No3: US/JAPAN Rug Hooking Exhibition
日本参加者のラグコメント
伊藤恵子
もったいない
アメリカのラグはいろいろなアイデアや工夫がされていて、見ていて
すごく楽しい気分になりました。アメリカのラグはいろいろな素材が利
用されていたのに比べ、日本のラグは同じ素材で作っていたので、す
ごく綺麗に仕上がっていて、全体的に落ち着いた感じがしました。
2005年の展覧会をみて、「私のラグもいつか展示されたらどんなに
楽しいだろうなぁ~」と思っていたので、本当に参加することができ、
夢が実現しました。
ラグを愛する方々と心がつながって楽しい時間を共有できて、とても
幸せでした。
展覧会の関係者の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。
自分にとって、自分が生きた足跡、歴史みたいにしていきたいなぁ~
と思っています。日々、感じたことや思いなどをたくさんラグにこめて、
会うこともなかった孫やひ孫が、ラグをみて「こんなおばあちゃんがい
たんだねぇ~」と懐かしんでもらえ、温かい気持ちが伝わるといいなぁ~
と思っています。毎日毎日が、なんとなく過ぎていってしまいそうですが、
一つでもお気に入りのラグが完成してたくさんのラグの画像を先生に
送れるようにがんばりたいと思っています。
これからもよろしくお願いいたします。
井上美沙
四葉のクローバー
アメリカのラグはイロイロな素材を使ってあるのに驚きました!
ウールだけでなく何でも使えるんだと感心しました。アメリカのラグも
だけど、デザインが皆さん素敵でした。それぞれのストライプが面白
かった。 いらなくなった布を再利用して日常で使えるモノを作って身
近にラグを感じられたらいいなぁ~と思っています。
藤村奈保子
春の川面
「あれは、確か2008年のはじめのことだったと思います。
笹塚の喫茶店で恵さんとお会いし、久しぶりの再会を喜びあった後、
恵さんは目をきらきらさせて言いました。「ラグの日米展をやろうと思
うのよ」。その時私がどんな事を答えたのか覚えていないのですが、
恵さんのきらきらした目が印象的で、直感的に「ああ、恵さんはきっと
実現されることだろう」と思いました。
私が、全くの初心者にも関わらず、恵さんに誘われるままに思わず
「参加します」と答えてしまったのも、あの恵さんの”目力”に動かされ
てしまったからなのだと思います。その後、「超」が付く不器用な私は、
自分の軽率さをものすごーく後悔することになりますが、恵さんの叱
咤激励を受け、先輩たちの温かい助けを受けながら、その年の秋、
なんとか初めてのラグを仕上げることができました。
今、アメリカから戻り、自宅の居間の壁におさまった、自作のラグを
眺めながら、あの時の恵さんの目の輝きの意味が少しわかったよう
に思います。それは、「自分の手を動かして、ものを作り上げることの
喜び」を知っている人の目だったのだと。
拙いながら、一枚のラグを織り上げることのできた私も、少しは恵
さんの輝く目を手に入れられたのだろうか、と思うのです。
今回ラグ作りを通して恵さんから教えていただいた、「ものを作り上
げる喜び」や、「ものに思いを込め、人に伝える」あり方は、現在の私
に与えられたミッションである「番組づくり」にもつながるものとして、
生かして行きたいと思っています。
河合香都子
商品宣伝用掛け
アメリカのラグデザインの発想がすばらしい。大自然のこと、日常
のことあっと目を引くものがたくさんあった。配色もきれいだ。
日本のラグは私を含めてデザインは平凡なものが多かった。色彩的
にも暗い感じが多かった。
フックの仕方は、日本人独特の繊細さが出ていたような気がする。
天下のミキモト3箇所、玉川高島屋、アメリカへ自分の作品がこん
なにたくさんのところで展示されることは一生ないと思う。恵先生のお
陰です。とても嬉しかった。友達もたくさんみにきてくれ、鼻高々でした。
感謝です。歩けなくなっても、一生の趣味として続けて行きたいです。
もっともっと、ラグが普及するように、協力していきます。
よろしくお願い致します。
小林和子
北斎の驚き
アメリカ側は堂々と自己主張していて、さすがと思いました。
殆どの作者は先生クラスの経験者たちだと聞きました。
日米交換展はいろいろの事を学ばせていただき、素晴らしい。
経験になったと喜んでいます。日本側のラグもなかなかなものでした。
私は大好きな北斎の「神奈川沖浪」を3Dメガネで見てみましたら、こ
ういう画風にまりました。実は切り紙で自由に部分を作り、置き直して
みると北斎らしくもあり、私らしくにもなりました。多分北斎も驚いたこ
とでしょう。離れてみても北斎風になっています。
タイトルは「あ!北斎」で、銘は 「AHOKUSAI」としました。
「あ、北斎だ」と思ってくれても良いし、英字で書くと「アホくさい」
ユーモアもうまれました。多分北斎も笑ってくれることでしょう。
恵から好きなようにするのが一番と言われたことで自信がつきました。
「ああ!北斎か」とアメリカ人も喜んでくれたと聞いて安心しています。
影響をたくさん残してくれた素晴らしく、誇り高い第3回日米フックド・
ラグの交換展でした。 生きている限り作り続けるつもりです。
山根基世
私の猫ちゃん
私がフックドラグを作ることになったのは、小林恵さんの勧めがあっ
たから。恵さんは私の敬愛する「人生の先輩」で、その生き方に深い
共感を覚えている。彼女とのつきあいは、かれこれ四半世紀以上に
及ぶ。最初は私が担当していた番組の中で小林恵さんがプロデュー
スした「アメリカンキルト」の展覧会を紹介するためにお会いした。
彼女のアメリカンキルトへの深い理解や愛情は、私の胸を打ち、視
聴者にもその思いは伝わったと思う。彼女がデザイナーから日米文
化比較研究者へと変身していく上での重要な意味を持つが、アメリカ
ンキルト研究であり、その著書は全米の図書館に納められている。
そんな小林恵さんが、アメリカンキルトと訣別する。アメリカ開拓時代
の女性たちが家族を愛し、日々の暮らしを美しくしようと心を込めて
作った「キルトの心」を伝えようとしたのに、日本ではなぜか恵さんの
意図とは違う方向にキルトが進み、本来の精神が見失われているよ
うに感じられたからだ。そこで次に小林恵さんのプロジェクトは、キル
トと同じにつくられたフックドラグ。アメリカンキルトと同じく、開拓民た
ちの暮らしぶりや、創造性を象徴するクラフトで、原点に戻るもの作り
精神の入れ直しをしたいという。
小林恵という人は、人がまだ気づかないことに最初に手をつける。
あまりにポピュラーになりすぎ、方向が変わってくると、すぐに嫌気が
さして次の対象へと移っていく。このあたり、進取の気性に富むとい
える。常に他の人がやらない新しいことに挑戦する、真のアーティスト
だともいえよう。
私は何年も前からフックドラグをやるように勧められていた。下手
でもいいのよ、作ることに意味があるのよ、手で何かを作り出すって
すばらしい事よ、あなたのような忙しい人が作ることは多くの人の希
望になるわ・・・と。少しずつ心を動かされ、古い布を同じ幅に切る器
械(うどん製造器と呼ぶ)は購入しておいた。だが、NHKの現役アナ
ウンサーの間は、なかなか時間がとれなかった。定年退職し、やっと
こさっとこゆとりができたところで、改めて恵 さんから、展覧会を開く
ので出展してみないかとのお誘い。「作って見よう」という気持ちにな
った。図案を考え、古いセーターやウールのスーツなど解体し、うどん
製造器で細い紐にしながら図案のどのあたりをどの色にして、どう組
み合わせようかと考える楽しさ。 毎日のちょっとだけ空いた時間に、
少しずつ作業を進めて、だんだんできあがっていく嬉しさ。
ながーい髭のかわいいネコの姿ができあがった。 完成したときには
「ヤッタ!」という、大いなる達成感があった。ボコボコの荒い目で、
見るからに不器用な、まことに粗雑で下手な作品だが、私の処女作!
愛着はひとしおだ。
上手下手は関係ないのよと言っていたその口で、小林恵さんは、私
の作品を基礎のできていないラグだと言ってガッカリした様子だったが、
そんなの何のその。私は、わが処女作ラグの、このかわいいネコちゃ
んを生涯の宝として大切にするつもりだ。作ってみて思うのは、本当
に上手下手はたいした問題ではないということ。プロになろうというの
ならともかく。勿論上手に作れればもっと楽しいのだろうが、ただ作る、
それだけで十分楽しめる。できあがるまでの過程が心躍る時間になる。
手を動かすことで、何らかのモノが生み出されていく時、何か「確かな
もの」を手でつかみ取るような実感がある。それは、とても心を安らが
せてくれる感覚だ。
日本を代表する彫刻家・佐藤忠良の話では、戦後シベリアに抑留さ
れていたとき、極寒の食べ物もない希望のない暮らしの中で、多くの
人が手近な材料で何かを作り始めたそうだ。たとえば白樺の木切れで、
お椀やスプーンや、タバコのパイプを作ったり・・・。
夜、ペチカの前で、背を丸め、黙々と手を動かすその姿は、「俺は生
きているのだぞ」という無言の叫びのように感じられたという。
「人間というのは、自分が人間であることを主張せずにはいられな
くなったとき、触覚に身体や心をゆだねながらものを作り出すのかも
しれない」とも佐藤は書いている。
「手でモノを作り出すってすばらしいことよ」という小林恵さんのことば
は、確かな真実なのだと思う。
写真撮影:高橋仁巳
小林恵のラグ教室:お問いあわせ ホームスパン
℡:03-5738-3318
hara@homspun.com
ミキモト アカデミー:「アメリカン・フックド・ラグを作る」
5月19日、6月2日、6月23日
お問い合わせ: フリーダイアル:0120-461176
http://ginza2.mikimoto.com/5f/