小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

祈ること

2012-09-30 13:31:45 | 暮らしのジャーナル

世界中に祈る人がいるーしかし憎しみを繰り返しおもいだす人もいるー

 貧しい国を旅行して、みちばたの小さなイオリに手を合わせ熱心祈っている人をよく見かける。
 「ああ人間の善意っていいものだなー」と立ち止まって眺める。

 誰かがそこで亡くなったのかも知れない。奇跡が起こった場所かも知れない。または教会やお寺を建てることが出来なかった市井の人が、
感謝して作ったのかも知れない。偶然に町に、またはその人に繁栄をもたらしたお猿さやん狐さんかもしれない。
 谷中の街角に今も小さなお地蔵様が祀られ、いつも誰かがお花を添えている。ときどき手を合わせている人を見かける。
戦争中、焼夷弾を避けて防空後に逃げこんだ人たちの真上に焼夷弾が落ちて全員がなくなったという。

 理由はなんであり、守ってあげたい。 生きた証を伝えていきたいと願う人間共通の善意や祈りは美しいとおもう。
日本では山路に立つお地蔵さんは亡くなった人の菩薩像だったり、外国では聖母マリアだったり、その土地で生まれた聖人であったりする。

 子供のころ、「感謝する時はどこでも,誰がい居なくても手をあわせるものですよ」 と母が言った。
あまり手をあわせない不肖な娘だけれど母の言葉は忘れてはいない。

メキシコで貧しい姿のインディオがすべてが金張りの豪華絢爛バロックデザインの教会の祭壇の前でひざまずいて静かに祈っている。
権威にひざまずいているようで、それを見るのは切ない光景だ。

 人様の国の建物を叩き壊し盗みをするもの、悪いリーダーに先導されるもの、そして法の力で守るというもの。
土地は神様からの贈り物で売るものではないというアメリカン インディアンの思想はマンハッタンを25ドルで売ったその時から滅亡の道をたどった。
マンハッタンは世界の繁栄のシンボルとなり、土地売買は常識となっている。これからどこに向かったらいいのだろうか。


子供のころ、漢文の時間で子曰くといろいろな人生の名言を習った。

孔子様、どうぞあなたの叡智でさまよえる羊たちに教えてください。
                 
                    
               谷中のこんこんさま                   谷中の庵。 防空壕でなくなった人の名前が奉納されている。
               
               ギリシャの小さな島の草庵
               
                  

 

 

 

 


夏の終わり

2012-09-14 22:56:16 | 暮らしのジャーナル

蒸し風呂日本

 9月の半ばだというのにまだ暑い。10日ほど前まで蝉がまるで断末魔の叫びのようにミンミン鳴いていた。
死にたくないと叫んでいるのだろうか。または夏は素晴らしいと精一杯うたっているのだろうか。
炎天下の蝉の鳴き声はなんだか切ない。

しかし、数日で蝉は急にいなくなり、今は鈴虫が鳴いている。
小さな谷中のお寺の庭に萩が咲きはじめ、ススキが揺れ、 満月に映えて、コオロギが鳴いている。日本には静止した美しさがどこにでもある。どうしてだろうか。外国だって美しいところはどこにもあるけれども、日本人の血が立ち止まらせるのだろう。

人生の半分以上をニューヨークで暮らし、日本には絶対ない風景にも立ちどまされたけれども「うん!よかった」と
汗を拭きながら額縁の中の小さな日本の風景も楽しんでいる。

写真を整理した。脳裡に焼き付いているギリシャの美しい夏の終わりの風景を懐かしみながら・・・

     
      
   

 

 

 


空間をデザインする・彫刻家・篠田守男

2012-09-03 22:24:34 | 暮らしのジャーナル

空中庭園

 地球の引力から解き放され空間をデザインする彫刻家。
1993年の美の朝、山根基世さんの篠田守男インタビューを youtubeでみた。
アルミニューム、真鍮の彫刻をワイヤーで結ぶ「張力と圧力」の計算された空間世界。
しかし、
機械的な冷たさの中にユーモアもある。金属を正確にコンピューターで削り空間に作品を作り上げる。

このバランス、張力と圧力の世界を「篠田尺」というのだそうだ。

抽象彫刻を通して空間の問題を研究している彫刻家、篠田守男の
彫刻展を縁あって数日前、横浜に見に行った。
会場は若者たち、ファンらしい人たちでにぎわっていた。金属の塊を空中にワイヤーで固定させた夢の彫刻の周りには若者たちが取り巻きその様子は不思議な楽しい世界であった。

たぶんテキサスの荒原にこの巨大な彫刻があれば、またその下に裸の女性が横たわり、UFOから来た作曲家が
シンフォニーを指揮すれば、シュールな舞台は出来上がるのだろう。

81歳。病で倒れ、いつも大作を作っていた彼は、「小さいもの、今できるものを作くればいいのだ」と思うことでリラックスできたという。
今までになく小さいサイズの彫刻を小さな画廊のために5か月かけて制作したという感動的な展覧会であった。
ひと月1キロ痩せ、5か月で5キロ痩せたという。篠田守男の昔の映像では、いつもくわえたばこ。
現実はたばこの煙の中での制作でたぶん人間臭い人かもしれない。

バックミンスター フラーの
アイデアから構造の仕組みを学んだという。
数年前、ニューヨークのウイットニー美術館でみた1930年代に制作したフラーの宇宙世界の展覧会は新鮮な感動であった。

フラーの富の概念はお金ではなく人間の生命を維持し、保護、成長させるものであった。
「自分の時間をより有効な研究に投資すれば、自分の富を増やすことになる」と言っている。
彼のアイデアはいつも新しすぎて建築材料など、たくさんとったパテントも有効ではなかった。
1967年、フラーのモントリオール万博のアメリカ館

 

 「地球上にない彫刻を作りたい」と作り続ける篠田守男。

ものつくり、創造の世界、アーチストは素晴らしいとつくずく思う。