小林恵のNY通信

NY在住47年、2011年より東京谷中に居住。創造力をのばすためのエッセンス、スパイスをいれた私の暮らしの手帖です。

「詩を奨励する日」

2005-04-23 03:11:20 | ニューヨーク暮らしの日々
(NATIONAL POETRY MONTH)
 
出版社、本屋、学術団体、図書館、学校、詩人などが集まって詩作
をアメリカ文化として活性化するために1996年、アメリカ詩人アカデ
ミーとして発足した。企業や個人寄付、ボランティアなどで組織され
ている。公式には国立アート基金、紐育では紐育州の文化事業部、
紐育市の文化事業部などがスポンサーである。今月は発足してか
ら10回目。世界一の規模をもつ。
やっと春を楽しむ季節。42丁目図書館裏のブライアンパークで昨日、
詩の朗読会があった。子供も大人も家や学校で文学や詩作に関心
を寄せ、オフイシャルに奨励している詩に親しむ月である。出版社や
本屋から寄付された本が山のように積んである。すべて無料。文学
部の学生たちもボランティアで参加している。本は「もの」ではない。
叡智が詰まった文化的財産だ。取れすぎた大根のように売れなけ
れば切断破棄してしまう日本の出版社。本がものになり、屑箱に捨
てられてしまう文化は寂しい。出版社の創始者たちは、本から高邁
な精神を分かち合う志を持っていたはずだ。アメリカでは分かち合い
精神が日々生きずいている。チューリップを背にしたテントの中で、
少女がちゃんと間を置いて上手に詩を朗読した。
ーポケット一杯の詩ー    
詩をポケットの中にしまっておこう
絵は頭の中に  寂しいと思わないように   夜ベッドの中で    
小さな詩は歌ってくれる  小さな絵を見せ  
たくさんの夢が踊ってくれる     夜べッドの中で   そうだ・・・   
詩をポケットの中にしまっておこう   詩を覚え   寂しくないように       
夜ベッドの中で                            
By Beatrice Schenk De Regniers     
(写真はこの詩を書いたポケット、4/17 紐育タイムスの1ページ広告) 

-詩の食べ方ー   
無作法でいいんだぜ  食べちゃおう  手でつまみ
顎に落ちた汁も舐めちゃおう  今がそのときだ  
ナイフもフォークもスプーンも、
お皿もナプキンもテーブルクロスもいらない 
茎もなく皮もない    
種もなく芽もない   捨てるものがなにもないんだ
By Eve Herriam   

「紐育の看板」

2005-04-18 07:41:04 | ニューヨーク暮らしの日々
発言の自由: 

マンハッタンのチェルシーで「これが私たちの大統領です」と書い
てある変な看板を発見した。立ち止まって見る。19世紀に出版さ
れた「女,黒人,インディアン,痴呆者,選挙資格なし」という差別で有
名なポスターがある。その痴呆者の顔をもじったブッシュの顔だ。
誰がスポンサーなのかはわからない。同じことが日本ではありえ
ないだろうと看板を見ながら考えに浸った。 
帰国したとき、紐育から来たアメリカ人と一緒に銀座を歩いた。
最大ボリュームの音楽をかけた車が通過した。無関心の通行人を
見てアメリカ人の友人は「なぜ日本人は抗議しないのか?」「多分
問題を起したくないのでしょう」と我ながらすっきりしない答え方をし
た。「卵をぶつけるとかトマトを命中させるとかいろいろ方法がある
のに・・・」日本人は理解できないと不思議がった。 
最近シカゴの大学で”悪魔の斧:隠された罪悪の歴史”という展
覧会でアーチストたちは歴史の罪悪を赤裸々に表現した。ブッシュ
暗殺のスタンプもありシークレットサービスも見にくるほどであったが、
学校では「アカデミックな自由と表現の自由、発言の自由をモットー
にしています。アートはチャレンジすること。人々に問題提起するこ
とです。学校はこの点を支持しています」と語っている。

「抱きしめる : Hug」

2005-04-06 01:29:58 | ニューヨーク暮らしの日々
雨の後の虹のよう!
 
 アメリカ生まれの日本人の息子がアメリカの大学に入ってから「うち
の両親は僕を愛していないんだよ。だって一度も僕をハグしてくれた
ことがないもの」といった。両親は勿論、友人の私もカルチャーショッ
クをうけた。
 日本人はハグする(抱擁する)習慣がない。身についていないので
忘れてしまう。その後は会うたびに「ハグハグ!」と号令をかけてお
互いにハグするようになり、やっと身についてきたようだ。親しい人
と体を触れ合うのは愛情の表現。感情を入れない握手を「魚の手」
といってコミュニケイションは成功しない。しかし、電車とか通りでち
ょっとでも他人の体に触れると即刻に「失礼しました」と謝りあう。

 電車の中で、もそもそと魚の手で触りたがる日本の痴漢の話には
「クレージー!」というのが殆どのアメリカ人のリアクションだ。 
 世界共通の習慣として、部屋に尊敬する人が入ってくると誰でも立
ち上がるのが普通。リズムの好き嫌いは別として自分の国の国家を
歌うときは、どこの国だって立ち上がって歌う。いずれも自然のリアク
ションだ。日本の学校不起立問題には心を痛める。命令となれば号
令に反抗したい若者の気持ちもわからなくもない。当たり前が当たり
前でなくなるときは大人たちの責任かも知れない。しかし、誰も優し
さには抵抗できない。
 検討する前にやさしいき気持ちで教えてあげよう。話してあげよう。
ハグについて書いた詩がある。 

うれしい言葉がでてこないときハグしよう。
誰でも幸せになる小さなハグ。 
お金も技術もいらない。ただ腕を広げ、心を広げるだけ。
ハグはうれしい。 
ハグしあおう。熊ちゃんを抱くように。何も考えないで・・・
雨の後の虹のよう・・・
Thanks for visiting, but before you go... HUG

「アイデア」

2005-04-01 09:44:59 | ニューヨーク暮らしの日々
雪玉もお金になる:


は奇想天外なアイデアもお金にしようと実行する人の精神にいつ
も乾杯している。明るい生命力がみなぎっているからだ。パークのク
ロッカスが咲き、水仙のつぼみも膨らみ、やっとニューヨークも春め
いて来た。72丁目のパークの入り口で手製のアクセサリーを売って
いる人がいる。写真を撮ろうとすると「だめっ!私の素晴らしいアイデ
アを盗まないで!」と睨みつけられた。え?こんなデザインも商品に
なるの?と感心してカメラを向けたその瞬間であった。うーん!この
辺が日本と違う。日本では舌を巻くほど巧い人が「私の作り物など
売り物にするのは畏れ多くて・・」とか何とかややこしいことになる。
アメリカ人はみなすばらしいと褒められて育つからなのだろうか。
人と比較しないで育つからかくも底抜けに明るいのだろうか。 街角
に座り込んだ男が通りに蜘蛛を投げ出し、スポイド付のコードで蜘蛛
を操っている。「キャーツ!」と通行人が叫ぶのを売れるより楽しんで
いるみたいだ。
「ポーリッシュ スパイダー!ポーリッシュ スパイダー!」と叫んでい
る。どこがポーランド蜘蛛なのかと聞いてみると「これはメイド イン チャ
イナ!でも僕が売るのだからポーリッシュ蜘蛛だ」とのこと。少しばかり
のアイデンティティの違いを誇っている。 メトロポリタン美術館の前では
雪玉を並べて売っている人がいた。1個1ドルのサイン。投資ゼロ。愉
快な発想とひるまず実行することがうれしい。溶けない前に早く売れる
といいなと思いながら写真を撮った。