小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

「アメリカンフォークアートと日本の民芸」

2010-05-30 17:35:19 | ものつくり

                        発想と文化の違い 
 長くニューヨークに住んでいて追従を許さないほど日本が優れてい
ると日々感じるものは陶芸、繊維、食の三つ。高級から並みまで
日本人の血として暮らしに浸透しいる文化だと思う。

 まづ陶芸。今でこそ貧乏人が居なくなった日本でも、昔から自分の
コーヒーカップ位は収入に比例しないほど高くても好きなものを買う
習性がある。アメリカ人ならば、100ドルのカップはまづ買わない。
買ったとしてもゲスト用に鎮座している。日本ではどこに行っても食
器はそれなりに美しいものがあり、使用しているのは素晴らしい。

 繊維・染色。これも抜群に優れている。売れなくとも、時間がかか
っても良いものを作りたいという作り手の願望が読み取れる。
そして「うわー!素敵」と収入に見合わなくとも素敵だとスカーフ位は
ブランドでなくともすぐ買うのが日本人だ。そして繊維の縦糸、横糸
位は素人でも分かっている。

 食。60年代の終わりからフランスで始まったヌーベルクイジンの盛
りつけは日本に来たフランス人がはやらせた日本の影響だ。一人でも
レストランで新聞を読みながら食べれると喝采を浴び、折からの健康
食ブームに乗り、ニューヨークで起こった日本の寿司ブームは世界中
のライフスタイルさえも変えている。またお惣菜の小売りスタイル(少な
くても買える)も世界に影響を与えている。

 庭先で取れた柿の皮を縁側で丁寧にむき、美しく並べ串に刺して
干し柿を作る。少し高くても美しければそちらを好む日本人。 
 合理的なアメリカでは皮むき機を発明し、見渡す限りの土地にリン
ゴを植える。食べきれなければジュースを大量に作る。マーケッティン
グを研究する。消費者も安くておいしいものを買う。洋服も縫い終わり
の糸が長くついていても値段と合えば結構。文句は言わない。ブランド
ばかりを身につける人は想像力がなく、マネージメントが下手のレッテ
ルが貼られる。金持ち族はロイヤルコペンハーゲンのセットを食器棚
に並べている。

 最低は日本の住宅。スペースがない。ちまちまと仕切たがる。誰も好
きではないけれど、チョイスが限られている。建築家と施工者の問題。
バチカンを建てたベリーニの発想は日本人には浮かばないだろう。

 アメリカンフォークアートには必要から生まれた媚びない無心の美しさ
がある。つたなさが根底にある素朴なものが多い。日本は技を競い、マ
スターになるまで生涯をかける。発想に敬意を払うアメリカではマーケテ
ィング、大量生産を考えてビジネスが発展した国との違いだろうか。

 18世紀~19世紀の終わりごろまで作られた貯蔵食品用アメリカンストーンウエア

 ケーキスタンド。1830年~1845年ごろまでに作られたアメリカンプレスドグラス


アメリカンフォークアート店内   歯科医の看板    か
ざみどり(フォークアート美術館)
 *風見鶏は方向を示し建物の一番上に取り付けられた。80年代高価な値がつき、ヘリ
コプターで空からひっこ抜く泥棒が話題になった。


 アメリカの2大フォークアートといわれるキルト。   もう数少なくなったキルト専門店

キルトと並んでアメリカを代表するアメリカン フックド・ラグ。  アメリカ人形

 いづれも日本人は手の中でめでるものを愛し、アメリカ人はスペー
ス、マスを考えながら発展してきた土地柄と歴史の違いがある。

 最近アメリカの陶工展を日本で見た。つくずく感じたことは手の中に
入れて育むサイズの陶芸は、アメリカ人には申し訳ないが作者のメッ
セージは日本人には届かないと思った。良い悪いでなく、伝統と暮らし
のスタイルの違いだと思う。