小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

「日本で思うこと」

2011-02-11 00:44:17 | ニューヨーク暮らしの日々

「過去と今」 日本でおもうこと
 ニューヨークのアパートから、中庭ごしに見えるカソリック教会の美しい眺めはどんなにか私の暮らしを豊かにし、創造力を育んでくれたことか。

 1902年に建てられたローマンカソリック教会の青銅とスレートの屋根に降る雪。
屋根の上に登る三日月。霧ににかすむ屋根。雨に濡れる屋根。 屋根の上の空。雲。
そして夜、大きい薔薇窓のステンドグラスが暗闇に美しく輝く時、ニューヨークで住んでいる幸せを感じる。
人々の日々の暮らしから、生きざまから日々感激することが多く、やりたいことがたくさんありすぎ47年が
夢のように過ぎていった。

 ところがふとした運命的なご縁で谷中のお寺の前にある一軒家をみてすぐ帰国を決心、その6ヶ月後に
私は日本に住むことになった。
窓から眺める景色はない。しかし谷中はお寺の町。しかも日蓮宗のお寺が多い。熱心な日蓮宗の信者で
あった母から般若心経や日蓮のことを聞かされて育った子供時代を考え、不思議な思いに浸っている。

「日本のやさしさ」


 ここ数日地図を片手に谷中を歩く。森まゆみさんの“谷中スケッチ”(筑摩書房)を読む。
副題はー心やさしい都市空間ー 
江戸のある町。日暮らしの里。寺、寺、寺。坂と路地。この地区がこれほど古い町とも知らず、もちろん歴史も知らずなので驚きも抜群!散歩も退屈しない。この町の住人で駅の向こうのことはほとんど何も知らない人がいるという嬉しい町だ。これからどっぷりと浸っていこうと思う。

 お寺の門をくぐると一番近いところにお地蔵さんが並んでいる。檀家の誰かが作ったのだろうか。
新しい帽子と前だれ。お花も添えてある。やさしい日本の風景だ。色あせたぼろぼろの赤い帽子、
風化して繊維だけが残っている前だれもある。みな実にいい顔をしている。誰が彫ったのだろうか。
一人前になるには6年ぐらい山での石の切り出し仕事、仏の顔がうまく彫れるようになると
石工は近いうちの死ぬ、仏が呼ぶのだという言い伝えがあったとか。胸が打たれる話だ。
谷中の美しさは、死ぬまで精進した人たちの作った町といえるのだろう。

「日本の戸惑い」
 半世紀近く日本を離れていると自分証明のためにどこでも印鑑が必要になる。
「え?自分を証明するために印鑑が必要なの?印鑑が本人より重要なのはなぜですか?」
「はい、規則ですから。サインでは認められません。ハンコは100円均一でで売っていますよ」
という。100円で自分を証明しなければならないのはおかしいことだ。ハンコ1つで財産も動く。
 21世紀、ハイテックを誇る日本での摩訶不思議の一つだ。
 

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問い合わせ:ホームスパン 原、稲船まで, 03-5738-3310


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