く展示しているためでしょう。
近年の三宅さんは、風景などが多くなっています。
筆者が見ていると . . . 本文を読む
(承前)
※タイトルの(9)は(8)に改めました。
長らく北海道で過ごし、現在は奄美大島の海に面した町を拠点に絵画制作を行っています。
奄美大島の自然の中で生活をしていると、鮮やかな木々や水などの色彩が目の中に入り込んで来て、色彩が光の恵みによる現象であるということを強く感じます。
本展の作品は、奄美大島の特有の自然環境の中で捉えた色彩を、自己のフィルターを通して記録できないかと考え制 . . . 本文を読む
札幌のカワシマトモエさんの個展。
今回の個展は、大きめの絵は3点で、名刺の半分ぐらいのサイズの小品をいっぱい並べていました。それぞれに、サクランボが描かれています。
ハウス栽培などで農産物の季節感がどんどん失われていくなか、サクランボは出回る季節が限られている数少ない果物です。
ところで、ギャラリー犬養には広い裏庭があり、カワシマさんが、絵を描いたドアを運び込んで設置しました。
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(承前)
何度も書いていますが、市立小樽美術館に来て特別展だけ見て帰るのはもったいないと思います。
1階の中村善策中村善策記念ホール、3階の一原有徳記念ホールとも、定期的に展示替えをしており、時には中村善策や一原有徳以外の作家の作品がたくさん展示されていることがあるのです。
今回、一原有徳記念ホールは「幻視者一原有徳の世界24」よりも、くだんの3人展のほうが目立っていた印象があります。
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(承前)
福井爽人さんは院展同人で、群青や緑を多用して郷愁と追懐の念をたたえた日本画を描く大ベテランです。
以前、札幌芸術の森美術館でも個展を開いていましたが、今回は福井さん自選の、2010年以降の代表作と、国内外の旅で描いたパステル・素描という構成なので、そのときと出品作の重複がまったくありません。見に行って良かったと心から思います。
福井さんの絵は「甘美」という形容詞がぴったりです。 . . . 本文を読む
札幌の水彩画家石垣渉さんが、はじめて百貨店で個展を開いています。
冒頭画像は、第81回水彩連盟展でSOMPO美術館賞を受賞した大作「北国 雪の轍」(W150号変形)。
水彩画としては破格の巨大さです。
全面に金色の顔彩がちりばめられています。石垣さんによると、大丸藤井で金色の顔彩6種類セットが売られているとか。
北海道の雪の大平原。
何も無いだけに、スケール感を出すのがかえって難し . . . 本文を読む