小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

近い将来自然繊維は宝物になる

2013-01-22 01:03:56 | ものつくり

   捨てるのは待って! 木綿、絹、麻、ウールをリサイクルしよう.


 残り物でもアートを作れる、再生可能はすごい!
ものつくりを教えていて一番難しいのはデザインを各自にまかせることです。サンプルがないとなかなかできません。できないのではなくて視覚的に経験を積んでいないからだと思います。

作品展、コンテストに出すために作る理由は別です。社会現象で無数にできたキルトからキルターたちは自然に学びとっていきました。うまく見せようと思って作るものは大抵の場合感動しません。作為がなく無心で作ったものに人々は感動します。
 規則がなく好きなように作ったフックド・ラグはキルトより易しく表現方法もずっとバライエティにとみます。

 

私たちが今、天候の変化や自然環境の変化に驚いています。
近い将来、自然ファイバーは貴重なものになっていきます。経済も重要な理由でアメリカのコットン産業も今はトウモロコシや大豆畑に変わりました。奴隷の綿摘みがいなくなったこと、その代りに素晴らしいテクノロジーで科学繊維が出来ていることは時代の変化で、私たちもその恩恵を得ています。

しかし、ウールは素晴らしい。シミがついた、虫に喰われた、縮んでしまった、古臭くなった、流行おくれ、などの理由ですぐ捨てていませんか?
残念ながら日本の家には収納庫が少なく取っておきたくてもスペースがありません。外国人が「もったいない」ムーブメントを起こすと日本人はすぐ考え直します。もったいないは物だけではありません。時間ももったいないと思います。何ができるか社会にもっと関心を持ちましょう。

動かせる健康な手もある。デザインをしたことないので 手創りは私は駄目” ときめつけていませんか?デザインは心の動くままにすればいいのです。写真は19世紀アメリカで作られた残りウールで作ったフックド・ラグです。よく見てください。これなら私も作れると思うでしょう?。

100%ウールでラグを作れば100年は持ちます。
玄関に置けばあなたのステートメントになります。作り終わると誇らしくなり、初めは「踏まないでまたいでねー」と言いたくなると皆さんがいいます。作った人だけがわかる誇らしい感想です。

このたび暮らしの手帖61号に花森安治さんの表紙カバーから作成したラグの展覧会があり、その中から17点を花森さんが生きていらしたら「よくやりました!」と言っていただけるように原画に忠実に作りました。リビングファッションの店、原宿の「かぐれ」で展示し、展示を見た人の多くの感想を一口でまとめると、こんなことが出来るなんて「驚きました」という言葉でした。一番誇らしく思った人は作った人たちでした。企画者にとって、暮らしの手帖の編集者たちも心からやってよかったと思ったことはとても幸せなことでした。

「成功の反対語は失敗でありません。やらないということです」といった身体障害者の先生のおっしゃった言葉を私たちは、心に刻んでいきましょう。

写真のラグをよく見てくださいすべて残りウールで作ったラグです。

6歳ぐらいまで子供は天才だとピカソは言いました。天才でない私たちでもやる気があれば部屋を美しく自分の手で飾り、100年も生き続けることができるのは楽しいですね。

唯一人の男性でラグを作り、3度の日米展に参加いてくださった有吉熙さんがお亡くなりになる前にお手紙をいただきました。

「私は一生企業でものつくりをしてきましたが、引退してからラグを作り自分の手で作ったラグを家族に残していけることに感動しています」と。

                 

 

  

 


1568年の腹の虫、戦国時代の医学書「針聞書」(はりききがき)

2013-01-12 22:02:12 | ものつくり

愉快で可愛いい妖怪のような病原菌


 




 

これらの愉快でかわいい妖怪のような虫たちは戦国時代の医学書、「針聞書」に書かれた67種類に及ぶ人間に宿る病原菌の一部です。
今から450年もの昔、織田信長が活躍していたころの病気の治療、針を打つ場所,お灸を打つ場所、臓器や体内図を描いた最初の医学書
の中の虫の正体です。

当時はおなかが痛いときは腹の虫が騒いでいると思いました。「虫の知らせ」「虫が好かない」「虫の居場所が悪い」「むかむかと腹の虫が
収まらない」という表現があるように、夜泣きする子供はかんの虫が騒ぐと言ったのも顕微鏡もレントゲンもなかった時の想像した虫たちです。

上段左:人体の各所に住む病原体。上段中:肝癪=この虫に取りつかれた人は怒りで顔が青ざめ、人を怒ることを好むようになる。
上段右:肺虫=肺に住み人間が食べた米を食べる虫。伝染するので要注意虫。
下段左:蟯虫=この虫に取りつかれた人は必ず死ぬ。枕の下の熱まで閻魔対応に告げるので必ず地獄に落ちる。
下段左中:悪虫=脾臓に住みつき食べた人の栄養物を横取りする。取りつかれると痩せの大食いになる。
下段右中:肺癪=白い虫でこの虫が現れると色白になり胸を患う。下段右:亀癪=栄養を摘み取り薬の効かない虫。

そのほか男女が和合すると出てきてむらむらするという蔭虫、心臓の虫、腰の虫など想像上の虫たちの治療法が書いてあります。

この医学書は九州国立博物館の所蔵で私は2006年フレーベル館出版、アーサー ビナードが書いた子供用絵本、「はらのなかのはらっぱ」 針聞書(はりききがき)をみて
飛び上がって喜び、大いに楽しみました。

その時ニューヨークのアメリカンフォークアート美術館でのラグデイに展示のためにこの虫たちを登場させてフックドラグを作りました。
体の中の原っぱを泳ぎ回る虫たちのフックド・ラグ。玄関マットまたはドア前の敷物。
          
右)脾臓の虫=肝臓に爪を立ててしがみつくとき、熱中症をお越し体がひでる。筋肉にしがみつかれると頭を打ったようなめまいがする。

アメリカ人にこのラグのデザインを説明すると 「?」 「450年前の医学書の中の病原菌です」 「?」 話を本気にした人は勿論いませんでした。

 現在は当美術館で縫いぐるみなどが作られマスコットになっているらしいです。私がうれしいと思うのは試験管に入れられた虫たちです。
サイトで九州国立博物館、針聞書を参考にご覧ください。この上なく楽しいです。最近出版されている復刻版は高価ですが、子供の本に
したことが素晴らしい。

日本人でさえ知らないことをアメリカ人のアーサー ビナードさんが面白い!と早速絵本にして出版してくれたのはうれしいことでした。

ビナードさんの日本文化を観る眼はすこぶる愉快で世界観に満ち,その着眼点は日本人を開眼させてくれます。
日本人の及ばないユニークな日本文化の分析と独特の知恵の分かち合いは腹ごなしどころでなく新鮮ですね。

 ビナードさんのサイトです。
http://www.web-nihongo.com/wn/haragonashi/12.html/